Story 8 アコウダイ


第8話 アコウダイ

ポン、ポン、ポンッ!次々と海面に弾ける緋色の魚体。水圧変化に対応できず膨れ上がった太鼓腹を赤提灯に見立て、誰が呼んだか「提灯行列」。今では中々お目にかかれぬこの釣りのクライマックスシーンだが、意外な近場にも出会いのチャンスがあるのが「海より深い」深海釣りの奥深さ。
キンメダイと並ぶ深海釣りの代名詞的存在でありながら、この魚に対する釣人の認識は意外とアバウト。これまで実しやかに語られて来た「銚子より北で釣れるのがメヌケ、南がアコウダイ」の真相とは。
アコウダイの釣場

北海道~東北ではバラメヌケ、関西はホウズキがメインの実情だが、これらも併せた釣場紹介。但しコウジンメヌケことオオサガ(&サンコウメヌケ)はベニアコウの項で扱うため、ここでは除いた。

北海道 釧路沖・襟裳~恵山沖
青森県 下北半島沖(尻屋崎沖)・三沢沖・八戸沖
岩手県 小本沖・宮古沖・大槌沖
福島県 四倉~小名浜沖
茨城県 平潟沖・那珂湊沖・鹿島沖
東京都 大島沖・新島沖・神津島沖
千葉県 銚子沖・片貝沖・鴨川沖・千倉沖・洲ノ崎沖・富浦沖
神奈川県 剣崎沖・城ヶ島沖・葉山~江ノ島沖・平塚沖・大磯沖・真鶴沖・湯河原沖
静岡県 熱海~初島沖・富戸~八幡野沖・稲取沖・石廊崎沖・波勝崎沖・駿河湾沼津~清水沖
遠州灘大井川~浜名湖沖
愛知県 大山沖
三重県 大王崎沖
和歌山県 串本~白浜沖

タックルと仕掛

中深場の延長上となる「小メヌケ」と相模湾など中型電動リールでの「LTアコウ」、大型電動リール使用の本格的深海釣り「ヘビータックル」の3パターンに分けて紹介。


①小メヌケ
福島県沖などでオキメバル釣りに準ずるタックルを使用し、この釣りとしては浅所の300m前後で美味な中小型(最大2kg程度)を狙う釣り。錘は200~250号。

ロッド
東北オキメバル用の2.3~2.7mモデル。この釣りでは「バラシを抑えるしなやかさ」よりも「底を叩きより早く最初の一尾を喰わせる復原力」がキーポイント。ベタベタ胴調子はエサの踊りが悪く喰い付きが遅くなる。ロッド硬軟は各自の好みにもよるが、使用錘に合わせたアクションセレクトがセオリー。
アルファタックル適合モデル
ディープインパクト カイザーT
ディープオデッセイ モデルT
ディープオデッセイ モデルTT

リール…こちらもオキメバルの流用でOK。水深250~300mの倍以上のライン長が理想。ラインはPE(5~)6号。ミヤエポックAC-3JPC、S社6000番、D社が800番該当。

仕掛… 市販のマゾイ・ヤナギノマイ用など鈎数6~8本、ハリス6~8号の中深場用サビキ仕掛、若しくは同号数ハリスのライト深場仕掛仕掛。自作の場合はムツ鈎15~16号(若しくは同サイズの深海バケ)、ハリス6~8号30~50cm、幹糸10~14号70cm~1mの胴突6~8本鈎。捨て糸は8号1m。
仕掛上端にはフジワラ「深海用リングSS」などの小型ヨリトリ器具を配す。錘は根掛りが頻発するポイントでは特にロストしても環境負担の少ないフジワラの鉄製「ワンダーⅠ」を推す。※ただし「船宿指定の錘を使用する」という事も付け加えておきたい。
釣座スペースが十分に取れる場合はロッド左右に2組の仕掛を並べ、交互に使用すれば手返しアップ。取り込み後の処理やエサ付けも余裕を持って行える。

深海バケ…市販サビキは赤・ピンク・蛍光紫のバケを使用したものが大半だが、自作の場合はこれらに加えて「アコウダイの鉄板カラー」青紫、橙、濃緑の「フジッシャー毛鈎」をセレクトする。鈎サイズはフカセネムリ15号、ムツ15~16号。

集魚ギミック
水中灯… ルミカ「輝泡」「ビット」等の小型水中灯が有効。緑色発光と赤色発光を持参、状況を見て使い分けるのがベター。ヨリトリ器具の下に親子サルカンを接続してブランコ式に配せばスピーディーな交換、取り外しが可能。

マシュマロボールL…胴突仕掛のハリスに一個を配す。深海バケ自作仕掛ではバケとボールのカラーをリンクさせる事が大前提。

匂い玉…ニッコー化成「激臭匂い玉7Φ」を各鈎に一粒ずつ通し刺す。

タコベイト…空鈎仕掛にはヤマシタ「パニックベイトメバル1.5」やニッコー化成「スーパータコベイト1.5inch」を配して深海バケ風にアレンジするのもアリ。

エサ…幅1cm、長さ8~10cm程度のサバ、イカの短冊が基本。着色や味付けはお好みで。

疑似餌…ニッコー化成「ロールイカタン150cm」を上記サイズにカットして使用。他に「ダッピーホタルイカ3inch」にも実績あり。
ワームのメリットは
①投入毎の交換不要で手返し抜群
②常温保存で液体も出ず、運搬楽々&クーラー不要。手指や船縁も汚れない
③色や形状をセレクトし釣果に繋げる面白さ

