Story 7 鬼カサゴ


第7話 鬼カサゴ

今や青森県~南紀・京丹後まで、広範囲で専門の釣りが行われる中深場のメジャーターゲット。釣場により錘号数・仕掛全長や太さ・鈎数に若干の差は有るものの、共通するのは片天仕掛で釣る事だ。
水深は150~200mがメインだが、地域により数十mの「浅場」や250~300mの「深み」を釣るケースも。
釣場の多くは起伏の少ない「柔らかい根」だが、ほぼ平坦な砂礫・砂泥、逆に荒根も有り海底に応じたテクニックが要求される。
水深・海底環境に応じて多彩なゲストフィッシュが姿を見せるのもこの釣りの魅力。本命と遜色ない、若しくはそれ以上の高級魚との対面も期待出来る。
鬼カサゴの釣場

日本海青森県以南、太平洋茨城県以南に広く分布する本種。近年開拓された東北地方を含め専門の遊漁船が出る有名釣場を紹介。

日本海側
青森県津軽海峡(龍飛崎沖など)
秋田県男鹿半島沖~山形県沖
富山県富山湾
京都府丹後半島沖

太平洋側
千葉県銚子沖~洲ノ崎沖(外房~南房ほぼ全域)
東京湾口沖ノ瀬~神奈川県城ヶ島沖
神奈川県江ノ島~真鶴沖
静岡県熱海~伊豆半島ほぼ全域
駿河湾石花海
遠州灘~三重県大王崎沖
和歌山県白浜~浦神沖

タックルと仕掛

ロッド
7:3~8:2調子の中専用竿、深海対応モデル、青物用ワンピースロッドなど。長さ2m前後が扱い易い。使用錘に見合った錘負荷表示の物を選ぶ。
海面まで抵抗するため、バラシを抑える柔らか目&胴調子を考えがちだが、この釣りでは喰わせる為の底叩きや誘い、渋り時に喰い込ませる「誘いアワセ」が重要なポイント。これを「負け気味」や胴調子竿で演出するには相応の手間と技術を要する。
加えて鬼カサゴの口周辺は比較的頑丈。ドラグ設定が適切なら口切れのリスクは少ない。ゆえに「喰わせ」の優位性から、錘なりのパワーとやや先気味のアクションをセレクトする。但し軽量高感度を追及したヤリイカ専用竿の流用は仕掛の太さ、大型魚のアプローチ(アラ・メダイ・小型イシナギ・避けて通れぬサメ類)を考慮するとお勧めし兼ねる。
アルファタックル適合モデル
HBオニカサゴ 200
デッキスティック フルアームド 73-202・203
デッキスティック フルアームド 82-182・202・183・203

リール…殆どのポイントが水深150~200m前後。高切れなどライントラブルを考慮して3000番、500番にPE4号をフルキャパシティが基本だが、深所を除けばワンサイズ小型の1000番、300番(4号300m)でも対応可能。この場合、予備リール又は予備ラインの持参がお勧め。

仕掛… 釣場・船宿により鈎数や全長・号数に差が有るが、広く使用されるのはムツ鈎16~18号、ハリス6~8号の2本鈎で全長1.8~2m。因みに本項はこの仕掛の使用を前提にテクニック解説をしている。
筆者のこだわりは小振りの鈎と小型サルカン、対照的に太目ハリス。軽い鈎&サルカンを太目のハリスと組み合わせる事で仕掛を潮に乗せ、身餌をよりナチュラルに泳がせる。
アカムツと異なり、鈎の大小による「外れ易さ」は認められない鬼カサゴ。喰いの良さを優先すれば、鈎は軽く、小さい程良い。現状漁業用大袋のみの販売となるが、鯛縄用のKINRYU「柄長鈎15号」がお勧めだ。通常天秤は線径2~2.3Φ、50cm前後。上部にナイロン先糸1mとフジワラ「5連ベアリングスイベル5×5」などの小型ヨリトリ器具。錘は根掛りが少ない場所では鉛製のフジワラ「スカリー」で良いが、天秤ロストの可能性が高い荒根ポイントでは海底に残っても環境負担の少ない鉄製「ワンダーⅠ」を推奨する。ただし「船宿指定の錘を使用する」という事も付け加えておきたい。

