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深海研究所 Part 5 アカムツ



第5話 アカムツ
メタリックレッドに輝く「深海のルビー」アカムツはノドグロの俗称でいまや全国区の知名度を誇る深海ターゲット。姿、釣趣、そして極上の味覚。三拍子揃ったパーフェクトな釣魚だ。



アカムツの釣場
本種はプレジャーボートや漁業を含めると瀬戸内海や一部の湾奥を除く本州、四国太平洋岸、九州の殆どで釣りが可能」としも間違いではないが、ここではエサ釣り遊漁船の実績がある釣場をピックアップして紹介。

日本海
青森県風合瀬~白神沖
新潟県佐渡沖
富山県富山湾

太平洋
福島県沖(塩屋崎~小名浜沖)
茨城県常磐沖(日立~那珂湊沖)
茨城県波崎沖 寒猫根
千葉県犬吠崎沖
千葉県外房沖(勝浦沖・天津沖)
千葉県南房沖(鴨川沖・和田沖・江見沖・千倉沖・洲ノ崎沖)
東京湾口(久里浜沖・剣崎沖・城ヶ島沖)
神奈川県相模湾(荒崎沖・長井沖・真鶴沖)
静岡県東伊豆(熱海~網代沖・初島沖・伊東沖・富戸~八幡野沖・稲取沖)
静岡県南伊豆(石廊崎沖・子浦沖)
静岡県西伊豆(波勝崎沖・松崎沖・田子沖・宇久須沖)
静岡県駿河湾(沼津沖・由比沖・清水沖・石花海)
遠州灘(静岡県大井川沖・静岡県浜名湖沖・愛知県渥美半島沖)
熊野灘(和歌山県浦神沖)
和歌山県白浜沖
四国沖(徳島~高知県沖)

概要
今や本州~四国の広範囲で遊漁対象となり、特に関東周辺では周年の釣物として高い人気を誇るアカムツ。アプローチする水深も季節や地域で100~400mと幅広いが、現在専門狙いの主流となるのは「錘120~150号で水深120~160m前後」と「錘200号(釣場により250号も)で水深200~300m前後」の2パターンだろう。



①浅所の釣り
青森県風合瀬~白神沖、福島県沖、茨城県沖寒猫根など。青森県ではオキメバル釣りから派生した背景もあり当初は250号錘の置竿釣法だったが、スロジギからエサ釣りへの転向組などでタックル・仕掛の軽量化が急速に進み「関東スタイル」に近付いている。
この点も踏まえて本項は浅所アカムツの代名詞的存在であり、各地の釣法に大きな影響を与えて来た茨城県波崎沖「寒猫根」の釣りをベースに進めてゆく。

タックル
ロッド
シビアな状況下では「100%置き竿で波任せ」は流石に不利。活性次第で釣法チェンジの必要性が出てくる可能性も踏まえ、2m前後の6:4~7:3アクションを設定した専用、若しくは錘負荷150~200号程度の中深場用をセレクトする。グラスチューブラー製が「手持ち誘いでの軽量」「アタリを捉える目感度」「巻上時のクッション効果」など、この釣りで重要な要素をバランスよく兼ね備えている。

リール…PE3号300m表記の「800番」、4号300m表記の「1000番」「300番」に高強度PEライン3号をキャパシティ目一杯巻く。
推奨糸巻量以上のラインを巻き込むとカウンター表記に僅かな誤差は出る、スプール軸径が太くなるため上層での巻上力が若干ダウンするなどの問題はあるが、高切れなどのライントラブルを踏まえたライン長を優先が「ディープマスター流」。
因みに道糸は実釣時の強度面をクリアできれば「細い程潮流の影響を受け難く」イトフケの軽減やよりスピーディーな降下が可能、かつより長距離を巻き込めるメリットがある(筆者は少人数仕立船では2.5号使用の場合も)。
しかし混雑した乗合船では回避し切れないオマツリでの「擦れ」や処理時の安全性(細糸は手指を切る可能性大)を踏まえ、基本「3号」を推奨する。

仕掛…胴突2本鈎が基本だが、サバが多い場合は1本鈎にして手返し勝負が有利。ハリス5~6号を50~60cm、幹糸8号1~1.2m。捨て糸は5~6号1~1.5m。 鈎は特殊形状で口周りの脆いアカムツの外れとチモト切れを大幅軽減するホタ鈎の16号。

細軸のKINRYU「ホタLight16号」は喰い渋り時、特にお勧めだ。仕掛上端にはフジワラ「チビリング」など小型のヨリトリ器具を配す。
錘は根掛りによるロストがほぼ無いため、必ずしも鉄製である必要はない。フジワラのスカリー(鉛)若しくはワンダーⅠ(鉄)の船宿指定素材&号数を用意する。

集魚ギミック
水中灯… 単純な集魚効果以前に「フジッシャー毛鈎」を有効活用するために必要不可欠な存在と考える。半面、抵抗によるオマツリ要因、サメなどエキストラに対するアピールというデメリットも存在。小型で比較的穏やかな光パターンのルミカ「輝泡」の赤色を基本に状況や地域で緑、白も選択。但しサバが多い、潮が早くオマツリ多発の際は速やかに取り外すフレックスな対応が必要。