「ロールイカタン150cm」…エビパウダー配合の幅1cm、全長150cmの短冊を好みの長さにカットして使用する計8色の匂い付きワーム。

「ダッピーホタルイカ3inch」…激臭イカゴロエキス超配合の「イカワタパーツ」をイカゴロエキスコーティング素材で包んだ計10色のホタルイカ型ワーム。

その他のギミック
サメ被害軽減装置 デニズ「海園」

中~上層でのサメによる奪い食いが懸念される場合は海中で電流を発生、鼻先の電気器官「ロレンチニ瓶」を捕食に使うサメ・エイ類のみに作用して仕掛から遠ざけるサメ被害軽減装置の使用がお勧め。小メヌケの喰いには影響はないため、仕掛上部に最初から接続する「Ver.2イカ直結用」をセレクト。

磁石板
全ての釣場で手前マツリを防止するのに極めて有効なギミック。船に設置されていない場合は持参がお勧め。鈎数に応じて長さをセレクトする。


②LTアコウ
茨城県平潟~鹿島沖、東京湾口、相模湾、西伊豆沖など、鈎数5~6本程度で中型電動リールを使用する比較的手軽な釣り。錘は300~350号。
「ライト」といってもターゲットはヘビータックルと同等。深海巨魚アブラボウズや厄介者のバラムツ、シマガツオのアプローチにスムーズに対応すべく充分なパワーと強度が要求される。この部分を念頭に置いてタックルをセレクトする。

ロッド
グラスチューブラー素材の深海専用竿。使用錘にマッチした錘負荷表示の2m程度。口切れを配慮して負け気味の竿を選ぶキンメダイに対してアコウダイは喰わせるための「底叩き」の演出を優先、使用錘に適合=「キンメよりワンランク硬め」を選択するのが正解。グラス素材でも復原力に劣るソリッド竿は喰わせるための底叩きやアタリの伝達に難あり。グラスチューブラー素材深海専用竿の300号クラス、2m程度をセレクトする。
アルファタックル適合モデル
ディープインパクト カイザーG
ディープインパクトTERUスタイル RTⅠ
ディープインパクトTERUスタイルSⅠ

リール…PE6号800m~1.000mキャパシティの中型電動リール。単に糸巻量をクリアすれば良いと言う物ではなく、実釣時に於けるパワー&スピード(カタログデータではない)が要求される。 ミヤエポック R800・A-5SC S社9000番 D社1000番

仕掛… 鈎数5~8本程度。鈎ムツ19~20号orホタ18号、ハリス14号70cm~1m、幹糸22~24号1.4~1.8m、捨て糸12号1m。回収・再使用が前提故、必要以上に幹やハリスを細くせず、捌き易さと撚りに対する強度を踏まえる。 仕掛上端のヨリトリ器具はミヤエポック「キャラマンリングⅡ型」などやや大型の物を配す。錘は根掛りでロストしても環境負担の少ない鉄製のフジワラ「ワンダーⅠ」を推奨。※ただし「船宿指定の錘を使用する」という事も付け加えておきたい。

集魚ギミック
水中灯… アコウダイには極めて有効。夜光発光の「フラッシュカプセルLED-S」を基本に、宙層にシマガツオが回遊する春先やバラムツのアプローチが激しいケースでは赤色発光&発光パターン選択可能のルミカ「クアトロレッド」を選択するが、エキストラが極端に多い場合には「外す」選択肢も。使用を禁ずる地域、船もあるので、予め確認の事。

マシュマロボールL…チモト周辺のハリスに1個を配し浮力と仕掛降下時に抵抗をプラス、使用時に餌の動きに変化を与えるヤマシタ「マシュマロボールL」は今や本種のみならず、深海釣りの必需品。輝度ありを基本にサメやソコダラ、アナゴ類の高活性時は輝度なしの「アカムツスペシャル」と選択。深海バケやタコベイト使用の場合はカラーのリンクが大前提。

匂い玉…ニッコー化成「激臭匂い玉7Φ」を各鈎に一粒ずつ通し刺す。

タコベイト…空鈎仕掛の1~2本おきに配す。単体使用も可能だが、基本は身餌と併用する。ヤマシタ「パニックベイトアコウM」、ニッコー化成「スーパータコベイト3,5inch」

深海バケ…藤井商会「フジッシャー毛鈎」のムツ19号orホタ18号がお勧め。関東周辺では紫・橙・濃緑の3色が鉄板カラーで、白(蛍光紫)も実績あり。銚子以北の親潮海域では紅色、ピンク、赤紫など「赤系」も必須。

エサ…サバ、イカ、カツオハラモなどの短冊が一般的。持参の場合は幅1.5cm・長さ15(~20)cm程度にカットし中心線上のなるべく端をチョン掛け。他にヒイカ一杯掛け(胴先端を縦方向にチョン掛け)、スルメイカ肝付ゲソを眉間から半割し5本のセンターとなる鰭脚に鈎掛けする「肝付ゲソ半割」など。

疑似餌…ニッコー化成「ロールイカタン150cm」を上記サイズにカットして使用。

その他のギミック
サメ被害軽減装置 デニズ「海園」

中~上層でのサメによる奪い食いが懸念される場合は海中で電流を発生、鼻先の電気器官「ロレンチニ瓶」を捕食に使うサメ・エイ類のみに作用して仕掛から遠ざけるサメ被害軽減装置の使用がお勧め。小メヌケの喰いには影響はないため、仕掛上部に最初から接続する「Ver.2イカ直結用」をセレクト。

