深海研究所 Part 3 マダラ
第3話 マダラ
漢字では魚偏に雪と書き冬のイメージが極めて強いが、釣期は初夏から年内一杯で数が出るのは夏場、身肉が最も美味いのは白子や眞子が未熟な盛夏、代名詞の白子は秋口の完熟以前が極上…と釣りの世界では「読んで字の如く」ではないマダラ。
派手なアタリと強い引き、最後は海面に浮かぶ白提灯は視覚的にも申し分ない釣趣に加え、魚体サイズと釣果の手堅さはこの魚の大きな魅力。オキメバルと共に北の海域を代表する深海ターゲットだ。 本編では各地で行われる胴突仕掛の釣りに限定して解説。北海道のタラシャクリや電動ジギングなど、ルアー系は除いた。
マダラの釣場
北の海を代表する深海ターゲットはその分布域で広く遊漁の対象とされるが、晩秋以降の東北日本海では出船日が限定され、自然禁漁に近い状況となる。一方ここ数年の高水温で茨城県北部~福島県南部は魚影が薄く、マダラ釣りは下火傾向。
北海道各地
青森県~京都丹後半島沖の日本海沿岸
青森県~福島県の太平洋沿岸
タックルと仕掛
ロッド
大型のパワー、数本が連なった際の大負荷に負けない強度と粘り腰だけでなく、PEラインの伸びの無さでダイレクトに伝わるショックをカバーし、バラシや糸切れを防ぐしなやかさも必須。
マダラを喰わせる「底叩き」をスムーズに演出可能なアクションを設定したグラスチューブラー素材2m前後の深海専用竿。使用錘(釣場により200号~350号)を踏まえて硬軟をセレクト。オキメバルやキンメダイでの「バラシを抑えるやや負け気味」に対し、錘号数を適合させ「底叩き」「根掛り回避」を優先させるのがセオリー。
アルファタックル適合モデル
錘200号…ディープオデッセイ モデルTT
錘250~300号…ディープインパクトLight / ディープインパクトTERUスタイルRT0 / ディープインパクトTERUスタイルS1
錘300号~350号…ディープインパクトTERUスタイルRT1 / ディープインパクトTERUスタイルS2 / ディープインパクトカイザーG
リール…
ロッド同様パワーは不可欠。大型の数珠繋ぎも余裕で巻き上げ、上層のサメ禍対策「魚が付いた状態で高速巻上」も可能な高い実用巻上力は重要なポイント。ポイントの水深からPE6~8号を400mキャパシティで釣りは可能だが、根掛り頻発のポイントでは高切れなどライントラブルを配慮して糸巻量にも余裕が欲しい。一部3000番、500番クラスを使用する船もあるが、現状主流とは言えないだろう。 ミヤエポック AC-3JPC・R800 S社6000~9000番 D社800~1200番
仕掛…
10kg超の大物や「白の提灯行列」が期待できる釣りだが、ハリスや幹糸号数は地域や釣場、船宿により異なる。
一般的には沈船や荒根など根掛りの激しいポイントがハリス8~10号50~70cm・幹糸14~16号1~1.4m。比較的平坦で送り込みOKの釣場はハリス12~14号・幹糸18~20号。ハリスと幹糸は沈船用と同寸でもOKだが、やや長めのハリス長75cm~1m、幹間隔1.5~1.8mとすると喰い渋り時は特に有効だ。
ハリは長軸&特殊形状でバレ難い、チモト付近が傷付かない、鋭い歯の並ぶマダラの口から外し易いと3拍子揃った「ホタ鈎」17~18号がお勧め。 軽量バリのセレクトは低活性時に明らかな喰いの差となって現れる。ハリ数は4~5本で充分。手返し良く、パスせずに全ての流しを投入する事が、確実な「釣果」に繋がる。
捨て糸は8~10号1mとし、錘は根掛りでのロストを考慮して多目に持参。海底に残っても環境に負担を掛けない鉄製のフジワラ「ワンダーⅠ」を推奨する。ただし「船宿指定の錘を使用する」という事も付け加えておきたい。
