MPGの歴史
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すべてはここから始まった
1985年12月1日。アルファタックル企画室に歓喜の声が溢れる。〈インストラクター鬼島辰雄が試作カモシロッドで32㎏ヒラマサをキャッチ〉当時の日本記録を更新したとされるこの一本はマニアックな釣りにこだわり、毎週の様に千葉県勝浦沖に通い続けた開発スタッフの熱き想いの結実と共に、MPGロッドが沖釣りシーンに産声を上げる「夜明け前」の胎動を間違いなく感じ取った瞬間でもあった。
カーボンロッドがあたり前の時代。ごく一部ながら船竿におけるグラスファイバーやソリッドの優位性を見出し、画一化するロッドシーンに一石を投じようとする動きはあった。【異端と独創】を渇望していたアルファタックルは、釣竿素材として使われていなかった高強度・高弾性の特殊グラスファイバー「MPG」に着目。カーボンには不可能なしなやかさと粘り&強度。ただのグラスやソリッドでは実現不可能な軽さと魚が勝手に浮いて来る復原力を有するMPGならではの機能と小気味良い切れ味を求めて船竿の開発に着手していった。
1984年秋。千葉県勝浦には週末毎にカモシ釣りでヒラマサを追うアルファタックルスタッフ小野垣克博と滝沢功、インストラクター鬼島の姿があった。この頃にはご当地釣法でヒラマサを釣る「カモシ釣り」自体はほぼ確立されていたが、使用されていたのはほとんどカーボンかグラスのボートロッド。通い詰め、数多くのヒラマサを仕留める内に小野垣達の心に既存ロッドへの物足りなさが芽生え始める。
当時多く使用されていたボートロッドは単にヒラマサのパワーに対する強度面をクリアするためのセレクトに過ぎなかったのだ。
80年代の勝浦カモシ釣り仕掛け
都心からほど近い房総の港から十数分の近場で10㎏オーバーの大型ヒラマサが釣れるという地の利。この釣りに特化した独創的な一本を造り、関東の釣り人達に広く「カモシ釣り」を発信したい。試行錯誤の末、85年夏に試作ロッドが完成。2.7mオフセンター2ピースロッドはヒラマサのパワーとスピードに押し切られる事なく、自在にコントロールする7:3アクション。求めた理想が形となりいよいよ最終テストがスタート。
そして訪れる運命の日。鬼島の快挙によりアルファタックルは船竿元年と呼ぶにふさわしい年の瀬を迎えた。翌86年、自信を持って「アルファパワーKAMOSHI」を発売。MPGロッドの歴史が幕を開ける。スマッシュヒットとなった「KAMOSHI」の名は以降ネプチューンへと引き継がれ、アルファタックルMPG船竿の代名詞となった…
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MPGワンピースというスタイル
パールホワイトのボディ~新しいワンピーススタイル「MPGヘッドクォーター」が誕生した。当時アルミハンドル仕様の船用ワンピースロッドはトローリングロッドという形で存在していた。これらのロッドは強度面には全く問題無かったが、ただ硬いだけで「アタリを取る」「しなやかに喰い込む」という船竿の必須条件は全く持ちあわせていなかった。「MPG KAMOSHI」で成果を収めた我達が次に目指したのはトローリングロッドのアルミハンドルに船釣り専用のロッド部を組み合わせる、全く新しい視点のワンピース船竿の開発だった。
ワンピース仕立ての為トップからバットまでスムースに曲がっていく7:3アクションと最後まで耐えるバットパワーを追求。全長2.4mの「ヘッドクォーター」8lbs、12lbs、20lbs、30lbsの4アイテムは後に広がりを見せるシリーズの根幹であり、より大きな視点で捉えるなら、その後各社からリリースされるアルミハンドルのワンピース船竿に大きな影響を与えた意味からも、アルミハンドルワンピース船竿の元祖と呼ぶにふさわしいモデルである。
「ヘッドクォーター」と同時に発表された、泳がせ専用竿「ザ・ベヨネーズ」「ザ・寿美須」に続き、翌年には2.1mの「HQスタンディングファイト」、ワン&ハーフ仕様の「HQタイタンストライク」「HQヒラリーストライク」「HQヒッティングファイト」「HQザ・ビッグフィッシュ」を発表。ここにワンピースロッド~ヘッドクォーターのラインアップが完成する。