磁石板
全ての釣場で手前マツリを防止するのに極めて有効なギミック。船に設置されていない場合は持参がお勧め。鈎数に応じて長さをセレクトする。


③ヘビータックルアコウ
北海道~関西まで広範囲で行われる鈎数8~15本、400~500号若しくは1.5~2kgの錘と大型電動リールを使用する本格的な深海釣り。

ロッド
LTアコウダイと同様の理由から使用錘にマッチした錘負荷表示のグラスチューブー素材深海専用竿。
アルファタックル適合モデル
ディープインパクト カイザーG
ディープオデッセイ モデルR
ディープインパクトTERUスタイルRT-Ⅱ
ディープインパクトTERUスタイルSⅡ

リール…高強度PE10~12号を1.000m以上巻いた大型電動リール。ミヤエポック「コマンドZ」9~15番、D社3000番

仕掛… 「ヘビータックルキンメ仕掛」よりもパーツスペックがやや大振り。鈎ムツ20~22号orホタ20号、ハリス16~20号50cm~1m、幹糸30号1~1.8m、捨て糸14~16号1m(伊豆大島乳ヶ崎沖などこれより長く取る釣場もあり要確認)の鈎数8~15本(釣場により鈎数規制あり。要確認)。
投入回数+αを掛枠に巻いて持参、出船前に2~3組にエサ付けを済ませておくのはヘビータックルキンメと同様だが、取込み時は魚が海面に浮かび、キンメ程慌てて仕掛を回収する必要が無いため、磁石板を持参すれば2組を交互に使用する事で回収~再使用は容易となる。
上端にはミヤエポック「ヨリトリWベアリング」など大型のヨリトリ器具。ヘビータックルキンメには配すゴムヨリトリは「底叩き」を妨げるので使用せず、ナイロン40号1.5mの先糸に置き換える。錘は船宿指定重量(&素材)。環境への負担が少ない鉄製推奨はLT同様だ。

集魚ギミック
水中灯… LTに準ずる。セットはヨリトリ器具下端に親子サルカンを配してブランコ式がお勧め。万一水中灯が破損しても仕掛全体を失う事がない。

マシュマロボールL…LTに準ずるが、鈎の号数アップに伴う重量増を踏まえ、ダブルで配す。

匂い玉…鈎サイズを踏まえ、LTより一回り大きい「激臭匂い玉10Φ」を各鈎に一粒ずつ通し刺す。

タコベイト…LTに準ずる。

深海バケ…藤井商会「フジッシャー毛鈎」ムツ20~22号、ホタ20号がお勧め。カラーはLT同様。

エサ…LTに準ずる。

疑似餌…ニッコー化成「ロールイカタン150cm」を上記サイズにカットして使用。

その他のギミック
サメ被害軽減装置 デニズ「海園」

千葉県片貝沖などで遭遇する巻上時中~上層でのサメ禍(奪い喰い)対策には巻上開始の時点で「海園Ver.2」のカラビナを道糸にセット(引っ掛ける)して海中に投下する。LTキンメと同じく「海園Ver.2イカ直結用」をヨリトリ器具直下に配してもOKだが、前出片貝沖や伊豆大島乳ヶ先沖など根掛り前提!?の釣場では処理時の仕掛ロストやライン切れリスクを考慮した「巻上時セット」が得策だ。

磁石板
回収・再使用前提の場合は必需品。船に用意が無ければ鈎数に合わせた長さの物を持参する。


実釣テクニック
小メヌケ・LTアコウ… エサ付けを済ませた仕掛は順序よく船縁に並べ、投入の合図を待つ。(もちろん掛枠使用もOK)船長の合図に従って舳先、若しくは艫から順に投入して行く。合図に間に合わなければ一回休み、はヘビータックルと同様。
船縁に並べた仕掛を投入する際の注意点は
  1. 仕掛の絡みや自らの足による幹糸部の踏み付けがない事を確認。
  2. 錘を投げる際は船縁から身を引き、仕掛から離れる。(鈎が衣服や手に引っ掛かる可能性あり)
  3. 仕掛が全て海中に入ったらスプールをサミングしながらクラッチを切りフリーにする。(フリーで投入するとヨリトリ器具の重量で道糸が先に海中に入り手前マツリ、投入のショックでバックラッシュする可能性がある)の3点。
錘が着底したら一度完全に底を離れるまで巻き上げて(竿先が大きく曲がってから戻る)糸フケを除き、再度着底させる。ここからウネリによる上下動で錘が海底をトントン叩く状態を設定すべく、海況、釣座、ロッドアクションなどの条件を考慮して50~1m程度巻き上げる。その後もマメに底を取り直して底叩きを維持し、アタリを待つ。

アタリ後は錘を着底させ、テンションをキープしながら船の移動分道糸を送り続ける、若しくはアタリ毎に幹糸間隔分ずつ順次送り込む、が基本的操作だが、釣場や潮具合、船長の操船スタイルによっては「どんどん送り出す」「仕掛全体を一気に這わせる」「そのままキープ」など、様々。自分勝手な判断をせず、必ず船長に確認する事。

巻上も投入同様、船長の指示に従って順番、若しくは一斉に行う。例え早い段階でアタリがあっても、船長の承諾無しで巻き上げるのはNG。ドラグを充分調整した中速程度で、緩急付けず一定のペースで巻く。但し錘が切れている場合はややスピードアップし同乗者とのオマツリを防ぐ。

基本的に激しい抵抗はないが、水深の中間地点辺りでは魚が暴れて巻上が滞る。良型や多点掛けではこれ以外でも時折竿先を引き込む「抵抗」が見て取れる。 電動リールは一定の巻上速度を維持するため、魚が「目抜け」になり浮力が付いても、いきなり竿先のテンションが軽くなる事は無い。膨張した事で抵抗が大きくなるため、浮力と相殺され、竿先への負荷は維持される。但し、ウネリで船が下がった際には魚の浮力でテンションが下がり、竿先が戻る「浮きのムーブ」が見て取れる。糸フケ分の巻上が終わると本来の負荷に戻り、再び竿先が曲がる。この動きにより、最後まであたかも「引いている」様に感じるのだ。