仕掛上端のヨリトリ器具は「アタリ後に仕掛を這わせて追い喰いさせる」のポイントでは中オモリの役目を兼ねるのでミヤエポックの「キャラマンリング」「ヨリトリフィン」「ヨリトリチェーン」を連結して重量を持たせ、沈船など糸送りNGポイントなら「ヨリトリ効果」のみを考慮してフジワラ「深海用リングS」などやや小振りの物をセレクトする。
集魚ギミック…マダラには「ボーっと光る緑色」が極めて有効。仕掛上部にはルミカ「ケミホタルイカ6インチ」と「ハイビット」をフックで連結して配し、各鈎のチモトにはルミカ「ルミコグリーン」とヤマシタ「マシュマロボールL・夜光イエロー」、空鈎ではニッコー化成「スーパータコベイト6インチ」やヤマシタ「パニックベイトアコウ・グリーン夜光」も併用、ド派手にアピールする。 また深海バケを含む全ての鈎にはニッコー化成「激臭匂い玉7Φ」のイカゴロエキス配合タイプを通し差し、嗅覚にもアピールする。
深海バケ…藤井商会「フジッシャー毛鈎ホタ」18号の紫、濃緑、橙の「鉄板カラー」3色に低水温時に強い、紅・ピンクを加えた計5色は必須。
これに冬場の高水温時に「特色」となる可能性がある水色や、白(蛍ムラ)・赤紫・茶など各色を持参。 「午前中は濃緑、午後は橙のみ」「水色以外全く喰わない」など、極端なケースも多々あるので、周囲の状況や水温、過去のデータを参考に、配色はフレックスに対応する。
エサ…「たらふく喰う」の語源で、何でも腹一杯喰う悪食とされているが、最も安定しているのは後述(ワンポイントの項)する「サンマ半身を斜めに細長く半割りしたビッグベイト」。当日の食いや投入回数にもよるが、鈎5本サンマオンリーで一日釣る場合は15尾分(60枚)が持参の目安。匂いも大切な要素なので「無傷」でも2流しした物は交換したい。
サンマに比べると「ムラ」があるが肝付ゲソ半割やイカワタ、マイワシ、小イカなどが有効な場合もあり、これらをサブ的に持参するのも一手。
ワームでは集魚エキス配合のニッコー化成「スーパータコベイト6インチ」半割に「激臭匂い玉」をカットせずにスダレ掛け(画像参照)して実績あり。集魚力を維持しつつ、サンマエサ最大の欠点である「落ち難い臭い&脂汚れ」と「エサ持ちに難」を解消し手返しも大幅アップする。
その他のギミック
サメ被害軽減装置 デニズ「海園」
夏場の太平洋岸は数釣りの時期だが、中~上層でのサメ禍(奪い喰い)も頻発。入れ喰いの日に16尾連続の被害記録!?もある。これまでは「ラスト数十mの最高速巻上」しか対策法がなかったが、多点掛けや大型ほど上層での巻上げが滞り被害に遭う率も高い。強い抵抗と海面下に揺れる魚影に「当日最大」を確信しながら、目前でサメの胃袋に消えたマダラが何尾もいた。また高速巻は口切れのリスク、終盤はスプールが太くなる事でドラグ力が低下し巻上が滞る「現実」も露呈する。機種によりパワー不足で手巻アシストの場面も少なからず目にしてきた。
現在は海中で電流を発生、鼻先の電気器官「ロレンチニ瓶」を捕食に使うサメ・エイ類のみに作用し、仕掛から遠ざける効果が確認されているサメ被害回避装置「海園」を使用する事で被害は大幅に軽減可能。但し「アカムツ釣りで海園を使用するとドンコ(チゴダラ)が喰わない」のテスト結果も報告されており、アンテナ機能の髭を持つタラ類の摂餌にはある程度の影響がある様だ。故に「最初から仕掛に配す」タイプは宜しくなさそう。巻上開始時にカラビナを道糸に掛けて投入する「Ver.2海園」をセレクトしたい。
磁石版
