MPG HISTORY / MPGの歴史


~すべてはここから始まった~

1985年12月1日。アルファタックル企画室に歓喜の声が溢れる。〈インストラクター鬼島辰雄が試作カモシロッドで32㎏ヒラマサをキャッチ〉当時の日本記録を更新したとされるこの一本はマニアックな釣りにこだわり、毎週の様に千葉県勝浦沖に通い続けた開発スタッフの熱き想いの結実と共に、MPGロッドが沖釣りシーンに産声を上げる「夜明け前」の胎動を間違いなく感じ取った瞬間でもあった。
カーボンロッドがあたり前の時代。ごく一部ながら船竿におけるグラスファイバーやソリッドの優位性を見出し、画一化するロッドシーンに一石を投じようとする動きはあった。【異端と独創】を渇望していたアルファタックルは、釣竿素材として使われていなかった高強度・高弾性の特殊グラスファイバー「MPG」に着目。カーボンには不可能なしなやかさと粘り&強度。ただのグラスやソリッドでは実現不可能な軽さと魚が勝手に浮いて来る復原力を有するMPGならではの機能と小気味良い切れ味を求めて船竿の開発に着手していった。



1984年秋。千葉県勝浦には週末毎にカモシ釣りでヒラマサを追うアルファタックルスタッフ小野垣克博と滝沢功、インストラクター鬼島の姿があった。この頃にはご当地釣法でヒラマサを釣る「カモシ釣り」自体はほぼ確立されていたが、使用されていたのはほとんどカーボンかグラスのボートロッド。通い詰め、数多くのヒラマサを仕留める内に小野垣達の心に既存ロッドへの物足りなさ」が芽生え始める。
当時多く使用されていたボートロッドは単にヒラマサのパワーに対する強度面をクリアするためのセレクトに過ぎなかったのだ。
都心からほど近い房総の港から十数分の近場で10㎏オーバーの大型ヒラマサが釣れるという地の利。この釣りに特化した独創的な一本を造り、関東の釣り人達に広く「カモシ釣り」を発信したい。試行錯誤の末、85年夏に試作ロッドが完成。2.7mオフセンター2ピースロッドはヒラマサのパワーとスピードに押し切られる事なく、自在にコントロールする7:3アクション。求めた理想が形となりいよいよ最終テストがスタート。
そして訪れる運命の日。鬼島の快挙によりアルファタックルは船竿元年と呼ぶにふさわしい年の瀬を迎えた。翌86年、自信を持って「アルファパワーKAMOSHI」を発売。MPGロッドの歴史が幕を開ける。スマッシュヒットとなった「KAMOSHI」の名は以降ネプチューンへと引き継がれ、アルファタックルMPG船竿の代名詞となった。


~MPGワンピースというスタイル~

パールホワイトのボディ~新しいワンピーススタイル「MPGヘッドクォーター」が誕生した。当時アルミハンドル仕様の船用ワンピースロッドはトローリングロッドという形で存在していた。これらのロッドは強度面には全く問題無かったが、ただ硬いだけで「アタリを取る」「しなやかに喰い込む」という船竿の必須条件は全く持ちあわせていなかった。「MPG KAMOSHI」で成果を収めた我達が次に目指したのはトローリングロッドのアルミハンドルに船釣り専用のロッド部を組み合わせる、全く新しい視点のワンピース船竿の開発だった。
ワンピース仕立ての為トップからバットまでスムースに曲がっていく7:3アクションと最後まで耐えるバットパワーを追求。全長2.4mの「ヘッドクォーター」8lbs、12lbs、20lbs、30lbsの4アイテムは後に広がりを見せるシリーズの根幹であり、より大きな視点で捉えるなら、その後各社からリリースされるアルミハンドルのワンピース船竿に大きな影響を与えた意味からも、アルミハンドルワンピース船竿の元祖と呼ぶにふさわしいモデルである。