集魚ギミック…発光体は極めて有効。空鈎仕掛の場合はヤマシタ「パニックベイトオニカサゴS」(2.0号相当)を一尾掛け、若しくはチモトにヤマシタ「20倍ビーズ」やルミカ「ルミコグリーン」など。片天上端には親子サルカンをセットし、ここにルミカ「輝泡」などの小型水中灯をブランコ式にセットする。
ミズフグ(ヨリトフグ)やサメが極端に多い場合発行体は取り外すが、全てを除くと本命へのアピールも低くなる。先ずチモト、改善が見られなければ上部、の二段構えが得策。但し地域や船により水中灯は使用禁止の場合もあり、事前に確認の事。

マシュマロボール…チモト周辺のハリスに配し浮力と仕掛降下時に抵抗をプラス、使用時に餌の動きに変化を与えるヤマシタ「マシュマロボールL」は今や本種のみならず、深海釣りの必需品。輝度ありを基本に、サメや水フグ高活性時は輝度なしの「アカムツスペシャル」と使い分ける。深海バケやタコベイト使用の場合はカラーのリンクが大前提。

匂い玉…鈎にはニッコー化成「激臭匂い玉7Φ」一粒を刺し通す。イカゴロテイストの「イカゴロクリアー」「イカゴログロー」、オキアミテイストの「オキアミロッド」「オキアミオレンジ」「オキアミイエロー」の計5色。

深海バケ…藤井商会のフジッシャー毛鈎「フカセネムリ15号」と「改造延縄真鯛12号」をポイントにより使い分ける。基本は細軸軽量のフカセネムリ、大アラやイシナギの混じるポイントでは強度のある改造延縄真鯛をセレクト。カラーは紫・橙・濃緑の定番3色の他、黄緑や水色にも好反応を示す。白(蛍光紫)や黒、低水温時用に赤系(紅・ピンク・赤紫)も用意すれば万全。バケは単体で使用しタコベイトやチモト発行体は併用しない。

餌…複数の付餌を用意する船もあるが、基本はサバ短冊。表皮に薄く身が付いている程度で「身」とは名ばかり。「皮」と表現する方が正しい、ペラペラの物を使用する。
船用意の餌は比較的小振りの物が多くこれでも鬼カサゴは問題なく喰うが、自分の体長と変わらぬサイズのベイトでもお構いなしに喰い付くのがカサゴ類。アピール度と小型(ユメカサゴなども含め)を極力避ける意味合いも兼ね、幅1~1.5cm・長さ15~16cmと大振りのカットがディープマスター流。但しムシガレイやキダイ・アマダイ等、カサゴ類よりも口が小さい魚も視野に入れた「五目釣り」の場合は幅1cm・長さ10cm程度を使用、若しくは併用(一方の鈎に)するケースも有り。

ソウダガツオも効果的。サンマも集魚効果が高いが、千葉県勝浦沖など禁止地区もあるので使用の際は要確認。
スルメイカは鬼カサゴには今一つの感が否めないが、アラやカンコには効果が高い。これらが期待できる釣場では用意したい所。餌取りに強い事からアナゴやサーモン皮、珍しい所では鶏皮も使用される。
各短冊は中心線上なるべく端のチョン掛け、餌持ちに劣るサンマは端を縫い刺し又は折り返す。
他には1尾掛けでカタクチイワシ(下顎から上顎に刺し通す)、ヒイカ(胴先端付近を餌持ちを考慮して軟甲を貫く縦方向)、イイダコ(胴先端を縦方向)などが使用される。
匂い付きワームも実績あり。ニッコー化成「ロールイカタン150cm」全8色を短冊餌同等の長さにカットして使用する。

エサ…魚体サイズにもよるがサバ、ソウダガツオ、スルメイカの短冊は幅1cm、長さ10~13cm程度にカットし、中心線上のなるべく端をチョン掛け。同サイズのサンマ短冊(千葉県勝浦沖では使用禁止)は身を削ぎ、銀色の腹側先端(尾部は尾鰭付根)を縫い刺しする。カタクチイワシや小振りのマイワシは下顎から上顎にハリを刺し通す。ニッコー化成の匂い付イカタン型ワーム「ロールイカタン150cm」は同等サイズにカットし、単体での使用が基本だ。