全ての釣場で手前マツリを防止するのに極めて有効なギミック。船に設置されていない場合は持参がお勧め。基本鈎数は少ないので、短尺の物でOK。
実釣テクニック
船縁に仕掛けを並べ、合図と共にオモリを前方に軽く放り投げて投入。合図に間に合わない、トラブルで仕掛が下りない場合は、基本的に一回休み。船長の許可が無い限り、「後から投入」はナシ。 仕掛が全て海中に入ってから親指でスプールをサミングしつつクラッチを切り、バックラッシュに注意しながら一気に海底まで下ろす。
基本的な仕掛操作
錘が着底したら一旦オモリを底から離して糸フケを完全に取った後、再度フリーにして着底させたらロッドの長短・硬軟やウネリの高低、釣座の位置などを計算に入れて50cm~1m位底を切り、船の上下で錘が海底をトントンと叩く「一ウネリ一叩き」の状態をキープしてアタリを待つ。小まめに底を取り直す事が根掛り回避と同時にアピールに繋がる。
マダラのアタリは明確。竿先をガクガクと揺さぶった後、フワッと戻すのが特徴で、見落とすことは殆ど無い。小さなアタリは小型メヌケやチゴダラ(ドンコ)が主で、エサを取られる事も少なくない。エサを小振りにしてこれらを鈎掛かりさせるか、頑固一徹大型マダラのみを狙うかは各自の自由。
比較的根掛りの少ない「送り込みOK」のポイントではアタリがあったらすかさず幹糸間分のラインを送り込み、追い喰いさせるのがセオリー。これをアタリ毎に行い、次々と喰わせる。アタリの主がタラでない場合も操作は全く同じ。既に魚が掛った鈎、エサが取られた鈎にタラは喰わない。追い喰いを狙って送った結果の根掛りならば恥じる事はないので、送り込みは「魚と錘を交換」位のつもりで大胆に行う。故に、オモリは海底に残っても環境に負担を掛けない鉄製「ワンダーⅠ」の使用を推奨するのだ。ただし「船宿指定の錘を使用する」という事も付け加えておきたい。
沈船ポイントでの仕掛操作
沈船ポイントは大型が潜む魅力の半面、自然の根と異なる複雑な形状ゆえに気を抜いているとあっという間に根掛り、鈎掛りした魚を放置すれば障害物に潜り込み回収不能となる難所でもある。
錘が着底したら根掛りさせぬよう、即座に底を切る。海底が浅くなり錘が海底を叩いたら同様に巻上げ、根掛りを回避しつつアタリを待つ。アタリがあっても送り込みは厳禁。素早く3m巻上げて追い食いを待ち、第2信以降も同様に「上へ、上へ」を意識する。巻上は頃合いを見てor合図を待って行うが、「これはデカい」と確信するビッグヒットなら、単発でも早々と巻くのが得策だ。
※ポイントや潮況で船長から異なる指示が出た場合はそれに従う事。
根掛りの処理
根掛りした場合はいきなり「切る」のではなく、先ず「錘が掛っている」を想定して「外す」事を試みる。ロッドが充分絞られるまでリールを巻いてラインをピンと張り、スプールを軽くサミング、バックラッシュに注意しながらフリーにして一気にテンションを緩める。
これを2~3回くり返しても外れない場合はドラグを締め込んでロッドのパワーと船の移動で「切る」を試みるが、それでも切れない場合はタックルを痛める前に速やかにドラグをフリーにしてラインをリリース。船のボーズに巻く、根切器具を使うなどで処理する。但し、以上の操作はテンションが掛るとクラッチを切るのが困難なスタードラグリールでは不可能。「深海釣りにはレバードラグ優位」の理由の一つである。
巻上~取り込み
巻上げのタイミングは投入と異なり、各自自由が主流。船長の合図まで目一杯待っても構わないが、活性が低く追い喰いがない場合や、特に大型と判断できる強いアタリなら、一本を確実にキープする方向で早めに巻上げに掛るのが得策。ドラグを効かせた中速をキープするが、錘が切れている場合はややスピードアップして巻き上げる事で同乗者とのオマツリを回避する。