マシュマロボール…チモト周辺のハリスに配し浮力と仕掛降下時に抵抗をプラス、使用時に餌の動きに変化を与えるヤマシタ「マシュマロボールL」は今やアカムツのみならず、深海釣りの必需品。アカムツ用に開発された輝度なしの「アカムツスペシャル」が基本だが、蛍ムラは「マシュマロボール」のみのラインアップゆえ、こちらをセレクト。

匂い玉…鈎にはニッコー化成「激臭匂い玉7Φ」一粒を刺し通す。イカゴロテイストの「イカゴロクリアー」「イカゴログロー」、オキアミテイストの「オキアミレッド」「オキアミオレンジ」「オキアミイエロー」の計5色。蛍ムラ発光する「イカゴロクリアー」が寒猫根を筆頭にホタルイカ使用地区での効果を確認済み。
因みに「集魚効果」と「チモト保護」を兼ねるを謳う「蛍ムラパイプ」は数cmの長さが
①過剰アピールとなりサバ(や深所ではサメ、クロシビカマスなど縄切魚)のアプローチが増える
②チモト周辺の動きを妨げる
のデメリットが上回ると考える。

深海バケ…藤井商会「フジッシャー毛鈎 ホタ16号」は青紫、橙、濃緑の3色を基本に、低水温ではピンク、紅、赤紫などの赤系が強く、白(蛍ムラ)や茶、黒などのアクセントカラーを用意するのは他魚種と同様。因みに近年の寒猫根では「濃緑」が強い傾向が見られる。
やや太軸で自重のある「ホタ16号」には前出マシュマロボールは欠かせないパートナー。バケカラーとボールカラーをリンクさせるのは基本中の基本。フジッシャー毛鈎にマシュマロボールをセットする際の必須アイテムが富士工業「ラインスレッダーLTM-M」。
製品本来の使用法ではないが、専用設計かと思える程スムーズ&スピーディーなセットが可能だ。

※ラインスレッダー使用方法
①マシュマロボールにラインスレッダーを刺し通す。
②ハリスを結んだ深海バケを用意し
③ハリスの端をラインスレッダーに通す。
④マシュマロボールをスレッダー先端までスライドさせ
⑤スレッダーを引き抜くと
⑥マシュマロボールがハリスに通る。
⑦チモト近く(数cm)まで移動させて完成。
使い方はこちら

エサ…ホタルイカとサバ短冊(船宿により用意、販売、各自持参があり要確認)のコンビネーション若しくは単体使用。ホタルイカを壺抜きした肝付ゲソと幅5~6mm、長さ5~6cmのサバ短冊抱き合わせを基本に、各単体での使用、ホタルイカの一杯掛け(縫い刺し)など。
基本的には深海バケ同様「オレンジが◎」なのだが、他地区を含む今期の釣行では「イエロー」が圧倒的優位だったケースが複数回あった事を付記しておく。
これは余談だが、静岡県の某船長からある客(筆者ではないので、念のため)がほぼ全てのアカムツの構内に寄生するタイノエの一種を主食と勘違いし、本気で鈎に掛けて仕掛を下した、なる話を聞いた。その釣人の探究心には大いに敬意を払うが、寄生虫を宿主自ら喰う筈もない。
真相を知りながら、黙って見ていた船長も相当人が悪いのだが「もしかしたら釣れるんじゃないか」と秘かに期待していた!?のかもしれない。

その他のギミック
サメ被害軽減装置

サメによる奪い喰いが多発する場合は仕掛上部に「海園Ver.2イカ直結用」をセットする事で被害軽減が期待出来る。
下記、②水深200m以深の釣り、その他のギミックの項で詳しく解説。
実釣テクニック
寒猫根の釣りは「手持ち」が基本。開拓当初はカワハギ宜しく「叩き」や「弛ませ」を筆頭とした「アピール釣法」がクローズアップされた(もちろんそれが全てではない)が、近年は「オモリを着底させた状態でラインを張って微細なアタリを拾い、一呼吸置いてロッドで聞き上げる様に乗せる」ゼロテンション釣法が効果的で、主流となっている。
高活性時にはダブルもあるが、浅めの水深で一流しで複数回の投入が可能、鈎数2本を踏まえれば「1尾を確実に」が基本スタンス。サバが極端に多い場合は1本鈎もアリ(ワンポイントの項に詳細)
アタリ後、聞き上げた竿先に確実な鈎掛りを感じたらラインを緩めずに巻上に入る。強引な高速巻きは口切れ、逆に極端な低速巻きは弛みが出て外れのリスクが高まり、何れもNG。魚のサイズやウネリによる船の上下動を踏まえつつ、極力一定のペースをキープする。
口周りが脆く、水圧変化にも強いアカムツの取り込みは小振りでも玉網のアシストが基本。不用意に抜き上げて「後の祭り」にならぬ様、ご注意あれ。