その他のギミック
サメ被害軽減装置

釣場によってはツノザメ、ナヌカザメなどのアプローチも少なからずの鬼カサゴ釣り。サメ類が捕食に使う鼻先の電気器官「ロレンチニ瓶」に作用する「海園」使用で海底のサメアプローチ軽減(100%回避ではない)を確認済み。「Ver.2イカ直結用」をヨリトリ器具直下に接続して使用する。
筆者は千葉県勝浦沖、駿河湾石花海、静岡県波勝崎沖など各地で「サメは喰わず、本命魚には全く影響なし」を釣果で証明している。

※「海園」をより効果的に使用するための注意点
海水に浸かっている間だけ電流を発生(約100時間)する海園は複数回の使用が可能だが、効果的に使用するために下記の点に留意したい。
1.使用後は必ずぬるま湯での洗浄&乾燥を行う(乾燥材を入れ保管すると更に良い)
2.出力ワイヤーの先端に錆が出ると効果半減。乾燥後CRC等を塗布して錆を抑える
3.錆びが出た場合は先端部分を切り落とし、出力ワイヤーの皮膜を1cm程度剥ぐ(炙り溶かす)
「Ver.2イカ直結用」は保管時に付属スイベルとセンサー電極が接触しないよう注意(通電し電池を消耗する)


実釣テクニック
この解説は全長1.8mの仕掛を使用した際のガイドであり、仕掛長が大きく異なる場合(全長3mなど)は底ダチの高さが異なる事を最初にお断りしておく。
ベーシックポイントと言える岩礁の攻め口は「海底の起伏全てをチェックする」位の気持ちで底を取り直す事だ。錘が着底したら素早く糸フケを除きウネリによる船の上下で錘が海底をトントンと叩く状態を設定すべく海況・釣座・竿の硬軟・長さなどあらゆる条件を考慮し50cm~1m程度底を切る。以降この状態を維持すべくマメに底を取り直す。
時にロッドストローク分を誘い上げる、2~3m巻いて落とす等、イレギュラーな動きを織り交ぜるのも手だが、基本はしつこい程にクラッチON・OFFを繰り返す底の取り直し。
潮が早く、仕掛がすぐに吹き上げられる時は順次ラインを送って底を取り直すが、延々リリースし続ければ仕掛はポイントから外れ、とんでもない場所を流れる事になる。面倒でもある程度伸ばしたら巻上げて再投入しポイントを直撃する。
根掛り連発は釣りにならないが、それを恐れて棚を高く取ればチャンスは激減。同乗者が根掛りしたらポイントの真上と心得、より積極的に底を取り直してアプローチするのが正解だ。
持ち竿での誘いは一見効果的に映るが、身体がクッションの役目を果たして「底叩き」が甘くなるのに加え、船の上下を計算に入れないとイメージほど餌が動かない可能性も。一見手抜きに見えるが、ロッドセレクトと棚設定が正しければキーパーに固定した状態で底ダチを頻繁に取り直す方が確実に餌が踊り、結果アプローチも多い。置竿が持ち竿の釣果を上回るのは釣座や偶然だけの産物ではない。

起伏の少ない砂礫・砂泥底は岩礁と同様の攻め口ではアピールに劣る。「錘が2~3回底を叩いたら1.5~2m誘い上げ、再び落とし…」の攻め口を取る。
アタリは活性次第。喰い気満々の高活性時ならいきなりガクンガクンと明確に竿先を叩くが、低活性時では餌取りとの判別を迷う程微小なアプローチの「前アタリ」で始まるケースも少なくない。前者は基本向うアワセでガッチリゆえ、即座に巻き始めても構わないが、後者では「端を咥えて」で餌を完全に飲み込んでいない事が多くそのまま巻くと餌を放してしまい、鈎掛りには至らない。
置き竿で前アタリが出たら素早くロッドを手に取り、ストローク分を大きく「深呼吸のスピード」でゆっくりと聞き上げる。これが「逃げようとするベイト」の動きを演出してガッチリと喰わせ、同時に確実な鈎掛り(アワセ)に繋がる。
鈎掛り確認後、魚影の濃い釣場ではすぐには巻かずテンションを掛けたまま暫く待つ、ゆっくりと1~2m手巻きで上げるなどのアクションで追い喰いを促すのも「アリ」だが、良型と思しきアタリなら「一尾を確実にキープ」の方向で早めに巻くのが得策だ。
また長時間アタリが無い、小さなアタリをキャッチ後ある程度待っても第2信が訪れないの場合は手前マツリや餌なしが多い。この状態では喰わないので面倒がらずに一旦巻き上げ、チェックする習慣を。