多点掛けの際は終盤徐々にラインの角度は浅くなり、巻上が終わる前に遥か前方の海面に緋花が弾ける事も。取り込みはキンメダイと異なり魚が浮かんでしまうので(例え鈎から外れても)慌てる事はない。むしろこの釣りのクライマックスである「提灯行列」を堪能したい。
仕掛の回収は魚を外しながらでも、全てを一旦船内に取り込んでからでも、やり易い方法でOK。魚を外した鈎は船縁に順序良く並べ、エサ、仕掛各部を素早くチェックしたら「振り出しに戻る。」一から繰り返せば良い。


ヘビータックルアコウ… 仕掛の投入は基本的に掛枠を使用。船長の合図に従って舳先、又は艫から順に行う。掛枠を海面に対して45度位に構え、合図と共に真下に錘を落とす。リールはクラッチを繋いでおき、仕掛が全て海中に入ってからスプールをフリーにする。バックラッシュやヨリトリ器具&水中灯の重さで道糸が先に出て仕掛と絡む「手前マツリ」を防ぐ工夫だ。

投入にタイムロスが発生すると船がポイントから外れ、最悪全員が空振りとなる可能性もある。故に合図までに準備が整わない、トラブルで仕掛が降りない時は「一回休み」となる。
以降の流れはLTアコウと同様だ。

今日日「満艦飾」にはそうそうお目にはかかれないが、数本連なれば正に壮観。ヘビータックルアコウの「醍醐味」を満喫できよう。 回収もLT同様に魚を外しながらでも、全てを一旦船内に取り込んでからでも、やり易い方法で構わない。魚を外した鈎は磁石板などをセットした船縁に順序良く並べ、掛枠に巻き取れば再使用が可能だ。仕掛二組を交互に使用していけば、次回投入に遅れる事もない。
アコウダイに役立つ!?ディープマスターのワンポイント

鹿島北沖の仕掛は「細・軽・長」
港の南北に「メヌケ釣場」を有し、それぞれ異なるタックルを使用する茨城県鹿島港。ヘビータックルの南沖キーワードが「水深500mの荒根、提灯行列、アブラボウズ」なのに対してLTの北沖は「水深300mの砂泥底、単発~2、3連」。これらを踏まえ、筆者は南北で仕掛を使い分ける。
南沖では20kg以上のアブラボウズも踏まえたフジッシャームツ太地20~22号にハリス20号0.6~0.7m、幹糸30号1.2~1.5mの8本鈎に対し、北沖では鈎が細軸のフジッシャームツ19号、ハリス14号1m、幹糸20号1.8mの5~6本鈎とする。
北沖は南に比べ「魚密度」は下がる傾向だが、砂泥底で存分に送り込む事が出来る。細軸で軽い鈎、細目で長いハリス&幹糸の「細・軽・長」設定でベイトをナチュラルに漂わせ、より効果的なアピールを意識する。南沖でも喰い渋り時はロングハリス6本鈎が奏功のケースあり、仕掛捌きに慣れた方は是非ご参考に。

「糸送り」は臨機応変。
静岡県石廊崎沖アコウポイントでの追い食いテクニックは「アタリ毎に幹糸間隔ずつ」「竿先のテンションを維持しながら」ラインを送り込んでゆくのがセオリー。一気に全体を這わせ込む、際限なく送り続けるは鈎やヨリトリ器具などが根掛りし、最悪仕掛が回収できない可能性も。
しかし上潮が早い場合は「送り込んだ」と思っていても、ラインが潮に押されるだけで実質的な「送り込み」が成されていない可能性も。通常幹糸間隔+α程度の所、一度に2~3倍(以上)を送るイメージが必要なケースも。但し「根掛り」のリスクが消える訳ではないので念のため。闇雲に伸ばすのではなく、船長指示を踏まえつつ行うのが肝心だ。

追い喰い操作は臨機応変。
ある日の静岡県石廊崎沖。基本の追い喰いテクニックに従って仕掛を這わせた同乗者はガッチリ根掛り、幹糸切れに泣いた。同じ釣場でもポイントや潮向き、操船で仕掛操作が変る。カケアガリに正面からぶつける場合は沖メバル宜しく、幹糸間隔ずつ巻上げて追い喰いさせるケースも。独自の釣法を指示する船も有るので初めて乗船する船では特に「その船のスタイル」を予め確認する事をお忘れなき様。

「船上でのサバエサカット法」
時に宙層で仕掛を止めて貴重な一流しを台無しにしてしまうゴマサバだが、これを船上でカットすれば新鮮な身エサが「一回休み」を帳消しにしてくれる事もしばしば。3枚に下して身を削ぎ落とし好みのサイズにカットするのが通常だが、この方法だと

①まな板が必需品
②身を削ぐ一手間に余分な時間を要する という2点のデメリットが。

筆者が多用するのはこの2点を除き、素早く短冊を切り出す三浦の船長直伝の方法。
サバの表皮に切り出したい身餌のサイズ(幅と長さ。角度を調整する事で長短を調整)に浅く包丁を入れ(サバを手に持った状態でも、船縁に置いてもOK。刃で船縁を傷付ける事はない)、次に刃先で表皮をすき取るイメージで「皮に薄く身が付く程度」にすき取ればペラペラ短冊の完成。因みにサバは一旦クーラーに入れて死後硬直の状態にする事で作業がよりスムーズとなる。

海底のフィーリングが「硬く」なったらチャンス到来
錘を着底後一旦海底から離す際。砂泥底に岩礁が点在する釣場では多くの場合、竿先が大きく曲がってから芋掘り宜しく「ズボッ!」と言う感じで錘を引き抜く感触が伝わる。底を取り直してもフィーリングはモヤモヤして硬さが無ければ海底は砂泥。ここで絶対に喰わない訳ではないがアタリの殆どはソコダラやアナゴ類。更に底取りを繰り返す内に竿先に伝わる感触が「コツン、コツン」と硬くなったら岩礁のシグナル。アコウが居付く場所に仕掛が入り「チャンス到来」と認識したい。ここでマメに底を取り直せば、程なくアタリが訪れる…ハズ!?