②水深200m以深の釣り
千葉県犬吠埼沖~四国沖まで、太平洋岸の広範囲でメインとなる水深200~350mにアプローチする釣り。

タックルと仕掛

各釣場のタックルは基本共通。キーワードは錘200号、PE4号400m(以上)だ。
ロッド
2~2.3mの6:4~7:3アクションを設定した専用、若しくは錘負荷150~250号表記の中深場・青物用が基本だが、天秤仕掛使用の置竿エリアでは2.6~3mとやや長目の物が好まれる傾向。浅所同様、グラスチューブラー製がこの釣りで重要な要素をバランスよく兼ね備えている。

アルファタックル適合モデル
ディープオデッセイ アカムツ220
ディープインパクト カイザーT
ディープオデッセイ モデルT
HB アカムツ200・230・260
HB オキメバル260
デッキスティック フルアームド73 203

リール…PE6号300m表記の「3000番」「500番」に高強度PEライン4号をキャパシティ目一杯巻く。糸に関するコンセプトは前述の浅所用に準じ、後述するツノザメ類のアプローチも踏まえての4号推奨。

仕掛…使用錘は同じでも地域、船宿によりスペックは異なる。代表例として

①細ハリス胴突2本鈎(千葉県犬吠崎など)…
混雑する乗合船で「オマツリし難く、処理し易い」を大前提とした設定
鈎:ホタ16号
深海バケ:フジッシャー毛鈎ホタ16号
ハリス:フロロカーボン6~8号50~60cm
幹糸:10~12号1~1.2m
捨て糸:8号1~1.5m
錘:200号/錘はオマツリ軽減のため多くの船が鉛指定。鉛製でもウイング付など特殊形状は使用不可もあり、事前確認のこと。
ヨリトリ器具:5連ベアリングサルカンなど小型の物。
※鈎とライン号柄が同スペック、ハリス&幹糸長が ②太ハリスと同等の3本鈎を使用する船もあり。

②太ハリス胴突3本鈎(東伊豆・南伊豆・駿河湾など)…

2kg超級本命のみならず、大アラ、大ムツ、クログチなど大型ゲストフィッシュが期待できる海域のハリスは太め&長め。静岡県由比沖で同乗者の市販仕掛6号ハリスが一撃で引き千切られる場面を複数回目撃している。
鈎:ホタ16号
深海バケ:フジッシャー毛鈎ホタ16号
ハリス:10(~12)号80cm~1m
幹糸:18~20号1.6~1.8m
捨て糸:10号1.2~1.5m
錘:200(~250)号/浅所同様に根掛りによるロストは少ないが、ツノザメ、エドアブラザメによる捨て糸・幹糸切れが多発する海域もあり。船から特別な指定が無ければ海底に残っても環境負担の少ない鉄製「ワンダーⅠ」使用を推奨する。
ヨリトリ器具:「深海用リングSS」などの中型。

③片天吹き流し仕掛(和歌山県浦神沖など)…
関西アカムツ釣りのメッカ、南紀浦神沖では愛知県の釣師が持ち込み実績を上げた片天吹き流し仕掛が定着。
片天吹き流し3本鈎
鈎:ホタ16号
深海バケ:フジッシャー毛鈎ホタ16号
ハリス6~8号4.5m(先糸・幹糸1.5m、枝ハリス50cm)
片天50cm
錘:200号
ヨリトリ器具:「深海用リングSS」などの中型。5連ベアリングのみでもOK。

集魚ギミック・深海バケ

エサ… 地域や船により若干異なる。千葉県沖ではホタルイカ一杯掛け、サバ短冊、両者抱き合わせなど。またホタルイカを模したニッコー化成「ダッピーホタルイカ」全10色や1.5mの短冊を好みの長さにカットして使用する同社「ロールイカタン150cm」全8色も喰い渋り時やエサ取り対策として注目される。

相模湾~伊豆沖、駿河湾ではベーシックなサバに西伊豆で特餌とされるソウダガツオ、由比沖のサンマなど幅1cm、長さ10cm程度の身餌短冊が中心。いわゆるビッグベイトは(アカムツも喰うが)サメ類のアプローチが早いため基本的には使用しない。ホタルイカにはシロムツやユメカサゴなど小型エキストラが早い傾向だが、激渋り時に「ダッピーホタルイカ」が船中釣果を独占したケースもあり。中でも静岡県由比沖は「ホタルイカやサバ短冊では喰わない」と船長が断言する程の「サンマ短冊」優位。筆者は身肉を削ぎ、グルタミン酸調味料で「旨味加工」を施した短冊を持参する。主食はサクラエビとされる海域ゆえ、疑似餌はエビテイストの「ロールイカタン」をセレクトする。

遠州灘ではオキアミを使うケースや「ホタルイカのみでOK」とする船も。南紀ではサバ短冊とホタルイカ、何れも単体使用で釣果を上げた。何のエサをメインで使用しているか、各船長に事前確認が無難だ。