巻上はドラグを調整した中~中高速で、基本的に手持ちで行う。これは釣趣も然る事ながら「喰わせ」ではマイナス要因だった「身体のクッション」がバラシ抑制に有効となるため。強引な高速巻上は論外だが、低速過ぎても魚が必要以上に泳ぎ回って鈎穴が広がり、外れに繋がる。ある程度の速度で巻く方が失敗は少ない。
鰾を持たない鬼カサゴは海面まで上げても元気一杯、鈎が外れれば即座に泳ぎ去る。取り込みはサイズに拘らず玉網のアシストを。
取り込んだ魚の背鰭棘条はその場で鋏やニッパーで切り落とし、海中に投棄してしまうのが安全。この際、親指を口内に差し込み、下顎を指の腹で抑える「バス持ち」にして作業するとやり易い。但し細かいながら結構鋭い歯があるので、下顎を押さえる親指を指サックでガードするのを忘れずに。

ポイントにもよるが、鬼カサゴは基本25cm、理想的には30cm以下はリリースしたい。(この理屈だとフサカサゴはほぼ全てリリースの対象となる)これは20cmに満たないノドクロ(ユメカサゴ)に関しても同様だ。
鬼カサゴに役立つ!?ディープマスターのワンポイント

「海底のフィーリングで棚を変えろ!」
ウネリで錘が底トントン、が鬼カサゴ釣りの基本だが、これはあくまでも岩礁底の場合。砂泥・砂礫底ポイントも混在する神奈川県江ノ島沖などでは、海底のフィーリングによって棚取りを変えて行く事が肝心。糸フケを除き、錘を海底から離す際にズボッ!と引き抜くような感覚や、底叩きが不明瞭に感じられる時は、砂泥・砂礫底と判断し、糸フケを除いてから更に仕掛長分、若しくは+αを巻上げる。但し、オニカサゴを捨てて?アラ専門に狙うなら、常に海底から2~3mの高さに餌を流す事を意識する。海底の状況に関らず、高めの棚設定が「正解」となる。

ディープマスターセレクトの鬼用深海バケは
口周りの皮膚が厚く柔軟で鈎穴が広がり難い鬼カサゴには小型軽量の深海バケをセレクトするのが「ディープマスター流」。
通常の鬼カサゴ釣場では藤井商会の「フカセネムリ15号」が基本となる。この鈎のメリットは喰いの良さだけでなく「鈎が根掛りした際に8号ハリスより先に軸が折れ、回収が容易」という点。肝心の実釣強度は3.5kgバラメヌケ(キチジ釣りの際)を筆頭に最大2.2kg鬼カサゴに2kg超のソイ類、ウッカリカサゴなど多数の実績があり、一般的な鬼カサゴ釣場では全く問題ないと考える。
しかし千葉県銚子沖や勝浦沖、静岡県南~西伊豆沖、駿河湾石花海など8~10kgの大アラや小型イシナギが混じる釣場ではさすがに心許ない。ゆえに「鬼の喰いを優先しつつ、大アラやイシナギが喰っても問題なし」のスタンスで「フォルム小振りで軸太目」の「フジッシャー毛鈎 改造延縄真鯛12号」をセレクトする。余談だが製品のベースとなっている「鯛縄鈎」は黎明期の銭洲コマセ五目(ムロアジ身餌使用)で愛用し実績を上げた筆者「温故知新」の鈎でもある。

超貴重!2kg級の鬼カサゴ
初夏の千葉県勝浦沖で船中4尾もキャッチされた2kg級(1.95~2.35kg)の鬼カサゴ。比較的場荒れの無い海域でも船中1尾上がれば御の字のサイズだけに、この日の釣りは正しく異次元の世界「赤鬼のワンダーランド」に足を踏み込んだ錯覚すら覚えた次第。
冒頭魚種解説の研究に基けば、この日の赤鬼達は筆者と「同級生」レベルとなる。何れにせよウン十年物の超貴重な一尾を釣り上げた際は、心して味わって欲しい。
因みに同日「小さい」とされた筆者の1.6kgも40余年の深海歴で初めて目にするマダラ顔負けにビッグな肝臓の持ち主。もちろん身肉もメチャメチャ美味だった事を付記しておく。