タコベイトは当初「単独使用」
現在アコウダイ釣りでは当たり前となっている「タコベイト」の使用だが、東京湾口の釣りで初めて登場したのは1977年の春。当時洲ノ崎沖のアコウダイ乗合を出していた神奈川県松輪~三崎周辺の釣船がヤマシタの「ホタルベイト5.0号夜光」を「空鈎仕掛に身餌と交互に単独で鈎掛けする」スタイルを勧めていた。日によってはタコベイトばかり喰う日もあったがムラは否めず、翌シーズンからは「身餌とタコベイトの併用」にシフトし現在に至る。因みにヤマシタのアコウダイ用タコベイトは夜光オンリーからピンク、オレンジとのツートンカラー(ここまでホタルベイト)、高輝度タイプの「パニックベイト根魚」を経て現行「パニックベイトアコウ」2サイズ6色へと進化を遂げている。

かつてアコウダイはギスのエキストラだった!
「何だよ、ダボかぁ」釣人が落胆の声を漏らすオキギスこと標準和名「ギス」は東京湾口~東伊豆のアコウダイやアカムツ釣りではポピュラーなエキストラのひとつ。大型は50cm級でそれなりに肉量もあるが、小骨が多く一般的な調理には向かない半面、年末限定で店舗に登場する一本¥8,000~10,000の「超高級小田原蒲鉾」の原料でもある。
この魚とアコウダイについて神奈川県大磯港の船長が土地の古老に聞いた「昭和の昔話」が驚愕の内容。

かつて同地では「オキギス縄」と称する蒲鉾用ギスの専漁が存在した。「本命」ギスのポイントは砂泥底だが、道具が根の上に入ってしまうと「アコウダイの提灯行列」が浮上する。
正に嬉しい誤算と思いきや「縄の置場を失敗してアコウダイが喰っちまった。これじゃあ商売にならない。」と嘆いたとか。当時アコウダイの市場価格はそれ程低かったのだ。
現在アコウダイやムツは「高級魚」として扱われるが、日本人の食の嗜好が「脂=美味」となったのは肉食文化が普及した明治以降。それ以前は大トロを含む「脂系」は下魚扱いだった。更に言うなら、アコウダイが本当に「高級魚」のポジションを獲得したのは、時代が「平成」になってからの事。これらを踏まえれば、古老の話は充分に納得できる内容だ。今でも小田原の蒲鉾屋では量がまとまればそれなりの値段で引き取るとの話もあるが、それは数十kg、100kg単位での話。大体からしてアコウダイ釣りで売る程ギスが釣れたら「ポイントから外れている」「潮が流れていない」「仕掛が最初から這っている」など、根本的にNGの状況である。

16棘のアコウダイ
アコウダイを筆頭とするメヌケ類の背鰭は本来13棘条(ホウズキのみ12棘条)を有すが、時に数が異なる個体を目にする事がある。これまで目にしたのは明らかに外的要因(怪我など)と判断できる欠損で本数が少ない物が殆どだが、ある時友人から送られてきた画像のアコウダイは背鰭棘が16本もある。友人は「新種じゃないか」とテンション高めだったが恐らく奇形だろうと思い、京都大学の甲斐博士に画像を送った所。
「魚類の背鰭の棘は発生初期に左右の骨が癒合して1本の棘ができるが、その時に何らかの理由で左右にズレが生じた2箇所が計4本あるように見える奇形」との返答。アコウダイに限らずメバル類では稀に見られる現象なのだとか。件の友人にその旨を伝えるとチョッピリ残念そうだったが、この魚の異常に気付いた観察眼は中々の物。実釣テクニックではないが、筆者は「魚を見る目」も釣りの楽しみの一つと考えている。
アコウダイ料理

アコウダイの調理は刺身なら2~3日寝かせてから薄造りや皮目を焼いた炙り。醤油とポン酢のセレクトは好みで。鍋は水炊きを基本に味噌鍋やチゲ、シャブシャブもOK。煮付けは脂に弾かれない濃い目の味で煮上げる。レンジで作る「酒蒸し」は簡単、かつ美味なお勧め料理。
漬物(西京漬、粕漬、さごはち漬、塩麹漬)にすれば冷凍保存可能。脂が乗りつつ、引き締まった白身は唐揚も美味。皮付きで揚げると、皮の食感も楽しめる。