そして94年にシリーズのトップグレードモデル「HQザ・カイザー」がスタート。スーパーヘビー~ライト級までをカバーするニューシリーズを展開する。また、発売以来モデルチェンジなく今日に至るロングセラー「パシフィックスプリント」も同年の新製品。当時のマグロフリークスタッフはカリフォルニアのツナフィッシングに使用するティップアクションのスタンディングファイトロッドをヒントに久米島のキハダを釣りまくった。
そして2006年5月6日、久米島の釣船太一丸渡慶次昇船長より〈HQスタンディングファイト・ブルーフィンツナスペシャルで巨大クロマグロキャッチ〉のビッグニュースが届いた。渡慶次船長自身が竿とリールで獲ったのは全長230㎝、胴回り176㎝。体重何と260㎏!! 送られてきたロッドはホディ各所にPEラインの擦り傷が刻まれ激闘を生々しく物語っていた。当時すでにMPGロッドの頂点から退いていた「ヘッドクォーター クロマグロ」バージョンだったが、MPGワンピースと言うスタイルの底力を改めて世に知らしめた快挙となった。
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すべてはここから始まった
80年代後半、関東~東海地区にコマセダイブームが到来。各社よりグラス製コマセダイ竿が登場する。
ただのグラスではなくMPGでのコマセダイ竿を模索する我達は90年春の乗っ込みシーズンに合わせ「スーパー真鯛」シリーズを発売した。ここで独自のパワー表記となる「アクション0・1・2」を初採用。MPGロッドならビシが何号だからではなく、釣人各自の硬軟の好みやヤリトリのスタイルに合わせどのアクションを選ぶのも自由である、の視点から設定した【異端と独創】の表記だった。エサ取りのアタリが見える~ウネリに跳ねずマダイが喰う~ハリ掛りが良くバラシ難い~大きく曲がるが、竿を立てれば魚が浮く~MPG真鯛ロッドが生まれた。
前年にリリースした「スーパーヒラメ」などのスーパーシリーズは95年まで生産され、96年に後継機種「タイドウェイ」へとバトンを渡すが、いまだ私達は真のMPGスペシャルローリングアクションを追い続けていた。
そして97年、世は中通し竿の全盛期。あらゆる船竿からガイドが消えた異常事態の中、ガイドへのこだわりを持ち続ける我達は新たなガイド付き真鯛竿の開発を模索していた。
ガイド付きも含めて3ピースが常識だったこの時、より美しく、パラボリックカーブを描くを実現すべく、あえて運搬時の利便性を無視したMPG 2ピースの素材開発を進めていた我々はある情報をキャッチする。98年春、富士工業が『絡んでも絡まない』をキャッチフレーズに、全く新しいスタイルの[DBガイド]を発売する。
この年、富士工業の全面協力を得てDBガイドを搭載した試作品でのフィールドテストがスタート。新型ガイドはキャッチコピーに偽りの無い糸絡み解消機能を、MPG 2ピースロッドは期待を裏切る事のないパーフェクトなカーブと、真のMPGロッドたるフィーリングを見せ、我々は新製品への自信を確たる物とする。
絡まないDBガイド、アクション最優先の2ピース、全身MPGの機能とフィーリング。98年春にセンセーショナルなデビューを飾った「ブルークォーターV2」は3~3.6mの3アクション7アイテム。今までにないスタイルに関東はもとより全国で人気が爆発。かつてない大ヒットとなった。翌99年にはニューアイテムを追加すると共に、カーボンをコンポジットしたスリム&シャープな「ブルークォーターX2」を追加発売。津々浦々のマダイ釣師が数え切れない程のマダイを釣りまくった「ブルークォーターV2」は02年のLCガイド登場を機にアイテムを厳選した「ブルークォータータイタス」「ブルークォーターファーストライト」へ。LDBガイドがリリースされた04年には「ブルークォーターR2P」。翌05年には勝負所のマヅメや夜釣りでの視認性を重視した白いボディの「ブルークォーターホワイトスピーダー」、Kガイドリリースの2010年には7代目の「ブルークォーター SEVEN」へとリニューアルしてゆくが、98年にV2で証明した血統とMPGテイストは生き続けている。そしてシリーズ15周年を記念して発売された8代目「ブルークォーターTゾーン」にもMPGボディ~ブルーの純血統が脈々と流れ続けている。
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「ショートロッド」という考え方