「赤鬼にはビッグベイト」
体の半分以上が頭と言っても過言ではない?鬼カサゴ。当然口も大きく、時に自分の体長近い餌にも喰らい付く。筆者の経験では45cmの鬼カサゴが30cm以上あるタコを丸ごと吐き出した場面も。
又、鬼カサゴポイントには、フサカサゴやユメカサゴ、アヤメカサゴ、ホウズキ、ウッカリカサゴの若齢個体など、小型のカサゴ類も多く混棲する。フサカサゴとユメカサゴはリリースすれば再び海底へ戻って 行くが、他は帰還不能。もちろん唐揚げや味噌汁の出汁で食べる事は出来るが、釣らないで済むならそれにこした事はない。鬼同様に大きな餌にもアタックするので、100%避ける事は不可能だが、餌を大きくする事で確率を下げる事は可能だ。
本命へのアピールと、小型カサゴの鈎掛りを極力避けるために選択するのが幅1.5cm、長さ15~20cmのビッグな短冊。サバかソウダガツオをメインに使用するが、カンコ(ウッカリカサゴ)やアラが狙えるポイントではイカ短冊も効果大。
魚には軽めの塩とタップリのグルタミン酸、イカは塩を振らずにグルタミン酸のみで味付加工。小型軽量の鈎と、太目ハリスの組み合わせで潮に乗せ、ナチュラルに「泳がせる」のがポイントだ。

「鬼は早めに、カンコは寝かせて旨味を引き出す。」
深場根魚を美味しく食するポイントとして、多くに共通するのが「釣り上げてから何日か寝かせ、身を熟成させる事で旨味を引き出す」のがセオリー。しかし、どんな事にも「例外」は存在するもの。
今回のメインターゲットである鬼カサゴ(標準和名イズカサゴ)がそれだ。「伊勢海老を髣髴させる」の声もある独特の肉質は、即日刺身もOK。なまじ寝かせると臭みが出てしまい、折角の美味が台無しになってしまう。3日以上経つと煮付けや唐揚など、濃い味や香辛料での「ごまかし」が必要な場合も。
同じカサゴ類でも、カンコ(標準和名ウッカリカサゴ)は、鬼カサゴとは対極を成す硬質の身。最低2~3日は寝かさないとNG。即日刺身にしよう物なら、「硬いだけで味が無い」「ゴムを噛んでいる様」と酷評されるので、要注意だ。
鬼カサゴ料理

鬼カサゴは身の緩みが他のカサゴ類より早く、置き過ぎると臭みが出るので要注意。
即日OKの刺身は「イセエビを彷彿させる食感」とする声も。薄造りが基本だが、敢えて気持ち厚みに切るのもアリ。胃袋はヌメリをこそいでから湯がいて冷水に取り、細切り。肝と共に刺身に添える。醤油orポン酢はお好みだが、筆者はポン酢がお勧め。
薄めの味でサッと炊く「煮付け」も美味。胃袋と肝を一緒に煮ても良い。

シャブシャブ
皮無し、皮付き両方の薄造りを盛り込むのも有り。頭やカマのぶつ切りを「鍋」として食せば、一度に2品楽しめる。
材料:鬼カサゴ/ポン酢/薬味(浅葱・モミジオロシなど)/出汁昆布/鍋用野菜/豆腐/葛切り
調理
  1. 大皿に薄造りを重ねずに盛り込む。胃袋はヌメリをこそぎ、一口大に切り、肝と共に添える。
  2. 野菜・豆腐は食べ易い大きさに切り、葛きりは戻して別皿に見栄え良く盛り込む。
  3. 鍋に水を張り、出汁昆布を入れて火に掛ける。
  4. 沸騰したら身をシャブシャブし、ポン酢で食す。
カルパッチョ
刺身の目先を変えるならイタリア風の「カルパッチョ」がお勧め。
材料:柵/オリーブオイル/塩/荒挽黒胡椒/オニオンスライス/プチトマト/パプリカ/グリーンリーフ/粉チーズ/パセリ等のハーブ類
調理
  1. オニオンスライスはよく水洗い後に水を張ったボールに移して一晩冷蔵。辛味が抜けてシャキシャキになったらザルに上げて水を切る。
  2. 洋皿にオニオンスライスを敷き、薄造りに引いた身を重ねず、平たく並べて盛り付ける。
  3. 軽く塩・胡椒する。
  4. 適量のオリーブオイルを振り掛ける。掛け過ぎない様、注意。 プチトマトのスライス、パプリカ、グリーンリーフ等を飾って完成。バジル・オレガノ・パセリ(生なら微塵に刻み、軽く絞って)などのハーブや粉チーズを振っても良い。
唐揚
材料:皮付き柵・カマ/揚げ油/小麦又は片栗粉/塩/胡椒/カボチャ/獅子唐/レモン、スダチなどの柑橘類
調理
  1. 皮付き柵やカマの部分を食べ易いサイズに切り分け塩、胡椒で下味を付ける。※醤油と味醂を1:1で合わせて下味を付けると「竜田揚げ」になる。
  2. 粉を塗して150℃の油に1~2分潜らせ、一旦取り出す。
  3. 10分程空気中にさらした後、180℃の油でサッと色付けすれば「表はカリッ、中はジューシー」に仕上がる。
  4. カボチャと獅子唐を素揚げして盛り合わせ、柑橘類を絞って食す。
兜の酒蒸し