その他のギミック
サメ被害軽減装置

ツノザメ・エドアブラザメの多い海域での強い見方。サメ類が捕食に使う鼻先の電気器官「ロレンチニ瓶」に作用する「海園」は海底のサメアプローチ軽減(100%回避ではない)効果も確認済み。仕掛上部に最初から接続する「Ver.2イカ直結用」をセレクトする。発売元の㈱デニズが行った実釣テストでは「ドンコが喰わなくなる」の報告もあり、特に銚子以北ではサメ不在でもセットする価値がありそうだ。
※「海園」をより効果的に使用するための注意点
海水に浸かっている間だけ電流を発生(約100時間)する海園は複数回の使用が可能だが、効果的に使用するために下記の点に留意したい。
1.使用後は必ずぬるま湯での洗浄&乾燥を行う(乾燥材を入れ保管すると更に良い)
2.出力ワイヤーの先端に錆が出ると効果半減。乾燥後CRC等を塗布して錆を抑える
3.錆びが出た場合は先端部分を切り落とし、出力ワイヤーの皮膜を1cm程度剥ぐ(炙り溶かす)
直結タイプでは保管時に付属スイベルとセンサー電極が接触しないよう注意(通電し電池を消耗する)
磁石版
取込時や航行時の仕掛保持にあれば便利。5本用などの短い物でOK。

実釣テクニック
何れの釣場もポイントは起伏が少なく、根掛りも殆どない砂泥底が中心。投入、巻上、再投入に関しては勝手な判断はせず、各船長に確認の上行う事。
錘が着底したらイトフケを除き、船長の指示に従い海底を1~3m程度の切ってアタリを待つ。アカムツは高活性時には海底から10m近い高棚で喰う事もある魚。海底に執着し過ぎるとユメカサゴ、ドンコ、シロムツ、ギスなどのエキストラの猛攻に辟易する場合が。但し低活性時や上層にサバ回遊などのケースでは「逆」もあり得る事も覚えておきたい。
平坦な海底とはいえ、多少の起伏や勾配があるため「あまり動かさない方が良い」「水深に変化がない」状況でも棚取り後全くの「放置プレイ」ではなく、ある程度の頻度で「底を取り直す」が必要となる。
今や「終日手持ちで攻める」スタイルが主流とも言えるアカムツ釣りだが、釣場や状況によっては「置き竿が圧倒的に優位」な場合がある事も忘れてはならない。拙プロデュースの「アカムツ専用竿」のアクションが6:4ベースなのは巻上時にハリ穴が広がり「ポロリ」のリスクが大きいアカムツの脆い口周りへのクッション効果を意識しただけでなく「置き竿優位」の状況で如何に違和感を与えずに仕掛を「程よく」躍らせてアピールするか、も考慮したもの。アタリがあったら一呼吸置いてロッドを深呼吸の速さでリフトアップ、「聞く」イメージのアワセをくれて巻き上げる。

誘いのパターン
状況に応じて有効的な誘いは様々。置き竿釣法では「ウネリ具合とロッドアクションを見極めてロッドキーパーの仰角を調整する」だけで効果的な誘いを生み出し、アタリの出方がガラッと変わるケースも珍しくない。

  1. 落とし込みの誘い…着底後1~3m底を切って暫く待った後、クラッチを切ってオモリを着底させ、再度棚取り。一定のペースで繰り返す。
  2. 弛ませ…①の応用。オモリ着底後にクラッチは繋ぐが、すぐには底を切らず「間」を置いてからロッドを誘い上げる、ラインを張るなどして変化を与える。混雑時はオマツリの要因となる可能性あり。
  3. ゼロテン釣法…錘を着底させたらクラッチを繋ぐが、オモリは海底を切らずにラインだけを張ったゼロテンション(弛ませっ放しではない)状態で静かにアタリを待つ。
  4. 底トントン…置き竿釣法の基本的な誘い。着底後1m程度の棚を取り、ウネリによる船の上下を利してオモリが海底を一定のペースで叩く状態を演出する。前述の「ロッドキーパー仰角調整」や「ホルダー位置の設定」で釣果が左右される事も少なからず。
  5. 片天仕掛の誘い上げ(スロー巻き)…着底後に海底から仕掛長分上げ、ここから数~10m、手巻き若しくは電動超スロー巻きで一定のペースで誘い上げたらクラッチを切って着底させ、繰り返す。棚を押えると追い喰いが容易い反面、「底叩き」が無い分エサの動きに変化が出難い。胴突以上にマメな棚設定と誘いが必要となる。 等のパターンが。バケカラー同様に如何に素早く当日のヒットパターンを見付けるかが釣果のカギとなる。


アタリ~取込
アカムツのアタリは極めて明確でシャープゆえ、見逃す事は殆どない。高活性時なら追い喰いを待つのもアリだが「一尾を大事に、確実に」が基本。サイズと相談しながら程々(中速~中低速)のスピードで緩急を付けずに巻き上げる。途中複数回の抵抗があり、ラスト30m付近で一暴れあれば、ほぼ本命間違いなし。稀に眼球や浮袋が突出して「浮いてしまう」個体もあるが、基本「外れれば泳ぎ去る」のがアカムツ。サイズの大小にかかわらず取込時は玉網のアシストが欠かせない。船長や助手が間に合わなければ釣人同士、互いに協力しよう。
またクロムツ程ではないが口には細かく鋭い歯が並ぶので鈎外しの際は要注意。素手でバス持ちなど決してしない事だ。