93年、新しいヒラメ釣りを提案したワン&ハーフの“手持ちヒラメ専用”「ネプチューンヒラメ230」は翌94年に「LBスナイパー230」としてリニューアル、2mワンピースの「ARスナイパー200」と共にスナイパーシリーズというショートロッドを展開する。
2種の“狙撃手”は目的のヒラメのみならずイサキやハナダイのコマセ&ウィリーシャクリ用として人気が出てきていた。95年発売の2mワンピース「ヘッドクォーターイカ200」は従来イカ竿とは一線を画す強度とMPGならではのフィーリングがイカにとどまらず、鬼カサゴを筆頭とした根魚やビシアジにも威力を発揮。
中深場の万能モデルとして高い評価を受ける。別々の路線を歩む浅場と中深場、異なるフィールドをカバーするMPGショートロッド。ふたつの道がひとつになるのは、99年。先述のDBガイド発表をうけて様々なショートロッドは「ARセイバー」1.7~2.3mのショート&ライトなワンピースモデルのラインアップ、そのMPGフィーリングは「MPGロッド=大物オンリー」のイメージを変え、MPGショート&ライトワンピースの楽しさ&気持ち良さは多くのファンを魅了した。このショートフィーリングは2011年のデッキスティックの流れへと続いていく。
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ULTRAブランクの誕生
更なるビッグターゲットを求める、もっと強く…というテーマに向かい新しいプロジェクトが立ち上がる。90年代後半、青物&大物シーンへのグラスソリッドロッド(ムク竿)進出が続出した。ロッドのアクションを左右するテーパーを作り易く、安価に手に入り、どこまでも曲がっていくそれは少量生産に適し、多くのガレージメーカーができた。
私達は簡単に真似できないMPGチューブラーへのコダワリを持ち続け、立案から2年あまりさまざまな失敗を重ねやっとたどり着いた。“従来MPGロッド3本分以上のクロスを使って細身厚巻~単なる厚巻でなく高圧力を加えて焼きレジンを極限まで飛ばす”という高繊維量&高密度の全く新しいULTRAブランクが誕生。MPG ULDP(超多層高密度圧縮製法)ULTRAブランクと名付けた。
通常MPGロッドを大幅に上回る強度、圧倒的なしなやかさと粘り、ムクにはない軽量感と操作性、なだらかな復原力。私達のMPGへの想いと当初不可能としながら失敗を恐れずに開発に挑み、描いた理想を形にした技術者の尽力がついに現実となったのだ。
2000年。空中130kgピックアップをクリアした泳がせ専用「ビゲスト」と6:4万能モデル「ストレガ」の完全ワンピース6アイテムを発売。フィッシングショーではストレガ230の5kg錘振り上げデモンストレーションに来場者が一様に目を丸くし、次々とULTRAを手に取る。この日からULTRAと言う素材がMPGロッド新世紀の扉をこじ開けてゆく。
03年には究極ローリングアクションのワンハーフ3mモデル、04年スタンディング泳がせ用「パワーバトル」、05年にストレガ最強234を発売。全国各地に“MPG超フィーリング”を知らしめた後、07年にロングフェルールタイプの“ストロングブルー”「MPG ULTRA V10」にモデルチェンジし、MPGの可能性を広げていった。 -
究極のDEEP
1984年からスタートした「ディープクルーザー」は深海マニアに好評を博し、現在まで続く超ロングセラーシリーズだが、通常のEグラスを使用してきた。私達がこのジャンルにMPGを使うのはULTRA素材が完成した99年。ディープマスターことテル岡本の熱望に応え、ULDPシステムの深海竿を試作した。
このプロトロッドで実釣を重ねた岡本は、底を叩く、ウネリで跳ねない、数珠繋ぎや深海巨魚の大負荷にも曲がりっぱなしにならず、リールだけに負担を掛けない、そして何より素晴らしいのは明確に伝わるアタリと、釣っている時のキモチヨサだ、と絶賛。2000年冬に発売した限定モデル「ディープインパクトLTD」の従来深海竿と一線を画す卓越機能と潜在能力は岡本の全国行脚と媒体記事により認知度を高めて行く。
翌年よりシリーズが本格始動し究極深海竿は「ディープインパクト」「プロスペック」「RX&BX」「MTK」「暁」「WHX」と代を重ねて現在に至る。07年に究極の、その先が欲しいという岡本の貪欲な要望から開発が始まったのが「ディープオデッセイ」。あえてストレートで太いトップを設定し、アタリをより増幅するキンメ用「モデルG」と千尋の底からのアタリを的確に伝える鋭敏トップのベニアコウ用「モデルR」の2アイテムは08年の発売と同時に大人気となる。