材料:刺身(残り物で可)/醤油/味醂/スリゴマ(白)/大根(ツマ)/人参(ツマ)/大葉/穂紫蘇など
調理
  1. 兜は縦に半割りしてやや強めの塩を振り、深めの器に盛る。
  2. 同量の水で割った日本酒を適宜用意する。
  3. 古根のスライスを2~3枚、長葱の青い部分を縦割りし、兜の上に散らす。
  4. 日本酒を器の深さの半分程度まで注ぐ。
  5. ラップを二重に被せ、電子レンジで数分~10分程度(大きさにより調整)加熱する。
  6. ラップを剥し、葱と生姜を除いて食卓に出す。そのままで充分味が有るが、好みでポン酢を用意。柚子胡椒が有れば更に引き立つ。
鰭酒
フグの鰭酒に負けない(より美味との声もある)鬼の鰭酒。注ぐのはもちろん「鬼殺し」!?
材料:胸鰭・尾鰭/日本酒
調理
  1. 切り取った胸鰭と尾鰭を窓ガラスやガラス瓶に貼り付けて乾燥させる。
  2. 焦がさないように炙り、器に入れる。
  3. 日本酒を熱燗にして注ぐ。

鬼カサゴという魚
釣りでの鬼カサゴとは「標準和名オニカサゴ」ではなく、水深100m~250m前後に多く分布し背鰭の棘に刺毒を有す標準和名「イズカサゴ」と「フサカサゴ」の2種を指すのが通常。しかしフサカサゴは最大でも30cm程度のリリース対象サイズであり、50cm・2kg超まで成長し釣趣と食味に優れるイズカサゴ=鬼カサゴと認識したい。 本項ではメインのイズカサゴとフサカサゴ、この釣りで混じる4種のカサゴを識別法も含めて解説。

イズカサゴ
スズキ目フサカサゴ科 Scorpaena neglecta
国内の分布:青森県、茨城県、千葉県外房~九州南岸の太平洋沿岸、山形県~九州南岸の日本海・東シナ海沿岸、東シナ海大陸棚縁辺域
●背鰭棘に刺毒を有し関東で鬼カサゴ、関西ではオコゼガシラの俗称で呼ばれる。尾鰭、胸鰭、背鰭軟条、臀鰭に暗赤色円斑を多数有することで他のフサカサゴ類と容易に識別可能。雄は背鰭に黒斑を有すが、雌にはない。大型は50cm、2kg超。ここまで成長するのに「数十年要す」なる研究報告も。 鰾(うきぷくろ)を持たず水圧変化に対応、鈎が外れれば泳ぎ去る。

今でこそ関東~関西の広範囲で「メインターゲット」のポジションを確立した本種だが、昭和50年代の千葉県外房地区では「本命(=ムツやキンメ)が釣れない際は仕方ないのでカンコ(標準和名ウッカリカサゴ)と併せて土産作り」なる、いわば苦肉の策的ポジションに甘んじていた。
当時の船長は「あんな物は幾らでも釣れる」と豪語、筆者が「仕立で専門に釣らせてくれ」と頼んだ際に(現在ではとても考えられませんが)「あんたは物好きだなぁ」と言われた記憶が。
80年代後半から暫くの間「ニセフサカサゴ」と言う魚が釣りの鬼カサゴだとされた時期がある。1984年初版の東海大出版「日本産魚類大図鑑」掲載の画像は正に我々が見慣れた「鬼」そのもので、当時は媒体やライター陣も右へ倣えでこの情報をも書き立てたが、後年研究者が「ニセ~」は本種の誤同定であると訂正。この和名は消滅、鬼カサゴ=イズカサゴに統一された経緯がある。
ある研究では「10歳までは成長が早いが、以降は遅く千葉県片貝沖採集の1.7kgは42歳」とされる本種。この論文には「鱗年輪の数え間違い」を指摘する意見も有るが、2kg級がウン十年物の貴重な個体である事に変わりはない。