「ヘッドクォーター」と同時に発表された、泳がせ専用竿「ザ・ベヨネーズ」「ザ・寿美須」に続き、翌年には2.1mの「HQスタンディングファイト」、ワン&ハーフ仕様の「HQタイタンストライク」「HQヒラリーストライク」「HQヒッティングファイト」「HQザ・ビッグフィッシュ」を発表。ここにワンピースロッド~ヘッドクォーターのラインアップが完成する。そして94年にシリーズのトップグレードモデル「HQザ・カイザー」がスタート。スーパーヘビー~ライト級までをカバーするニューシリーズを展開する。また、発売以来モデルチャンジなく今日に至るロングセラー「パシフィックスプリント」も同年の新製品。当時のマグロフリークスタッフはカリフォルニアのツナフィッシングに使用するティップアクションのスタンディングファイトロッドをヒントに久米島のキハダを釣りまくった。そして2006年5月6日、久米島の釣船太一丸渡慶次昇船長より〈HQスタンディングファイト・ブルーフィンツナスペシャルで巨大クロマグロキャッチ〉のビッグニュースが届いた。渡慶次船長自身が竿とリールで獲ったのは全長230㎝、胴回り176㎝。体重何と260㎏!! 送られてきたロッドはホディ各所にPEラインの擦り傷が刻まれ激闘を生々しく物語っていた。当時すでにMPGロッドの頂点から退いていた「ヘッドクォーター クロマグロ」バージョンだったが、MPGワンピースと言うスタイルの底力を改めて世に知らしめた快挙となった。


~ガラス全盛時でのMPG真鯛竿~

80年代後半、関東~東海地区にコマセダイブームが到来。各社よりグラス製コマセダイ竿が登場する。ただのグラスではなくMPGでのコマセダイ竿を模索する我達は90年春の乗っ込みシーズンに合わせ「スーパー真鯛」シリーズを発売した。ここで独自のパワー表記となる「アクション0・1・2」を初採用。MPGロッドならビシが何号だからではなく、釣人各自の硬軟の好みやヤリトリのスタイルに合わせどのアクションを選ぶのも自由である、の視点から設定した【異端と独創】の表記だった。エサ取りのアタリが見える~ウネリに跳ねずマダイが喰う~ハリ掛りが良くバラシ難い~大きく曲がるが、竿を立てれば魚が浮く~MPG真鯛ロッドが生まれた。
前年にリリースした「スーパーヒラメ」などのスーパーシリーズは95年まで生産され、96年に後継機種「タイドウェイ」へとバトンを渡すが、いまだ私達は真のMPGスペシャルローリングアクションを追い続けていた。
そして97年、世は中通し竿の全盛期。あらゆる船竿からガイドが消えた異常事態の中、ガイドへのこだわりを持ち続ける我達は新たなガイド付き真鯛竿の開発を模索していた。
ガイド付きも含めて3ピースが常識だったこの時、より美しく、パラボリックカーブを描くを実現すべく、あえて運搬時の利便性を無視したMPG2ピースの素材開発を進めていた我々はある情報をキャッチする。98年春、富士工業が『絡んでも絡まない』をキャッチフレーズに、全く新しいスタイルの[DBガイド]を発売する。
この年、富士工業の全面協力を得てDBガイドを搭載した試作品でのフィールドテストがスタート。新型ガイドはキャッチコピーに偽りの無い糸絡み解消機能を、MPG2ピースロッドは期待を裏切る事のないパーフェクトなカーブと、真のMPGロッドたるフィーリングを見せ、我々は新製品への自信を確たる物とする。
絡まないDBガイド、アクション最優先の2ピース、全身MPGの機能とフィーリング。98年春にセンセーショナルなデビューを飾った「ブルークォーターV2」は3~3.6mの3アクション7アイテム。今までにないスタイルに関東はもとより全国で人気が爆発。かつてない大ヒットとなった。
翌99年にはニューアイテムを追加すると共に、カーボンをコンポジットしたスリム&シャープな「ブルークォーターX2」を追加発売。津々浦々のマダイ釣師が数え切れない程のマダイを釣りまくった「ブルークォーターV2」は02年のLCガイド登場を機にアイテムを厳選した「ブルークォータータイタス」「ブルークォーターファーストライト」へ。LDBガイドがリリースされた04年には「ブルークォーターR2P」。翌05年には勝負所のマヅメや夜釣りでの視認性を重視した白いボディの「ブルークォーターホワイトスピーダー」、Kガイドリリースの2010年には7代目の「ブルークォーター SEVEN」へとリニューアルしてゆくが、98年にV2で証明した血統とMPGテイストは生き続けている。そしてシリーズ15周年を記念して発売された8代目「ブルークォーターTゾーン」にもMPGボディ~ブルーの純血統が脈々と流れ続けている。