アコウダイ兜の酒蒸し
材料:アコウの兜(半割した頭と胸鰭の部分)・古根(根生姜)・長葱(葉の部分)・塩(天然塩が良い)・日本酒
調理
  1. アコウの兜を半分に割り、強めの塩を振り、深めの器に盛る。
  2. 同量の水で割った日本酒を適宜用意する。
  3. 古根のスライスを2~3枚、長葱の青い部分を縦割りし、兜の上に散らす。
  4. 日本酒を器の深さの半分程度まで注ぐ。
  5. ラッブを二重に被せ、電子レンジで7~10分(兜の大きさにより調整)加熱する。
  6. ラップを剥し、葱・生姜を除いて食卓に出す。そのままで充分味が有るが、好みでポン酢を用意。柚子胡椒が有れば更に引き立つ。
西京漬け
材料:切身/西京味噌/味醂/日本酒/塩
調理
  1. 切身に軽く塩を振り、3時間冷蔵する。
  2. 西京味噌500gに酒・味醂各50ccを加えて練り上げ、味噌床を作る。
  3. 切身の水気を拭き取り、味噌床に漬け込む。直接漬け込んでも構わないが、味噌・ガーゼ・身・ガーゼ・味噌の順に挟んで漬け込めば味だけが染込み、焼く時に味噌を落とす手間が省ける。
  4. 2〜3日漬けると食べ頃。味噌床から出して(直漬けは味噌を洗い落とし、水気を拭いて)1枚ずつラップに包み、冷蔵、または冷凍保存。
※ベニアコウ、クロムツ、キンメ、アブラボウズなど脂のある魚、メダイやマダラなどアッサリ系の何れも可能。画像はベニアコウの調理。

塩糀漬
上記西京漬けは時間と手間が…の向きにお勧めな簡単漬け物。単なる塩焼きとは一味異なる味覚が楽しめる。
材料:切身/チューブ入り「塩糀」
調理
  1. スーパーで売られているチューブ入り「塩糀」を切り身に塗し、1~2日冷蔵すれば完成。 「塩糀」は落す必要がない。長期保存は1枚ずつラップに包み冷凍庫へ。
煮付け
材料:丸魚、切り身、兜の半割など、鍋のサイズや供する状態を踏まえて選択/濃口醤油/日本酒(又は味醂)/砂糖/根生姜又は粗挽き黒胡椒
調理
  1. 丸魚は鱗、鰓、腸を除き、盛付時に上となる左側に浅く切れ込みを入れる。味の滲み込み易さだけでなく、皮が破れて見栄えが悪くなる事を防ぐ配慮。肝は一緒に煮るので捨てずに残す。
  2. 水3:醤油1:酒(又は味醂)1:砂糖1/4を合せて良く混ぜ、生姜の薄切りを加えて強火で煮立てる。生姜を粗挽き黒胡椒少々に置き換える(筆者宅ではこちら)方法も。味醂を使う場合は砂糖の量を減らすが、各調味料の割合はあくまで目安。サッパリ系の魚では薄く、脂の強い魚は濃い目(水を減らして酒や味醂に置き換える)が基本だが、最終的には各自の好みで調整する。煮汁は多目の方が焦げ付きなどの失敗が少ない。
  3. 汁が煮立ったら灰汁を掬い、魚と肝を入れて煮る。
  4. アルミホイルで落し蓋をする。煮汁が上側まで回り、かつ吹き零れない様に火力を調整。灰汁を除きながら10分程煮る。調理時間は魚のサイズや形状(丸・切身・兜)により調整する。
  5. 崩さないように皿に盛付けて供する。
清蒸鮮魚(チンジョンシェンユイ)
中華風蒸し物でハタを使ったものが有名だが、本種でも上等。
材料:蒸し器やレンジに入るサイズの骨付きアコウダイ(丸魚、ブツ切り、兜半割など)
長葱/香菜(パクチー)/根生姜/サラダ油(胡麻油やピーナツ油でも可)/塩/胡椒/レンジ調理の場合は日本酒
掛けダレ用:醤油/オイスターソース/砂糖
調理
  1. 長葱は白い部分を細切りし(今回は太い物1本)冷水に晒す。青い部分はブツ切りにして根ショウガのスライス2~3枚と共に魚を蒸す際に使う。香菜(パクチー)は好みの量を洗っておく。
  2. 鱗と鰓腸を除いた丸魚は盛り付け時に下となる面に隠し包丁を入れ熱の周りを良くする。(兜半割では不要)
  3. 塩、胡椒をしてやや深めの皿に盛った魚を長ネギ(青い部分)、生姜と共に蒸器で8~十数分(魚のサイズで加減)程蒸す。電子レンジを使う場合は日本酒を振り掛け、ラップを二重にして600Wで調理する。
    ※加熱時間は蒸し器同様に魚のサイズで異なる。画像の兜(5kg級)は8分間加熱。
  4. 掛けダレを作る。水100ccに対し醤油30cc、オイスターソース10cc、砂糖2.5gの割合で併せて沸騰させる。画像は水150cc分。
  5. 蒸し上がった魚は皿に溜まった汁を除いて(崩さない様に別皿に移しても可)タレを掛け、晒しネギをタップリ盛る。
  6. サラダ油(又は胡麻油・ピーナツ油)適量を煙が出る程熱し、ネギの上から魚に回し掛ける。
  7. 好みの量の香菜を添えて(香菜が苦手なら無くても可)供す。

アコウダイという魚

アコウダイ
スズキ目メバル科 Sebastes matsubarae
分布:北海道日本海沿岸、青森県~土佐湾の太平洋沿岸、新潟県、富山湾、島根県隠岐・浜田(稀)
日本固有種。体色は一様に橙色だが、成魚では墨と称される不定形、不定位置の黒斑(墨付き)を有する個体がある。目窩下縁に2棘(涙骨と第3眼下骨の下縁)を有し、背鰭13棘。尾鰭の後縁はややくぼむ。大型は80cm、2kg以上。腹膜は黒い。卵胎生で春先に常棲域よりもやや浅みに集結し仔魚を産出する。