文献上は「鋭い背鰭棘条に毒があるとされるが、詳しい研究は成されていない」が、船上で棘に手指を刺して腫れ上がった事例は数多く報告されている。筆者が10代後半に近似種コクチフサカサゴ(死魚)の棘を指に刺した際は数分で腕の付根まで激痛を伴い麻痺、回復に半日を要した。
「見栄え」は悪くなるが背鰭棘は釣り上げた直後にニッパーや鋏で切り落とすのが安全だろう。
また本種は細かいながらも結構鋭い歯を顎に有す。取込後背鰭カットの際は親指の腹と人差し指で下顎を掴む、いわゆる「バス持ち」が確実に魚を固定出来て刺されるリスクも少ないが、下顎を支える親指には指サックの装着をお勧めする。
カサゴ類の多くは「寝かす」事で旨味が出るが、イズカサゴは「早めの食」がお勧め。魚専用の氷温庫でも3日置くと身が緩み過ぎ、臭みを感じる場合がある。
鰾が無いので水圧変化に対応、海面まで上げても元気一杯。リリース可能な魚ゆえ、小型は「再会」を期し、若しくは「次の世代」のために、海に戻してやっては如何か。

フサカサゴ
スズキ目フサカサゴ科 Scorpaena onaria
国内の分布:福島県、千葉県外房~九州南岸の太平洋沿岸、北海道・青森県・秋田県の日本海沿岸、新潟県~九州西岸の日本海沿岸(少ない)、奄美大島、沖縄舟状海盆、九州(~パラオ海嶺)
●眼上の「フサ状皮弁」が和名の由来。背鰭棘に刺毒がありイズカサゴと併せて「鬼カサゴ」と称されるが、イズカサゴに比べて寸詰まりのフォルム。25cm程度で最大級。雄は背鰭に一黒斑を有すが、雌にはない。イズカサゴは尾鰭、胸鰭、背鰭軟条、臀鰭に暗赤色円斑を多数有するが、本種はこの斑を持たない事で容易に識別される。鰾を持たず、イズカサゴ同様に鈎が外れれば泳ぎ去る。

イズカサゴに比べて小型の本種だが、成りは小さくても「鬼」である事に変わりは無い。前述の通り背鰭棘条の毒は魚の生死を問わず強烈ゆえ、扱いには充分な注意が必要。イズカサゴと遜色ない上質の身肉だが、そのサイズから調理は煮付けか唐揚、汁物のダシ程度。イズカサゴ同様にリリースOKの魚ゆえ、筆者は研究者の標本依頼など特別な理由が無い限り海に返している。

ヒオドシ
スズキ目フサカサゴ科 Pontinus macrocephalus
国内の分布:小笠原・茨城県~宮崎県の太平洋沿岸・若狭湾・東シナ海大陸棚縁辺域・九州~パラオ海嶺
頭が大きく吻が長い。両眼間隔は無鱗。体は側扁する。体色は一様に赤く、背側に不定形暗色班を有す。胸鰭軟条は全て不分岐(付根から先端まで1本)。
最大の特徴は眼上に有する顕著な紐状肉質皮弁。左右一本ずつの2本がベーシックタイプだが、左右の長さが極端に異なる、 一本しかない、極端に小さい、全くないなど、その形状は変異に富む。
外観からイズカサゴと見間違う釣人も多いが、本種は単独でヒオドシ属に分類される。フサカサゴ属(イズカサゴやフサカサゴ)にはない鰾を持つため、多くの深海魚同様に釣り上げると反転胃、時に眼球の突出を起こして海面に浮かんでしまう。この点でもイズカサゴ、フサカサゴとは簡単に識別可能。
背鰭棘条に刺毒の報告は無いが、棘条を手指に刺せば傷口は相応に痛むし、雑菌の侵入により化膿の危険性もある。毒の有無に係わらず、強い棘条を有するフサカサゴ科魚類の取り扱いには注意が必要。
サイズはフサカサゴ同様、大型で30cm程度。しかし、水圧変化に対応できない本種にはリリースが叶わない。