ツノザメ対策

千葉県沖~相模湾、伊豆沖では避けて通る事の出来ないお約束、税金的存在のツノザメ&エドアブラザメ。
バケがダメになる、錘や仕掛が切られる、鈎掛りした魚が齧られる等の被害があるが、一番厄介なのはオマツリして同乗者の道糸を切ったり、逆に切られたりして以降の釣りに支障が出てしまう事。
道糸切れはサメの歯だけでなく背鰭の鋭い棘や「鮫肌」での擦れも遠因となるし、そもそも細糸はライン同士の摩擦で切れてしまう可能性も大きい。
サメのアプローチ軽減にはサメ被害回避装置使用の他にエサを小振りにする、仕掛を地味にするなどで多少軽減できても(その分アカムツのアプローチも減る)、鈎にエサが付いている限り0にする事は不可能。
如何にサメをスピーディーに処理し被害を最小限に抑えるか、が重要なのだ。

通常オマツリは「上から順に解いてゆく」が、サメがハリ掛りしていたらそんな事は言っていられない。仕掛けがグチャグチャニなろうが構わず、先ず「サメが掛かっているハリスをカットする」が最優先。応用が利かない同乗者とのオマツリでアカムツ付ラインをロスとした苦い経験が事が幾度もあった。2~3本バリのアカムツ仕掛は複雑に絡んでしまったら解くよりもサルカンの付根でカットして幹とハリス付ハリに分解、深海簡易結びで結び直す方が余程スピーディー。「何番目のハリに掛っていようと、一番最初にサメの処理」を徹底したい。

ツノザメのリスクと食
サメと言うと「歯」に注意が行きがち。もちろん間違いではないのだが、ツノザメの場合一番怖いのは2基の背鰭にある剥き出しの「棘」だ。この棘には毒があり、刺されると大きく腫れ上がるが詳しい研究が成されておらず特効薬がない。誤って踏み付けた漁師の長靴を貫通、腫れ上がった足が抜けず病院で長靴を切り開き入院一ヶ月なんて話もあるので要注意。

そんな厄介者だが、食べてみると「結構イケる」。以前底引網船に乗るロケでツノザメを食したが船上で捌いた刺身には懸念されたアンモニア臭は微塵もなく、帰港後定食屋で出された刺身より余程美味だった事を付記しておく。背鰭棘には十分注意して捌き、生食に抵抗がある向きはフライや空揚げで試してみては如何か。
※エドアブラザメ背鰭(1基)に毒棘はないが、歯はツノザメよりも長く鋭いので要注意。


アカムツ釣りに役立つ!?ディープマスターのワンポイント

各地で威力全開!「集魚ギミック」を使いこなす
ある日の東伊豆稲取沖でベーシックな棚取りでの放置プレイに終始しながら、断トツの釣果に恵まれた筆者。同様の置き竿や積極的に誘い続けたメンバー達との違いは「集魚ギミック」しか考えられない。
この日は全員が併用、若しくは単体使用した「フジッシャー毛鈎」と「マシュマロボール」は今やアカムツでは「鉄板」と言えるギミックであり「大差」の要因とは考え難い。唯一異なったのは全鈎に配したニッコー化成「激臭匂い玉7φ」。この秋の寒猫根でもセット直後から本命連発しており、無視できない存在となった。先の2アイテムと併せ「アカムツ3種の神器」として過言ではない!?
もちろん、ギミックのコンビネーションも重要。この日の8尾中6尾が青紫フジッシャー+マシュマロボール蛍ムラ+いかごろグリアー匂い玉へのアプローチ(2尾は橙バケ&ボール+オキアミレッド玉)だが、釣場や日によりヒットカラーやパターンは様々。「ギミック満載仕掛」の威力を最大限まで引き出すには漫然と使い続けるのではなく、「引き算」も含め、状況に応じたセレクト&チョイスが重要となる。

近年鉄板は濃緑!?アカムツ釣りに於けるフジッシャー毛鈎のカラー傾向
東北から南紀まで、各地のアカムツシーンで「結果」を出し続ける筆者愛用「フジッシャー毛鈎」。
以前はアカムツでは青紫と橙の2色が鉄板カラーとされ、濃緑はタマに喰う時がある程度。むしろメダイやサバのアプローチが早い(特に伊豆沖)デメリットが目立ち、ベーシック仕掛には配さない方向だった。
しかし、近年は状況が一変。「濃緑でないと喰わない」場面に少なからず遭遇する。この日クーラーに収まった釣果(アカムツ4、アラ1、シロムツ2、カゴカマス1)は全て濃緑バケだし、銚子沖寒猫根や青森県風合瀬でも同様のケースが複数回。「余剰気味」だったハズの濃緑バケは気が付けば「残僅少」となっていた。
元来「高水温時に強い」傾向ゆえ、近年各地の「水温高め」にマッチしたのか。因みにフジッシャーに組み合わせる「マシュマロボール」のカラーはバケカラーとリンクさせるのが基本だ。