~「ショートロッド」という考え方~

93年、新しいヒラメ釣りを提案したワン&ハーフの“手持ちヒラメ専用”「ネプチューンヒラメ230」は翌94年に「LBスナイパー230」としてリニューアル、2mワンピースの「ARスナイパー200」と共にスナイパーシリーズというショートロッドを展開する。2種の“狙撃手”は目的のヒラメのみならずイサキやハナダイのコマセ&ウィリーシャクリ用として人気が出てきていた。95年発売の2mワンピース「ヘッドクォーターイカ200」は従来イカ竿とは一線を画す強度とMPGならではのフィーリングがイカにとどまらず、鬼カサゴを筆頭とした根魚やビシアジにも威力を発揮。中深場の万能モデルとして高い評価を受ける。別々の路線を歩む浅場と中深場、異なるフィールドをカバーするMPGショートロッド。ふたつの道がひとつになるのは、99年。先述のDBガイド発表をうけて様々なショートロッドは「ARセイバー」1.7~2.3mのショート&ライトなワンピースモデルのラインアップ、そのMPGフィーリングは「MPGロッド=大物オンリー」のイメージを変え、MPGショート&ライトワンピースの楽しさ&気持ち良さは多くのファンを魅了した。このショートフィーリングは2011年のデッキスティックの流れへと続いていく。


~ULTRAブランクの誕生~

更なるビッグターゲットを求める、もっと強く…というテーマに向かい新しいプロジェクトが立ち上がる。90年代後半、青物&大物シーンへのグラスソリッドロッド(ムク竿)進出が続出した。ロッドのアクションを左右するテーパーを作り易く、安価に手に入り、どこまでも曲がっていくそれは少量生産に適し、多くのガレージメーカーができた。
私達は簡単に真似できないMPGチューブラーへのコダワリを持ち続け、立案から2年あまりさまざまな失敗を重ねやっとたどり着いた。“従来MPGロッド3本分以上のクロスを使って細身厚巻~単なる厚巻でなく高圧力を加えて焼きレジンを極限まで飛ばす”という高繊維量&高密度の全く新しいULTRAブランクが誕生。MPG ULDP(超多層高密度圧縮製法)ULTRAブランクと名付けた。
通常MPGロッドを大幅に上回る強度、圧倒的なしなやかさと粘り、ムクにはない軽量感と操作性、なだらかな復原力。私達のMPGへの想いと当初不可能としながら失敗を恐れずに開発に挑み、描いた理想を形にした技術者の尽力がついに現実となったのだ。
2000年。空中130㎏ピックアップをクリアした泳がせ専用「ビゲスト」と6:4万能モデル「ストレガ」の完全ワンピース6アイテムを発売。フィッシングショーではストレガ230の5㎏錘振り上げデモンストレーションに来場者が一様に目を丸くし、次々とULTRAを手に取る。この日からULTRAと言う素材がMPGロッド新世紀の扉をこじ開けてゆく。
03年には究極ローリングアクションのワンハーフ3mモデル、04年スタンディング泳がせ用「パワーバトル」、05年にストレガ最強234を発売。全国各地に“MPG超フィーリング”を知らしめた後、07年にロングフェルールタイプの“ストロングブルー”「MPG ULTRA V10」にモデルチェンジし、MPGの可能性を広げていった。