但し、夏季にサメが回遊して上層で魚が奪い喰われる場合はラスト数十mでドラグを締め上げ、多数や大型のハリ掛りでも最高速巻上の指示が出る事も。リールの「真の巻上パワー」が問われる場面でもある。
また、根掛りで魚も錘もない場合はオマツリ回避のため終始高速で回収、次回投入に向け準備を整える。
上層までマダラの激しい抵抗は続くが、最後は基本的に海面に浮かんでしまう。サメがいなければ慌てることはないが、錘が切れている場合にはオマツリを避けるべく、手早く取り込む事を心掛ける。
希にガスが抜けて泳ぎ去る個体もあるので、大型や掛りの悪い物はギャフでの取り込みが無難。口には細くて鋭い歯が内向きに並んでいるので鈎外しの際には要注意。
魚を鈎から外した後、エサを付けながら船縁に順序よくハリを並べていく。この時ハリスや幹糸、鈎先をチェックし、傷付いた物、甘くなった物は即座に交換し、次回投入に備える。
以上動作をスムーズにくり返し、全ての回を投入する事が釣果に繋がる。慣れない向きは「二組を交互に使用」がお勧め。
釣り上げたタラは必ず鰓の付根にナイフを入れ、バケツの海水で血抜きを施した後、海水氷のクーラーに収めて全体を冷却する。ここが後述する「味覚」を決めるポイント。血抜きをしても、氷だけのクーラーに放置では殆ど意味がない。必ず海水を注ぎ「海水氷」とする。特に夏場は充分な氷を用意して臨みたい。デッキに付着した血は放置せず、速やかに洗い流す。但し、サメ回遊時に血を海に流すのは「コマセ」同然となり厳禁。サメ回遊時期には血抜き専用クーラーや大樽を用意し、この中で放血。血抜きした海水は帰港時に捨てるなどの配慮が必要だ。
マダラ釣りに役立つ!?ディープマスターのワンポイント
マダラ特餌は味付サンマのビッグベイト
深海ターゲットにも「餌の好み」が顕著に見て取れる魚種が複数あるが、マダラもその一種でサンマ餌が圧倒的に有効。但しサンマは表皮が薄く柔らかいため、通常の短冊切りをチョン掛けすると極めて餌持ちが悪い。現場でも投入直後に海面を漂い、海鳥の餌となっているケースを度々目にする。
マダラ釣りの盛んな東北地方では「鮮度の良い生サンマを現場で切る」を推奨する船宿もあるが、入手やコストを考えると現実性が乏しいし、出船前や航行中に船上で餌を切るのは面倒でもある。筆者は専ら安価で入手し易い(近年は不漁で高騰傾向だが)解凍サンマに一工夫施して使用、実績を上げている。
サンマは胸鰭を残した状態で3枚に下したら軽めの塩とたっぷりのグルタミン酸を振る。二晩ほど冷蔵して身を締めつつ味付も施した後、水気を拭き取れば「下ごしらえ」は完了。使用前夜に肩口から斜めに包丁を入れ、可能な限り「細長い半割り」にして持参する。ポイントは「締めた半身を半割りにする」事。半割してから加工(締める)と身がチリチリと縒れてしまい「泳ぎ」が悪い、幹糸に絡み易くなり要注意。
鈎掛けは胸鰭の骨と尾の付根の硬い部分を利用する事で、投入時~降下中の脱落を解消可能。加工後水気を除いた半身をラップに包み冷凍保存、使用前日に解凍してカットでもOK。ある程度の量をストックしておけば急な釣行にも対応可能。 マダラ以外にも大ムツやアラ、オニカサゴ、コウジンメヌケなどに有効だ。
※マダラ以外の魚種ではサンマ餌使用を禁止する地区(東京都新島沖・千葉県勝浦沖など)があり、使用の際は要確認。
ワンポイントで配す「スルメイカ肝付ゲソの半割」