最早「仕掛の一部」!?東伊豆稲取で「海園」の効果を実感
この日の東伊豆稲取沖では仕掛上部にサメ被害軽減装置「海園」の直結タイプを配してスタート。周囲がツノザメのアプローチに閉口する中、1投目から本命を手にする事が叶う。
その後の縄切禍で仕掛一式ロストし「海園」無しで再開すると、それまでノーアプローチだったツノザメ&エドアブラザメが普段通りに襲い掛かり、改めてサメ回避効果を実感した次第。サメ禍多発地帯では「仕掛の一部」と捉えて有効活用したいギミックだ。

釣果を分けた!?ギミックのセレクト
夏の静岡県浜名湖沖で左舷の筆者に6尾、大艫に4尾、対する右舷の二人は各2尾と左右でアカムツの数に差が付いたが、原因は「潮向き」だけではなさそう。
クロシビカマス(スミヤキ・ヨロ)に因るであろう縄切禍が頻発したが、一番の要因と疑われがちな水中灯を唯一使用した筆者の被害は追い喰いを待ち過ぎた1投のみで、しかも仕掛上30mプラスの位置。ライトを配さない右舷二人が仕掛直上から数回も切られている事の説明が付かない。
改めて各自が仕掛に配したギミックを見れば、フジッシャー毛鈎とマシュマロボールは全員使用、違うのは左舷はニッコー化成の「激臭匂い玉7φイカゴロクリアー」に対し、右舷二人が使ったのは「蛍光紫フロートパイプ」。少なくともこの日浜名湖沖のアカムツは激臭匂い玉を選び、スミヤキは蛍ムラパイプに強い興味を示した…と言う事になる。ギミックは各種・各色・各サイズを持参し、状況に応じてフレックスに対応したい。

「秋のアカムツには赤ランプとスモールベイト」
夏~秋の静岡県富戸沖アカムツは、250mラインに出る「反応」をチェックする攻め口。この反応はアカムツ単独ではなく、ベイト(カタクチイワシなど)の群れと、これを追う魚種の混成群。数はサバやサメなどエキストラが上回る。
本来アカムツに有効な発光体だが、大きな光源や白色光は他魚へのアピールも強力。サバやサメを先に寄せてしまうため、「着底と同時にエキストラがアプローチ、本命を喰わせる暇がない」事も度々。
故にルミカ「輝泡」など赤色発光の小型ライトを使用する。
ベイトサイズも同様で、大型アカムツは大振りの身餌にも問題なく喰い付くが、この場面では過剰アピールとなってサメが早いのが否めず、幅1cm、長さ10cm程の短冊を使用する。
夏場の東伊豆アカムツのキーワードは「赤色小型発光体」と「小振りのエサ」。新春以降の深みでの釣りに比べ、やや控えめのアピールが◎だ。

最も簡単、かつ有効なサバ対策は
「関東アカムツ釣りのメッカ」寒猫根や大型が数出る新釣場福島県沖など、太平洋岸の浅所釣場に共通する「ネック」がポイントを回遊するサバの群れ。混雑した乗合船では度々大マツリを引き起こす元凶となる。
サバ除け対策としては
①水中灯、チモトの発光玉や蛍ムラパイプを外す。
②マシュマロボールは輝度無しの「アカムツスペシャル」をセレクト。
③バケ使用時はカラーを精査し、改善がなければ空鈎に。
④付エサのサバ短冊はサイズを小振りにする、若しくはホタルイカオンリーとする。
等々、アピールを抑える「引き算」が全国共通の模範解答。反面、除いたギミックが肝心の釣果を大きく左右するケースも否めず、デリケートな部分なのも事実。
そんな中最大の引き算にして最も簡単、かつ有効なのは「欲をかかずに一本バリ」だ。
追い喰い0ゆえに何が喰おうと必ず巻き上げるからオマツリのリスクは大幅減、仮に絡んでもスピーディーに処理出来る。一流しに複数回の投入が可能な浅所の釣りでは鈎数を減らす事が最終的にタイムロス、チャンスロスを抑える最善策。 釣果を伸ばすのは「如何にサバを掛けずに海底まで仕掛を下ろすか」「如何にオマツリを回避するか」「如何に素早くサバ(&オマツリ)を処理し再投入するか」に他ならない。