翌09年には「より多くの深海ファンに究極深海竿を体感して欲しい」の視点からインパクトと同素材を使用、飾りを除いた実戦型「ディープマスター」シリーズもスタート。11年冬には岡本のライター活動25周年を記念したアニバーサリーモデル「ディープオデッセイGBX」「RBX」を限定発売。本年は東北オキメバル&アカムツ用「ディープオデッセイモデル T」が登場。ディープマスターと共に歩んできたMPG深海竿は更にディープなラインアップを形成してゆく。
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ショートロッドの最終形、3Dブランクとは
3Dブランク、すなわち複合クロスを組み合わせたショート&ワンピース、そして先調子というコンセプトをまとめた。新開発の軽量アルミハンドルでアクションと長さのバリエーションをラインアップする。思いっきり短い1.5mで色んな釣りをライトにイージーにダイレクトに楽しみたい、そんな思いで11年「デッキスティック」を造った。
SFGと呼ぶ単方向グラス繊維を先端にセット、MPGで穂持部からバット部を強化、最終エンド部は中弾性カーボンで補強するという3D、つまり3種の相性の良いマテリアルが合体し細身で切れの良いスゴイ3Dブランク(もちろんチューブラー)ができた。このSFGという材料は06年にすでに「クロステーパー」でMPGとコンポジット使用していたが、MPGとの相性の良さからも先調子の要となるクロスであった。
セイバーシリーズで培ったMPGショートコンセプトとクロステーパーの複合素材で得たテクノロジーが融合し新しいLEDスタイル(Light~Easy~Direct)を推奨したいというスタッフの思い。そしてこれまでにないアクションとフォルムが人気を集める発売2ヶ月後の5月29日、沖縄に釣行した東京の門馬光直氏が“エサのムロアジを釣るつもりで持参した”デッキスティックで想定外のビッグワン、23kgのカンパチを仕留めた。
ハリス30号と適合値を超えた自己責任の釣りだったが、同行した全員がこの竿で20㎏クラスのカンパチを多数キャッチ、果ては100kgを優に超すサメも船縁まで引き寄せるなど、驚異のポテンシャルを見せ付けた。そして私達が何より嬉しかったのは“皆が面白かったと喜んでいた”という門馬氏のコメントだった。 こうして実証された3Dの底力は2012年末に発売された「スフィンクススタンダップ」へと受け継がれてゆく。 -
新時代のMPGロッド
これからも私達はいろんな複合素材にチャレンジし、アタラシイMPGロッドを造っていきたい。より細くより軽量なボディを求めながら体幹はあくまでもMPG。卓越の機能と潜在能力、そして何よりもMPGフィーリングは決して損ねない。その上で新時代と呼ぶにふさわしいカッコイイ機能性とオモシロさ、楽しさを実感できるMPGロッドを提案したい。
MPG創世記から一貫して開発スタッフ、フィールドテスターが現場で感じたこんな竿が欲しいというリアリティ溢れる渇望をフィードバック。釣人のキモチを最優先するがゆえに時に技術面の常識を無視して突っ走り、試行錯誤を繰り返して様々なスタイルのMPGロッドを世に送り出してきた私達。これからも開発スタッフはそんな「プロの素人集団」の認識と気持ちを忘れる事なく常識にとらわれず自由な発想で【異端と独創】のMPGロッド造りに挑み続けていきたい。
やがて時が過ぎ人は移り変わる。けれど船釣りを楽しみたい釣人がいる限りMPGロッドの歴史と私達の歩む道はどこまでも続いてゆく。
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現代的MPG大物竿を考える
2017年春、15年の眠りから目覚めた元祖MPGワンピースのヘッドクォーターシリーズ。 MPG超厚巻ブランクの新生HQは我々がスフィンクス、オデッセイで培ったMPG泳がせロッドのノウハウを集約した。
「スタンディングバウト」では最大のテーマをアクション設定に据える。曲がらない竿で一心不乱にポンピング&巻取りを行う、かつての超ストロングスタイル“喧嘩釣り”。1cmたりとも糸は出さぬ意気込みを胸に、呼吸すら忘れてひたすらハンドルを回し続けるアングラー達も時の流れに抗う事は出来ない。何れはキーパーにロッドを預け、電動リールの力を借りざるを得ない日がやってくる。