~究極のDEEP~

1984年からスタートした「ディープクルーザー」は深海マニアに好評を博し、現在まで続く超ロングセラーシリーズだが、通常のEグラスを使用してきた。私達がこのジャンルにMPGを使うのはULTRA素材が完成した99年。ディープマスターことテル岡本の熱望に応え、ULDPシステムの深海竿を試作した。
このプロトロッドで実釣を重ねた岡本は、底を叩く、ウネリで跳ねない、数珠繋ぎや深海巨魚の大負荷にも曲がりっぱなしにならず、リールだけに負担を掛けない、そして何より素晴らしいのは明確に伝わるアタリと、釣っている時のキモチヨサだ、と絶賛。2000年冬に発売した限定モデル「ディープインパクトLTD」の従来深海竿と一線を画す卓越機能と潜在能力は岡本の全国行脚と媒体記事により認知度を高めて行く。
翌年よりシリーズが本格始動し究極深海竿は「ディープインパクト」「プロスペック」「RX&BX」「MTK」「暁」「WHX」と代を重ねて現在に至る。07年に究極の、その先が欲しいという岡本の貪欲な要望から開発が始まったのが「ディープオデッセイ」。あえてストレートで太いトップを設定し、アタリをより増幅するキンメ用「モデルG」と千尋の底からのアタリを的確に伝える鋭敏トップのベニアコウ用「モデルR」の2アイテムは08年の発売と同時に大人気となる。
翌09年には「より多くの深海ファンに究極深海竿を体感して欲しい」の視点からインパクトと同素材を使用、飾りを除いた実戦型「ディープマスター」シリーズもスタート。11年冬には岡本のライター活動25周年を記念したアニバーサリーモデル「ディープオデッセイGBX」「RBX」を限定発売。本年は東北オキメバル&アカムツ用「ディープオデッセイモデル T」が登場。ディープマスターと共に歩んできたMPG深海竿は更にディープなラインアップを形成してゆく。


~ショートロッドの最終形、3Dブランクとは~

3Dブランク、すなわち複合クロスを組み合わせたショート&ワンピース、そして先調子というコンセプトをまとめた。新開発の軽量アルミハンドルでアクションと長さのバリエーションをラインアップする。思いっきり短い1.5mで色んな釣りをライトにイージーにダイレクトに楽しみたい、そんな思いで11年「デッキスティック」を造った。
SFGと呼ぶ単方向グラス繊維を先端にセット、MPGで穂持部からバット部を強化、最終エンド部は中弾性カーボンで補強するという3D、つまり3種の相性の良いマテリアルが合体し細身で切れの良いスゴイ3Dブランク(もちろんチューブラー)ができた。このSFGという材料は06年にすでに「クロステーパー」でMPGとコンポジット使用していたが、MPGとの相性の良さからも先調子の要となるクロスであった。
セイバーシリーズで培ったMPGショートコンセプトとクロステーパーの複合素材で得たテクノロジーが融合し新しいLEDスタイル(Light~Easy~Direct)を推奨したいというスタッフの思い。そしてこれまでにないアクションとフォルムが人気を集める発売2ヶ月後の5月29日、沖縄に釣行した東京の門馬光直氏が“エサのムロアジを釣るつもりで持参した”デッキスティックで想定外のビッグワン、23㎏のカンパチを仕留めた。
ハリス30号と適合値を超えた自己責任の釣りだったが、同行した全員がこの竿で20㎏クラスのカンパチを多数キャッチ、果ては100㎏を優に超すサメも船縁まで引き寄せるなど、驚異のポテンシャルを見せ付けた。そして私達が何より嬉しかったのは“皆が面白かったと喜んでいた”という門馬氏のコメントだった。 こうして実証された3Dの底力は2012年末に発売された「スフィンクススタンダップ」へと受け継がれてゆく。


~新時代のMPGロッド~

これからも私達はいろんな複合素材にチャレンジし、アタラシイMPGロッドを造っていきたい。より細くより軽量なボディを求めながら体幹はあくまでもMPG。卓越の機能と潜在能力、そして何よりもMPGフィーリングは決して損ねない。その上で新時代と呼ぶにふさわしいカッコイイ機能性とオモシロさ、楽しさを実感できるMPGロッドを提案したい。
MPG創世記から一貫して開発スタッフ、フィールドテスターが現場で感じたこんな竿が欲しいというリアリティ溢れる渇望をフィードバック。釣人のキモチを最優先するがゆえに時に技術面の常識を無視して突っ走り、試行錯誤を繰り返して様々なスタイルのMPGロッドを世に送り出してきた私達。これからも開発スタッフはそんな「プロの素人集団」の認識と気持ちを忘れる事なく常識にとらわれず自由な発想で【異端と独創】のMPGロッド造りに挑み続けていきたい。
やがて時が過ぎ人は移り変わる。けれど船釣りを楽しみたい釣人がいる限りMPGロッドの歴史と私達の歩む道はどこまでも続いてゆく。


MPGの歴史は続く…