船長お薦めは太ハリスと大型バリ。静岡県由比沖のアカムツ仕掛
PE4号400mを巻いた3000番電動にオモリ200号と聞けば、ハリス6~8号、ホタ16号が今風だが「口が大きいし、ハリスを見るような魚じゃない」と言う由比港龍神丸の船長推奨仕掛は東~南伊豆の深みで大型アカムツを狙う際と同等、もしくはそれ以上のスペック。
鈎はKINRYUホタ17号赤、ハリスはナイロン12号を65cmで筆者同様「ナイロンの伸びと浮力」の優位性を説く。仕掛上端には赤色発行体を配し、チモトは夜光パイプに発光玉、マシュマロボールとアピールグッズ満載。
ゴツイ仕掛に抵抗がある向きもあろうが、当日も真っ先に本命(しかも船中最大)をキャッチしており、説得力は抜群。同所では3kg超クロムツ、9kgアラ、5kgマダイなどの実績もあり油断は禁物。下記のサンマエサも含め「郷に入らば郷に従え」の謙虚な姿勢は重要だ。

由比沖鉄板のサンマ餌には一手間掛けて
今やアカムツ付エサの「最メジャー」は青森風合瀬から南紀浦神沖まで全国各地のフィールドで多用されるホタルイカである事に異論はないが、「由比沖ではあまり喰わない」とは龍神丸船長の弁。過去筆者以下TEAMの複数メンバーがホタルイカを試したが、モノの見事にノーヒット。当地深海魚の主食とされるサクラエビとの関連性は不明だが、船長、同乗者含め釣果の100%が船でも支給されるサンマという徹底振り!?だ。
船配布のサンマはカット済みのパック。そのままでも使用可能だが、佐野船長は「手間だが身肉を削いで」を推奨する。身肉を削ぐと餌の「泳ぎ」が良くなると同時に鈎落ちし難くなるメリットが。鈎掛けは尾部以外は腹側(銀色の部分)先端部の縫い刺しが鈎持ちが良い。
因みに筆者は三枚に下したサンマ半身の身肉を刺身包丁で削ぎ落して多量のグルタミン酸と少量の塩で「旨味加工」し、釣行前に船配布と同等サイズにカットして持参する。



アカムツ料理

その味覚は「白身の大トロ」と称され、癖の無い上品な脂が乗った肌理の細かい身は「最上級の旨さ」とする声も多い。3~4日チルド庫で寝かせてから生、焼き、煮、鍋、揚げと様々な調理が可能だ。

活け造り

高級魚アカムツの刺身を一手間かけて大皿に盛り込めば、更にゴージャスな一品に。
材料:丸魚一尾/山葵/大根/大葉/穂紫蘇/紅蓼/パセリ/柑橘類(レモン・スダチ等)

調理

  1. 魚は胸鰭周辺(カマ部)以外の鱗を引き、鰓・腸を除く。鰓を外す際、付根を切らない様、注意。腸は腹鰭から肛門の間を切って取り出す。活け造りでは尾・頭も料理の一部。見た目が汚くならない様、注意する。
  2. 中骨に頭・カマを付けたまま三枚に下す。左半身は背鰭に沿うように包丁を入れ、背骨に切っ先を当てながら中骨を擦る様、尾に向かって切り進む。
  3. 魚を180°回転させ、腹側は尾の付根から包丁を入れる。背側と同様に頭に向かい、肛門まで切り進む。
  4. 尾の付根から包丁を入れ、背骨中央を頭に向けて切り進む。腹骨の付根を断ちながら、首の付根まで切る。
  5. 頭頂部から胸鰭下を袈裟切りし、左半身を外す。
  6. 右半身は頭をまな板から外して下す。身が反り返らず、頭を落とした状態に近付くので、下ろし易い。
  7. 右は背側が尾から頭、腹側は肛門から尾に向けて包丁を入れ、以降は左側と同様に切って身を外す。
  8. 腹骨を剥き取り、枝骨を毛抜きで抜き取る。大型なら背節・腹節に分け、この時枝骨を削ぎ落とせば毛抜きで抜く手間が省ける。
  9. 表皮を引く。一部は皮を引かずに②の「湯引き」や皮目を焼いた「炙り」にして盛り込んでも良い。
  10. 平造り、若しくは削ぎ切りにする。鞍掛け切り(平造りのセンターに切り込みを入れる)にして柑橘系スライスを挟むバリエーションも。
  11. 削ぎ切りの尾側をクルリと巻いて芯とし、これに削ぎ身をサイズの小さい物から順に巻き付け、形を整えると「花盛り」になる。
  12. 大根でツマを作る。尾と頭を固定する台も大根を使うので、この分は残しておく。
  13. 尾・頭を皿に盛る。見栄えよく形を整え、竹串や楊枝を使って大根の台に固定する。
  14. 大根のツマ・大葉を敷いて盛り付けの土台を作り、刺身を形よく盛り込む。
  15. 穂紫蘇、パセリ、柑橘類、山葵などを彩りよく添える。

湯引き
画像の活造りに盛り込んだ刺身のバリエーション。
材料:皮付きの半身、若しくは柵
調理

  1. 柵は表皮を上にしてまな板に置く。
  2. 表皮にまんべんなく熱湯を掛ける。この時布巾を掛けると均等に熱が回る。
  3. 氷水にくぐらせて粗熱を除いてから水分を拭き取り、冷蔵する。
  4. 充分に冷えた所で皮ごと引いて盛り付ける。