関東の深海シーンでは現在も「銚子以南で釣れるのがアコウダイ、以北で釣れるのはメヌケ」なる表現が使われるケースがあるが、 国内に分布し標準和名に「メヌケ」の3文字を持つ赤い魚はバラメヌケ、ヒレグロメヌケ、アラメヌケ、サンコウメヌケ(俗称ベニアコウ)、アラスカメヌケの5種で標準和名が「メヌケ」と言う魚は存在しない。
※アコウダイを含むこれらの魚は釣り上げると体内のガスが膨張して眼球が突出しデメキンの如き外観となる(目抜け)事から、総称としてのメヌケ(類)と表現するケースはある。

筆者はこれまで銚子以北となる茨城県~福島県沖の複数メヌケ釣場でアコウダイとバラメヌケの混棲を確認(数はアコウダイが圧倒的に多い)しており「銚子から南がアコウダイ」は全くの俗説。学術的には誤った認識である。
但し、同属のウスメバル同様に同一魚種でも釣場により「別物」と認識せざるを得ない味覚差(脂肪の乗り)が生じるのは紛れもない事実。より脂の乗りが良い親潮海域の本種(と他のメヌケ類)を「メヌケ」と称して黒潮海域の個体と区別するなら、それはそれで釣り的には「アリ」かもしれない。

バラメヌケ
スズキ目メバル科 Sebastes baramenuke
国内の分布:北海道~青森県の日本海沿岸、北海道~千葉県銚子沖の太平洋沿岸、相模湾(稀)、新潟県、島根県
アコウダイ若魚と酷似するが、頭部背面に3条の暗色横帯、主鰓蓋骨に暗色斑を有す。眼窩下縁は無棘。背鰭は13棘。「最大40cm程度の小型種」とする文献が殆どだが、茨城県那珂湊~福島県塩屋崎沖で60cm・3kgを複数確認。アコウダイとの識別ポイントは頭部背面に3条の暗色横帯があり、目窩下縁は無棘である事。頭部暗色横帯が不明瞭な個体もあり、確実なのは眼窩の棘数。アコウダイは添付画像のマーク位置に2棘が有るのに対し、本種は無棘。指の腹で眼の下縁を吻に向けてなぞれば確認は容易。

ホウズキ
スズキ目メバル科Hozukius emblemarius
国内の分布:青森県~熊野灘の太平洋沿岸、兵庫県浜坂(稀)、山口県日本海沿岸、九州(~パラオ海嶺)
背鰭12棘、眼窩下縁に3棘、眼窩上後縁に数棘を有す。尾鰭の後縁は窪まない。
アコウダイよりも体色の紅が強く、釣り上げた直後、紅白の縞模様が出る個体も。
白目部分が赤い。アコウダイを筆頭とするメヌケ類がメバル属なのに対し、本種はホウズキ属に分類される。
アコウダイとは別属に分類されているにも拘らず、関東周辺のアコウダイ釣りで普通に混じる30cm程度の若魚は、殆どの場合区別されず「小アコウ」とされる。 やや深所から採捕される成魚はアコウダイに比べて主鰓蓋骨の棘が大きく、体表がややザラ付く印象。
関東周辺の釣りでは小型が主体のホウズキだが、西日本では各船宿の「アコウダイ」釣果画像を見る限りアコウダイよりも本種成魚が圧倒的に数が多く「ホウズキ釣りにアコウダイが混じる」状態。一部「アコウダイとは別の魚」を認識してメヌケと称する船宿もあるが、眼球が突出しない個体がアコウダイより数多い傾向で「目抜けになっていないメヌケ」で難解!?だ。

ヒレグロメヌケ
Sebastes borealis
国内の分布:北海道オホーツク海沿岸、北海道~岩手県の太平洋沿岸
国内に分布するメヌケ類の最大種。近年「アコウダイのポイントで10kg超のベニアコウが釣れた」の話題は筆者が画像を確認した限り、全てが本種。 背鰭13棘。背面に不明瞭な暗色斑を有する。背鰭・腹鰭・臀鰭・尾鰭の後縁が黒い事が和名の由来。 眼窩下縁は無棘。水深400~500mのアコウダイ、アブラボウズ釣りで混獲される。混同されるベニアコウ(オオサガ)と比べやや「面長」の印象。