時にイカワタに強く反応するマダラの仕掛に「ワンポイント」で配すエサがキンメダイの項でも紹介した「スルメイカの肝付ゲソの縦半割」。胴を外した肝付ゲソは切れ味の良い包丁で眉間から左右対称(脚5本のセンターが鰭脚となる様に)に割り、切り口を上にしてトレーに並べたらグルタミン酸をタップリ振って一晩冷蔵。絞れた水分を除いて使用する。鮮度の良い生イカがベストだが、冷凍イカを半解凍状態で加工してもOK。鈎掛けは鰭脚の付け根付近にチョン掛けすれば良い。肝の「コマセ効果」も期待!?して仕掛の中~上部に配すのがセオリーだ。
エキストラ少ないマダラはアピール最優先のグリーンライトが◎
水中灯を筆頭としたアピールグッズは各種深海ターゲットに有効だが、「諸刃の剣」の部分も否めない。 クロシビカマスを筆頭とした縄切魚や深海ザメ、ギス、シマガツオ、サバなどのエキストラが多いポイントや海域では本命より先にこれらを呼び寄せてしまう事も少なからず。状況に応じた発光カラーやサイズのセレクトは結構気を遣う部分。
午前と午後でヒットカラーが変わる!?釣果を握るフジッシャー毛鈎のセレクトとは
オキメバルの項でも詳しく振れた「深海バケのカラーセレクト」は勿論マダラでも重要なポイントだ。 茨城県北部~福島県南部のマダラ釣りが隆盛を極めた時期、数釣れる夏場の鉄板カラーは青紫・橙・濃緑の3色。配色は午前が下鈎から橙、青紫、濃緑、青紫、濃緑の順、午後は橙、青紫、橙、濃緑、青紫の順に差し替えるのが基本パターン。青紫は終日安定して喰うが、濃緑は午前、橙は午後に偏るケースが非常に多かったからだ。
ところが5~6月のシーズン初期や終盤の11月以降になると少々様子が異なってくる。晃かな低水温時には紅色やピンク、赤紫などの「赤系」が明らかな優位性を示す事が目立つ。また「冬だが水温が高い」場合は鉄板カラーも赤系も完全スルー、普段は「ドンコも喰わない!?」水色しか口を使わないケースにも幾度か遭遇。同乗者0~5尾の中、後半に配した水色バケ2本で16尾のトリプルスコアをマークした事も。
ヒットカラーを掴んだら全鈎同色に…と思いがちだが、実際にはそこまで簡単なものではない。ポイント移動などちょっとした条件の変化でヒットカラーがクルリと変わる事があり、マダラに限らず単一色の仕掛はリスクが大きいのだ。 真夏の宮城県金華山沖では自身の11kgを筆頭に船中好調だった青紫がポイント移動した途端に喰わなくなり、以降釣果はピンクに集中した経験が。投入毎にカラーチェンジする「いじり過ぎ」は逆効果になりかねないが、深海バケは各色を用意。実績と傾向を踏まえつつ、常に「次の一手」を意識しておく事が必要なのだ。
釜石沖は巻き上げ、綾里沖は送り込み。釣場で異なる追い喰いのテクニック
一部釣法解説と重複するが、筆者が定期的に釣行する岩手県越喜来崎浜港は南に綾里沖、北に釜石沖と何れ劣らぬマダラの好漁場を有すが、両ポイントの攻略法は「真逆」で翻弄される釣人も少なからず。
比較的平坦な海底で根掛りが少ない綾里沖ではアコウダイ同様に「アタリがあったら幹糸間隔分を順次送り込んで仕掛を這わせ」追い喰いを促す。故にハリス号数は12~14号と釜石沖より太めでもOKだ。
一方釜石沖は糸を送れば根掛り必至の「ガッチガチ」の沈船故、推奨ハリスは8(~10)号と一回り細め。着底後すかさず糸フケを除き、3m底を切ってアタリを待つ。竿先を注視してオモリが着底したら素早く3m切って待ち、アタったら3m巻き上げて追い食いを待つ。追い食いしたら更に3m巻き…と上へ、上へのアプローチ。「これはデカい」と確信したら単発でも早々に巻き上げるのがビッグワンを手中に収める最善策だ。