アカムツの揚げ出汁
隔週刊つり丸の連載企画「魚が美味い店」の取材時、板長が持ち込みのアカムツを即興調理した揚げ出し豆腐の魚版。あまりの美味さが忘れられずレシピを再現。
材料:皮付き柵/茄子/獅子唐(又はピーマン)/片栗粉/醤油/味醂/揚げ油/濃縮麺つゆ/紅葉おろし
調理

  1. 醤油と味醂を1:1(甘口好みなら味醂を1.5)の割合で合わせて火に掛け、沸騰寸前で止めて冷まし「漬け汁」を作る。
  2. 柵を食べ易い大きさに切り、漬け汁に10分ほど浸して下味を付ける。
  3. 150~160℃の油で付け合わせの半割した茄子(大きなものは食べ易いサイズにカット)と獅子唐(又は半割しカットしたピーマン)を素揚げにする。
  4. 切り身をつけ汁から上げ、表面を拭いてから片栗粉を振り、180℃の油で色よく揚げる。
  5. 濃縮麺つゆを瓶表記の「掛け汁」の濃度に湯で希釈する。
  6. 揚げた食材を鉢に彩りよく盛り込み、掛け汁を張る。付け合わせの「青味」はサッと茹でた菜花(画像)なども良い。
  7. 紅葉おろしを添えて供する。

卵の煮付け
黄色い卵巣が大きく膨らむ夏秋限定のメニュー。
材料:アカムツ卵巣/醤油/味醂/根生姜又は粗挽き黒胡椒/木の芽
調理

  1. 卵巣は一口大の輪切りにする。
  2. 水3:醤油1:酒(又は味醂)1:砂糖1/4を合せて良く混ぜ、根生姜の薄切り(若しくは粗挽き黒胡椒)を加えて強火で煮立てる。味醂を使う場合は砂糖の量を減らすが、各調味料の割合はあくまで目安で各自の好みで調整する。煮汁はやや多目の方が焦げ付きなどの失敗が少ない。
  3. 汁が煮立ったら灰汁を掬い、卵巣を入れて煮る。切り口から卵の粒が煮汁一面に散るので、通常身とは一緒に煮ない。
  4. アルミホイルで落し蓋をする。煮汁が上側まで回り、かつ吹き零れない様に火力を調整。灰汁を除きながら10分程煮る。
  5. 小鉢に盛って供す。用意できれば木の芽を添える。

アカムツという魚

アカムツ
スズキ目ホタルジャコ科 Doederleinia berycoides
国内の分布:青森県~九州南岸の日本海・東シナ海沿岸、北海道~九州南岸の太平洋沿岸、東シナ海大陸棚~斜面域、大東諸島近海
その名の如くメタリックレッドに輝くボディと、大き目の胸鰭が印象的。口腔内と腹膜が黒く、地域により口腔内にタイノエの一種の寄生が多く見られる。下顎先端は無棘。背鰭は棘条部と軟条部の境が大きく欠損する1基で側線有孔鱗数41~49。名はムツだが、分類上はホタルジャコ科。
練り製品などの利用が主のホタルジャコ科魚類に於いて、唯一高級食材として流通する魚。日本海側での呼称「ノドグロ」はかつて関東を中心にユメカサゴ(俗称ノドグロカサゴ)と混同された時期があったが、グルメ・旅番組や有名テニスプレイヤー発言など、マスコミにより全国的に「ノドグロ=アカムツ」の認識が広まった。

雄と雌で寿命が異なり、頭の角張る雄(釣りでは稀)は寿命5年程度、成魚でも20cm~最大30cm程度と小型。対して雌の寿命は10年と雄より長く、50cm超、2kg以上まで成長する。

成魚は水深300m前後の砂泥・砂礫底が常棲帯だが、初夏~晩秋は産卵のため200~250m(北の海域では若干水深が浅く120~180m)に移動・集結。夜間はやや浅みに移動する傾向。また、若魚は100m前後と比較的浅い場所にも分布する。

秋に産卵期を迎える本種の体重は初秋の頃「年間最大」となる。このため卵巣が膨らみ始める初夏あたりから卵に栄養を持っていかれた身肉は、大型になる程「水っぽさ」が否めない傾向。もちろん産卵直後は更にコンディションが下がる。対して産卵に向け、深みで栄養を蓄える年明け~春先は脂が乗り切って水気が少なく「白身の大トロ」と称するに相応しいコンディション。「食」の真価を実感できるベストシーズンだ。

水圧変化に強く海面下まで抵抗を続ける上、口周りが脆く鈎外れし易い。稀に「浮かぶ」個体も有るが、多くは泳ぎ去るので取込時は玉網のアシストが必須。水深を変える事で周年釣る事が可能だが、夏~晩秋を釣期とする地域が多い。現在北は東北青森から西は紀伊半島~四国沖まで、本州の広い範囲で遊漁が行われ、今後更なる釣場拡大が見込まれる。今や「最もメジャーな深海ターゲット」として差し支えなかろう。