大魚達とそれなりの長時間、リアルスポーツとして対峙するにはアングラーへの負担軽減を最優先に据えるべきと考えた時、我々は釣竿のあるべき姿を今一度見つめ直した。
もっと釣竿が本来の“仕事”をすべきである。パワフルなビッグフィッシュを制するのは強く硬い竿ではなく、ターゲットには最大限のプレッシャーを与えながら、アングラーへの負担は可能な限りロッドが吸収する。それによりアングラーの心身共に余裕が生じ「バウト」の主導権を握る事が出来ると判断した。
PICK UP力はバット部が担うが、リールドラグ力と上手にシンクロさせる事が出来れば、実際それ以上のパワーは不要であり、フォアグリップ位置が力点、ロッドカーブの頂点を支点とした“距離”がアングラーに掛かる負荷と大きく関係する。従来モデルとのアクション差の最大要因がここにある。
MPGは構造上ソリッド竿と比べ非常に軽量に仕上げる事が出来上る。その特性と意図したアクション設定は、非常に現代的なリアルスポーツとしての「スタンディングファイト」を実現、早々と結果を出したのが173。飛行機移動をも視野に入れたレングスを設定で沖縄県宮古島の49kgカンパチ、130kgクロカジキを筆頭に各地から大物キャッチの報が相次いだ。
一方最高レベルのMPG100%超厚巻ブランクで「史上最強のMPGロッド」を目指したのは「ウインチバウト」。置竿ウインチファイトに特化させたこの竿は青森県で353kgクロマグロを仕留め、スタンディングバウト共々「MPG大物竿=ヘッドクォーター」を確立させる。
19年初夏。相模湾で静かなブームを呼ぶスピニングリールのフカセキハダ用に「スピニングバウト」をリリース。これまで専用竿がなかったこの釣りはGT用などスピンキャスティングロッドの流用で行われてきた。しかし、ルアーロッドは投げる事に非常に大きな比率を問われるため、魚をいなす部分はリールに頼らざるを得ず、アングラーの身体には大きな負担がかかる。キャスティング性能を求めないフカセ専用竿はファイト時の優位性に特化すべき。そんなコンセプトが史上初のスピニングフカセロッドを生み出した。
MPGロッドは肉厚の差こそあれ、全てが中空構造=チューブラーで形成される。我々がこのシステムにこだわるのは、MPG本来の素材特性である軽さ・高感度・スピーディーな操作性をより高めるため。これらを解り易く表現したのが「ブルーバウト」だ。
九州の玄界灘、五島灘は魚の宝庫。多種多彩な魚種が棲むフィッシングパラダイスは落し込み釣りのメッカ。太ハリスのサビキ仕掛にベイトとなるイワシやアジを喰わせ、そのまま海底まで落し込んで大物を狙う。使用するロッドは1本。大物をコントロールするロッドでありながら、イワシのアタリも的確に伝える繊細さが欠かせない。相反する要素を一本のロッド内で完結させる事はMPG素材の真骨頂。更にアクションというテイスティングで生み出す繊細な穂先感度とスムーズな負荷の移行…これら全てを叶えた理想の落し込みロッドが完成する。翌20年はスタンディング、ウインチファイト何れもOKの泳がせロッド「スタンディングバウトS」を追加リリース。ヘッドクォーターは大物&青物シリーズとして一層のラインアップ充実を図ってゆく。
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2017年 MPGのコンセプトロッド
94年のLBスナイパーから連綿と続く中軽量級MPGロッドの血統を引き継ぐのが「HBコンセプトロッド」シリーズ。
2015年のアカムツ230を皮切りにテル岡本監修の中深場ロッドを中心に展開する。
初号機・230は岡本が青森風合瀬~南紀浦神沖まで、本州各地のアカムツフィールドで6年間のテストを重ね、世に送り出した自信作。我が国の釣具史上初めてアカムツの名を冠した専用ロッドは当時急速に広がるアカムツブームの追い風もあり、スタンダードモデルとして広く認知される。
アカムツに次いで登場したのは、こちらも中深場で人気のオニカサゴ専用。中深場万能ロッドとして一世を風靡した「セイバー202」をベースに岡本がこだわりの匙加減でそれまでのオニカサゴ用とは一線を画すMPGチューブラーならでは、の機能と釣趣を盛り込んだ一本に仕上げる。以降東北向けオキメバル用や銚子沖寒猫根に代表される軽量錘釣場アカムツ専用、関東で根強い人気のビシアジ、ヒラメとラインアップを広げ、MPGロッド入門編としての役割を担い続けてゆく。