マダラ三枚下しのコツ
一度の釣行で数釣れる事が少なくないマダラ。「足が速い」魚でもあり、帰宅後のスピーディーな処理は中々大変。特に3枚下しはアバラ骨の付根が板状に繋がっている為、普通の方法では骨を断つのに苦労するし、包丁の刃も痛めてしまう。 マダラの三枚下しにはちょっとしたコツがある。
- 鱗を除き、鰓腸を除いて頭を落とす。
- 通常3枚下しと同様に背側、腹側から背骨に沿って包丁を入れる。
- アバラを断ち切らず、板状になっている付根部分の上を包丁の刃で擦り、身だけを切る。
- 尾の付根から腹腔手前までを切り離し
- 尾鰭を押さえて一気に身を引き剥がすとアバラが背骨に残った常態で綺麗に身が剥れる。
但し、この方法は鮮度が良い事が条件。釣行当日の処理をお勧めする。
マダラ料理
「マダラってアンモニア臭い」と思っているアナタ。それは血抜きしていないから。「白子は美味いけど、身はパサパサだよね。」それは冬場の個体だから。
流通するマダラで血抜きされた物は皆無だろう。釣上げた直後に鰓の付け根にナイフを入れて放血し、海水氷で充分に冷却して持ち帰るマダラは釣人の特権。翌日までなら刺身(ポン酢がお勧め)もOKだし、臭みが全くない上質の白身は和洋中、様々な調理にアレンジが可能。
刺身以外は三枚におろしたら軽く塩を振って2~3時間冷蔵後に水分を拭き取る。これをラッピングして冷凍すれば長期間の保存でも殆ど劣化が見られない。
我が家では「夏ダラ」の身を晩秋まで保管し、やや未熟な極上白子+プリプリ極上の身で楽しむ贅沢なタラ鍋は刺身同様、釣師の特権だ。因みに白子を採った「冬の身」も同様に処理、油を使うなど旨味を補う調理法で上等だ。
刺身
材料:柵/浅葱/紅葉おろし/ポン酢
調理
- 釣り上げたマダラが生きている内に鰓の付け根を切って血抜きし、冷海水でキンキンに冷やして持ち帰る。
- これを前述の要領で三枚に下し当日中、遅くても翌晩までに薄造りに引く。胃袋を開いて内容物を除き、湯引きして小口に切ったものを添えても良い。
- 紅葉オロシとタップリの浅葱小口切りを薬味にポン酢で食す。ポン酢には少量の肝を溶いても良い。因みに「タラ刺し」にはワサビ醤油は向かない。
※翌日以降の生食は昆布〆にする。こちらはポン酢よりワサビ醤油が合う。
さごはち漬け
材料:切身/さごはちの素(市販品)
調理
塩、麹、米を3:5:8の割合でブレンドした漬物用の「さごはちの素」を切り身にまぶして一晩置き、洗い流すだけで簡単に作れる保存食。市販の「塩麹」を塗布して冷蔵しても良い。西京漬け(調理はキンメダイの項参照)も美味。各種漬物は冷凍保存可能。焦さない様に焼き上げる。
白子ポン酢
材料:白子/浅葱/紅葉おろし/ポン酢
調理
- 一口大にカットした白子を沸騰した鍋で湯がき、表面が透明感のない白色になったら氷水に取り粗熱を除く。(2~3分程度)
- 水気を拭き取り小鉢に盛り、浅葱の小口切りと紅葉おろしを添える。
- ポン酢を掛けて供す。
※湯がいた白子は豆腐の様に水道水を張った器に入れてで冷蔵、毎日水を変える事で数日間保存が可能。
フライ3種(ノーマル・チーズイン・梅紫蘇挟み)
材料:皮を引いた柵/パン粉/鶏卵/小麦粉/塩/胡椒/スライスチーズ/練り梅/大葉 タルタルソース用:マヨネーズ/鶏卵/玉葱/パセリ(生、乾燥の何れも可)/塩/胡椒/ピクルス(なくても可)
- タルタルソースを作る。鶏卵は固ゆでしてみじん切り。玉葱はみじん切りにして水にさらし、辛みを抜いてから水気を絞る。パセリのみじん切りと共にマヨネーズで和え、塩・胡椒で味を調える。ピクルスのみじん切りを加えればより本格的。食卓に出すまで冷蔵しておく。