「ヒレグロメヌケ」が国内では岩手県で初採捕、新種として報告されたのは1970年。筆者より11歳年下の日本で最も若いメヌケ(アコウダイ1880年、アラスカメヌケ1890年、オオサガ1907年、バラメヌケ1917年、アラメヌケ1934年に新種報告)で、和名のはマンマ「鰭が黒いから」。
文献上の分布は北海道~岩手県だが茨城~福島県沖のアブラボウズ狙いではエサ、ジギングを問わず度々船宿HPに登場。過去には相模湾や遠州灘からも「10kgオーバー」の報告がある。
添付画像は茨城県平潟沖の小型(2kg)個体だが「背鰭・腹鰭・臀鰭・尾鰭の後縁が黒い」事でベニアコウ(オオサガ)との違いは一目瞭然。因みに同所でアコウダイ、バラメヌケも採捕しており、本種と両種の混棲も確認済みだ。
本種が「アコウダイ釣場でベニアコウが釣れた」になる原因は
  1. 「ルーツ」の岩手県も含め全国的に知名度が低く、船長や釣人がその存在を知らない。
  2. 存在を知っていても文献上分布が「岩手県以北」のため「相模湾や遠州灘で10kg超のメヌケ類が釣れたらべニアコウ(オオサガ)以外にない」の認識がある。 から。ベニアコウことオオサガは北海道や東北でも水深700m、関東周辺では1,000mラインに棲息しておりアコウダイと棲息水深が被る事はない。「水深400~500mでベニアコウ」は基本的に考え難い事例なのだ。
因みに筆者が「水深400mのベニアコウ」をヒレグロメヌケと確信するまでの経緯は
  1. 30年以上前から相模湾の複数の船宿で「アコウダイ釣場でごく稀に8kg以上のベニアコウが釣れる」の情報を得るが、当時の記録確認は魚拓に頼らざるを得ず。メヌケ類なのは間違いはないが、魚種特定には至らず。
  2. 1998年の神奈川県葉山沖。「鎧摺(あぶずり)の船で13kgのベニアコウ」が「週刊つりニュース」モノクロの囲み記事に。アコウダイ乗合船(水深400m)での釣果との事。「ベニアコウがこんな浅場で釣れるとは。大地震でも来るんじゃないか」と、真顔で言う船長も。
  3. 同年、雑誌「北海道の釣り」が「函館恵山沖のバラメヌケ釣り(水深400m)で16kgヒレグロメヌケ上がる」を見開きで掲載。モノクロながら本種が初めて釣り媒体に正式名称で取り上げられた記事と思われる。
  4. 2003年、東北の釣師HPに「10kg超ベニアコウをキャッチ」なる画像を発見。添付コメントは「400mダチのバラメヌケ釣りで・・・」やや不明瞭な画像ながら明らかに鰭の先端が黒く、本種である事は一目瞭然。相模湾のアコウ場で釣れる「ベニアコウ」も、実は本種なのでは…の仮説が。
  5. 2005年、神奈川県福浦港のアコウ船がアコウ場で13kgニの報。釣果画像未公開で確認に至らず。程無く同県三崎港のアコウ船でも11kgの報あり、特徴が明瞭な船宿HPの画像を京都大学の甲斐博士に転送し「ヒレグロメヌケで間違いなし」のお墨付きを頂く。岩手県以北に分布とされる「ヒレグロメヌケ」の相模湾棲息を確認し「水深400mのベニアコウは本種」の仮説が俄然現実味を帯びる。
  6. 翌2006年4月下旬、神奈川県長井港のアコウダイ船が城ヶ島西沖水深450mで16kgのアコウダイを採捕。写真を入手しを本種と確認する。同年千葉県片貝沖のアコウダイ船でも10kg超の画像を確認。
  7. 07年、海外からビッグニュース。「ベーリング海のタラトロール漁で体長112cm、体重27kgのヒレグロメヌケ漁獲」「あまりの大型に冷凍標本を研究機関に寄贈。耳石調査で100歳以上と判定」「過去にこれより大型個体も漁獲されている」とネットで報じられる。環境や個体差もあり一概には言えないが、10kg超級がいずれも「数十年モノ」なのは間違い無く、大変貴重な1尾と言えよう。
アラメヌケ
Sebastes melanostictus (2008年に学名変更)
国内の分布:北海道~千葉県銚子沖の太平洋沿岸、相模湾(稀)
体背側に黒褐色斑と斑点、頭背面に3条の暗色横帯を有する。眼窩下縁に3~7棘。
「何だよ、汚いアコウだなぁ。」海面に浮かんだ魚を見て、船長が思わず漏らすこの一言。場所も人も違うのに筆者はこの魚と出逢う度に、全く同じ台詞を船上で耳にしてきた。姿形やサイズ・食味の何れも同海域のアコウダイと何ら遜色はないが突出したインパクトも無い。ゆえに見た目が良くない分、低評価されがちだ。
2006年「アラスカのアラメヌケには2種が有る」事が研究者により解明される。当時日本産に関しては研究が待たれる状況だったが、08年に日本魚類学会HPが本種学名はSebastes aleutianus からSebastes melanostictusに変更された旨を掲載。我々釣人には「些細な事」かもしれないが実はこの変更、本来なら「アラメヌケ」の名を根底から覆す大問題だった。

これまで「アラメヌケ」の学名とされてきたSebastes aleutianus(北太平洋西部~中部に分布)の英名は「Rough Eye Rockfish(ラフ・アイ・ロックフィッシュ)。これを直訳すると「凸凹した(粗い)眼の根魚」。これを意訳すると「粗い眼の眼抜け」→「アラメメヌケ」→「アラメヌケ」。偶然の一致にしては出来過ぎだと思い、京都大学の甲斐嘉晃博士にこの旨を質問してみたところ、
「昭和40年、北海道水産試験場の上野達治氏が北海道近海魚類を解説する中で、北太平洋産Sebastes aleutianus が日本に分布する可能性を考慮。英名を参考にして和名を提唱したとの記述※があり、これがアラメヌケの始まりと思われる。」との回答を頂く。
※参考文献:上野達治(1965)北海道近海の魚11.ソイ・メヌケ 類.北水試月報22(12)2-28.
更に「現在はS.aleutianusは日本に分布せず、日本近海のアラメヌケはかつてゴマアコウの和名が与えられていたS.melanostictusに同定すべきだ」とも。確かに「ラフ・アイ・ロックフィッシュ」とは別種となった時点で粗眼を名乗るのはおかしな話。しかし「和名の安定性を考慮すると、これまで通りにアラメヌケを使用すべきと考える。」と結論付け、標準和名「アラメヌケ」は変更される事なく現在に至る。
日本産魚類は毎年新種が報告され和名や属名、学名の変更も相次いでいる。興味のある方は「日本魚類学会」のHPを。

アラスカメヌケ
Sebastes alutus(画像無し)
国内の分布:北海道~宮城県の太平洋沿岸、北海道オホーツク海沿岸
宮城県以北の水深150~300mに分布。40cm程度の小型種。下顎は上顎より前方に突出し、先端に小突起を有す。ベーリング海産は北大西洋産の近似種タイセイヨウアカウオ、オキアカウオと共に「アカウオ」の名で流通。残念ながら筆者は未採捕。