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テル岡本の「次世代深海竿」
ディープオデッセイシリーズの完成で、一旦は自らが考える頂点に到達したと感じた岡本だが、深海釣りへの尽きる事ない探究心が程なく彼の意識に強い渇望を生み出す事に。
「よりアタリと引きがオモシロく」「更にバラシ難い」を追求すべくプロトモデルで実釣を重ねた岡本がディープオデッセイから6年後の2014年に発表したのが自らの名を冠したディープインパクトTERUスタイル。
千尋の海底を竿先で“視る”。底叩きやアタリ、引きを頭の中で音に変換して”聴く”。岡本がリアルバーチャルと称する世界観はMPG超厚巻チューブラーブランクの感度、復原力、粘り、強度…それら全てが融合し初めて生み出される唯一無二。
他素材では再現不可能なのは、あらゆる選択肢を試して来た岡本が誰よりも把握する真実だ。従来深海竿よりも敢えてスローなアクションを設定したこの竿を「数釣りではなく1尾の価値をより高める『次世代深海釣り』の具現化」と公言する岡本。これに呼応する「竿先が軟らかく入るのにアタリが判る魔訶不思議な竿」なるネット評価や関西圏の深海釣場開拓なども手伝いアルファタックル深海竿の代名詞的存在となってゆく。
アカムツに次いで登場したのは、こちらも中深場で人気のオニカサゴ専用。中深場万能ロッドとして一世を風靡した「セイバー202」をベースに岡本がこだわりの匙加減でそれまでのオニカサゴ用とは一線を画すMPGチューブラーならでは、の機能と釣趣を盛り込んだ一本に仕上げる。
以降東北向けオキメバル用や銚子沖寒猫根に代表される軽量錘釣場アカムツ専用、関東で根強い人気のビシアジ、ヒラメとラインアップを広げ、MPGロッド入門編としての役割を担い続けてゆく。
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真の万能竿を目指す キーワードは“BACK TO BASICS”
新生“DECKSTICK FULL ARMED & SHIBUKI”
手持ち竿を追求する。
巷の多くのショート&ライトゲームロッドは、カーボン素材が採用されることが多い。むしろそれが一般的だ。
もちろん軽快さを求めたカーボン選択は手返し良く軽快な操作性をもたらしてくれるものだが、反面そのキャパシティーについては限定的な面を持つ。魚種釣法の限定的な目的の竿ならばカーボン素材やソリッド等を継いだり、きわっきわのセッティングでも良いのだが、実は汎用性能からは離れていく。ショートロッドはその実効長があまりにも短くなる場合が多く、一般的なカーボン素材中心では表現がなかなか難しい。
あまりにも広がってしまった魚種別竿に対するアンチテーゼであるこの分野であっても、結局アイテムは同じように拡大していく。浅場に中深場、ショートロッドとかライトゲームロッドはできるだけ“何でも使える”竿であるべき…
DeckstickやSHIBUKIはそういったこれまでのショート&ライトゲームロッドの持つ大きなジレンマに取り組んだ竿である。対象魚は必ずしも小物ばかりではなく、細ハリスさえ使わざるを得ない状況。且つ口切れをも警戒しなくてはならない。たとえズルズルに設定したリールドラグでさえ、滑り出す前にハリスを飛ばす魚達。それらをもこのカテゴリーの竿達はこなさなくてはならない。
ライトな穂先でも確実に針を貫かせ、満月に曲げてやることでしなやかに粘り強く対象に追随し浮かせていくベリーからバットセクションへのスムーズな荷重移動。
これらは、やり取り一連での圧倒的な安心感として釣人をフォローする。スリリング且つオールラウンドな釣りに完全対応するために選ぶ我々の方法論は“Back to Basics“ 、MPG100%ブランクス。
機能にさらに釣趣が加わる。
MPGの本質が良く分かる竿になる。
全開で曲がり、魚を浮かせる。ハリスは徹底的に守る。DeckStick FULLARMEDとSHIBUKIは、ライト湾ゲームからクワセ・落し込み、近海・遠征コマセ&ウィリーシャクリ、中深場とありとあらゆる沖釣りに高次元で対応する。
カーボンでは表現できない、跳ねず弾かぬ、しなやかな曲がり。グラスソリッドにはない軽さと復原力。絞り込まれても粘り続ける耐久性とトルク。懐の深いMPGなら、ゲームがもっと楽しく、面白くなる