- 皮を引いた柵は適当なサイズに切り分け、ノーマルはそのまま、チーズと梅紫蘇の挟みフライにする物は半分の厚さに開く。この時一辺は繋げておく事。
- ノーマルとチーズ挟み用には軽く塩、胡椒を振る。梅紫蘇には塩のみ。(軽く塩を振り、水分を絞った保存用マダラなら塩は振らない)
- チーズ挟みはスライスチーズを、梅紫蘇は開いた内側に練り梅を塗り、大葉を挟む。
- 小麦粉、溶き卵、パン粉の順で衣を着ける。
- 180℃の油で色よく揚げる。揚げ過ぎるとタラの水分や挟んだ具が油に溶け出し、はねるので注意。
- 挟み揚げはカットして盛り付ける。ソースは好みの物で良いが、梅紫蘇はそのまま、若しくは醤油で食す。
オーロラソース和え
材料:柵(皮付き、皮無し何れも可能)/生野菜(写真は赤と黄のパプリカとイタリアンパセリを使用)/揚げ油/小麦粉/塩/胡椒/ケチャップ/マヨネーズ/好みの洋風ドレッシング
- 柵を一口大にカット。軽く塩、胡椒して小麦粉を振る。(塩を振り水分を絞った保存用マダラなら塩は振らない)
- 180℃の油で色よく揚げ、油を切っておく。
- ケチャップとマヨネーズを1:1(好みで比率を増減)で合せてよく混ぜ合わせ、オーロラソースを作る。
- ソースに2の唐揚を加え、崩さないように和える。
- 5の野菜の上にオーロラソース和えを見栄え良く盛り付け、青味を散らし、完成。
※昭和40年代学校給食定番メニューのアレンジ。
唐揚げ完熟トマトソース添え
材料:柵(皮付き、皮無し何れも可能)/完熟トマト/コンソメジェル/グリーンアスパラ/塩/胡椒/乾燥パセリ/乾燥バジル/小麦粉/揚げ油/オリーブオイル
- 完熟トマトをざく切りにする。
- 塩、胡椒、乾燥パセリ、乾燥バジルを振り、オリーブオイルで合えて冷蔵しておく。
- グリーンアスパラを横1/2にカットし、塩水でサッとゆで上げる。
- 柵を一口大にカットして軽く塩、胡椒して小麦粉を振る。(軽く塩を振り、水分を絞った保存用マダラなら塩は振らない)
- 180℃の油で色よく揚げ、油を切る。
- 2のトマトを皿に盛り、コンソメジェルを添える。
- 4の唐揚げを盛り、グリーンアスパラを飾る。
※アツアツの唐揚げを冷たいソースで頂く一品。
シュウマイ
材料:身肉600g/ショートニング200g/玉ねぎ1個/片栗粉90g/卵1個/塩小匙2/砂糖大匙1/ 醤油小匙1/旨味調味料小匙1/白コショウ適量/シュウマイの皮(無ければ片栗粉でも可能)
調理
- 骨と皮を除いた身肉を粗みじんに刻み、少し叩く(フードプロセッサーですり身状にしても可)
- ボールに調味料を全て合わせて充分に撹拌し、身肉とショートニングを加えて練り込みタネを作る。
- 冷蔵庫で1時間以上(可能なら半日ほど)寝かせる。
- 玉ねぎをみじん切りし、タネと合わせる直前に片栗粉を加えてさっくりと混ぜる。
- タネと玉ねぎを混ぜ合わて餡の完成。
- シュウマイの皮で包む。皮が無い場合は丸めた餡全体に片栗粉を塗しても可。
- 強火の蒸し器で10~15分蒸し上げる。餡にカニやエビ、ホタテなどを混ぜ込む、皮に包む際にトッピングすればグレードアップ。
マダラの種類
マダラ
タラ目タラ科 Gadus macrocephalus
国内の分布:北海道全沿岸、青森県~茨城県の太平洋沿岸、青森県~山口県の日本海沿岸
頭が大きく、体長は頭長の3.2倍。背鰭3基、臀鰭2基を有す。側線有孔鱗は第3背鰭直下まで連続的で以降は不連続。
上顎は下顎よりも長く、下顎には眼径と同等若しくは長い1本の髭を有す。この髭は「アンテナ」の役目を果たすとされ、水族館の展示では斜め前方に「髭」をピンと伸ばして泳ぐ様が確認できる。大口の中には鋭い歯が内向きに並び、一度咥えた獲物は逃さない。「鱈腹喰う」の語源とされる旺盛な食欲で年に40~70%も体重が増加。10~12年で体長1mに達し、大型は20kgを超える。
マンボウ、マグロ類に次ぐ産卵数の多さと前述の貪欲さ、前述の成長の速さが大量に漁獲され続けても資源量を維持できる要因とされるが、獲れば資源量は減少し獲らなければ回復するのは東日本大震災後の東北太平洋岸の状況で一目瞭然。
成熟した白子はタチ、又はタツと呼ばれ珍重。「タラコ」は通常マダラではなく、後述するスケソウダラの卵巣を指す。
冬の魚のイメージが強いが、釣期は6月下旬~年末の約半年間。数が釣れるのは海況が安定する7月下旬~8月中旬頃。白子が膨らむのは9月下旬以降だが、身が美味なのはそれ以前。産卵が終わる年明け以降は痩せて味も落ちる。水温の関係で数十mでも大型が釣れる北海道以外は、水深150~300mの起伏の激しい荒根や沈船根を釣る。釣場によりサイズは異なるが、通常3~5kgを中心に大型は7~時に10kg超、冬場の東北では十数kgのビッグサイズも。基本夏は中型の数釣り、秋以降が型狙いとなるが、夏場も大物が混じるので、油断は禁物。
スケトウダラ
タラ目タラ科 Gadus chalcogrammus
国内の分布:北海道全域、青森県~和歌山県の太平洋沿岸、青森県~山口県の日本海沿岸
頭はマダラより小さく体長は頭長の3.7倍。背鰭3基、臀鰭2基を有す。側線有孔鱗は第2背鰭直下まで連続的で以降は不連続。
日本産タラ科魚類で唯一、上顎より下顎が突出。下顎の髭は退化的でない、若しくは著しく小さい。雄の腹鰭は雌より大きい。冬~春は産卵の為沿岸に集まり、夏~秋は分散して摂餌する。90cm超の記録もあるが、通常は大型で60cm、2kg程度。
蒲鉾や魚肉ソーセージなど「練り物」の主原料にして、タラコ&辛子明太子の親。日本の食卓を支える白身魚は単一種の漁獲対象資源としては世界最大級のボリュームとされるが、86年には歴史上最大とされる680万tあった北太平洋全域での漁獲量は90年代から減少し、近年はピーク時の半分以下。ベーリング公海では93年以降禁漁措置が取られるなど、資源の枯渇が危惧されている。
「スケトウ」の名は、「佐渡で多く獲れるタラ」が語源とされ る。「佐渡」の「佐」は「スケ」とも読み、「渡」が「ト」。「スケトダラ」→「スケトウダラ」。漢字は佐渡鱈となる。(他に「介党鱈」「鯳」の字もあり)
かつて北海道でも大量に漁獲された本種だが鮮度低下が早い上、冷凍すると冷凍変性(解凍すると身がスポンジ状になる)を起こすため練り物原料への利用は鮮魚に限られていたが、1960年に北海道水産試験場が本種のすり身に砂糖を加える事で、冷凍変性をほぼ完全に解消する技術(現在も当時のまま受け継がれている)を開発し一躍「冷凍すり身」の代名詞に。65年には船上でのすり身加工が企業化され、我が国の漁獲量は急増。72年に300万tを記録するが「領海200海里」以降は漁場規制で漁獲量は激減。現状「冷凍すり身」は輸入品や、本種以外の割合が増加している。
魚卵とすり身のイメージがあまりにも強く、他の調理イメージは希薄だが三枚下しでの歩留りはマダラ35%に対し、本種40%。スリムな外観だが可食部分は多い。新鮮な物はマダラ同様に生食も可能だが、アニサキスの仲間シュードテラノーバが寄生している場合があり-20℃以下で24時間冷凍した「ルイベ」が無難。フライやムニエルも美味。