ウッカリカサゴ
スズキ目メバル科Sebastiscus tertius
国内の分布:青森県津軽海峡へ宮崎県の太平洋沿岸・若狭湾・山口県日本海沿岸・長崎県五島列島~東シナ海大陸棚縁辺域
60cm・3kg以上に成長する大型種。関東全域で一般的に「カンコ」、他にボウチョカサゴ、ボータなどの俗称で呼ばれる。水深100~300mに多いが、これより浅所にも分布する。体側の小白点に明瞭な縁取りを有す。眼窩下縁は無棘。胸鰭軟条数は通常は19本(18~20本の変異有り)。和名の由来は「うっかりしているとカサゴと間違えるから」とされる。老成魚では「墨」と称される不定位置・不定形の小黒班を有する個体もある。生息域は「イズカサゴ」とほぼリンクし、大型は海面近くまでかなりの抵抗を見せ釣人がサメと勘違いするケースも多々あるが、最終的には体内のガスが膨張、「目抜け」状態で浮かび上がる。ゆえに鬼カサゴの様に取り込みで慌てる必要は無い。
かつて本種は「カサゴの深所型」とされ、釣りの世界では「カンコは中深海に棲むカサゴの老成魚である」説が有力だった。しかし1978年に本種が新種記載され、現在は「カンコはウッカリカサゴの俗称である」事が広く認知されている。千葉県外房地区では水深100m以浅で釣れる褐色の強い大型カサゴをハチカサゴと呼びカンコと区別してきた。ハチカサゴは棲息水深と体色から標準和名「カサゴ」の老成魚だとされるが、実際には両種の棲息域はクロスしており水深と体色のみで識別するのはいささか「乱暴」と言わざるを得ない。
ウッカリカサゴとカサゴの識別点は

①体側の小白点。ウッカリカサゴには明瞭な縁取りがあるが、カサゴには縁取りがない。
②胸鰭軟条数。ウッカリカサゴが通常19本に対し、カサゴは18本。

軟条数には若干の変異もあるので、2点を併せての判断がより確実と言えます。 大型は3kg以上、時に4~5kgの怪物級も姿を見せる本種だがその成長は遅く、大型から釣れてしまうのは他の根魚同様。故に「小型しか釣れない」ポイントは相応に攻められていると判断出来、言わば「場荒れのバロメーター」的存在でもある。上質の白身だが「身の締りが良過ぎる」ため、少なくとも2~3日は寝かせてから調理したい魚。薄造りはポン酢で。シャブシャブ、鍋、唐揚、煮付、酒蒸しなどがお勧め。

アヤメカサゴ
スズキ目メバル科Sebastiscus albofasciatus
国内の分布:岩手県角ノ浜~九州南部の太平洋沿岸(茨城県以北は稀)・新潟県~山口県の日本海沿岸(少ない)・瀬戸内海西部(少ない)・九州北岸・西岸・屋久島沖・東シナ海大陸棚縁辺域
やや南寄りに分布する種で30m前後の浅所~水深100m前後の岩礁に棲息。体側に派手な黄色の虫食い状模様、若しくは網目状斑紋を有す。各鰭の黄色味が強い。眼窩下縁に後向きの1棘を有す事でウッカリカサゴ、カサゴと容易に識別可能。胸鰭軟条数は通常17本(16-18本の変異有り)。
筆者若かりし頃、大型で30cm程度の本種を「カンコの正体」と記した釣り媒体があったが、前出の「ハチカサゴはカサゴの老成魚でカンコは別種」説から創作された物と思われる。 この記事が「ウッカリカサゴ」が記載される78年以前の文献(若しくは知識)を基に書かれた物なら「カサゴでは無いカサゴ属」の選択肢は本種しか無かっと容易に想像される。

ユメカサゴ
スズキ目メバル科Helicolenus hilgendorfi
国内の分布:青森県~薩摩半島の太平洋沿岸・伊豆諸島・秋田県・山形県・富山県・若狭湾~九州北西岸の日本海沿岸・東シナ海大陸棚縁辺域
口腔内から腹膜が黒く、関東では「ノドクロカサゴ」の呼称が一般的。橙の体側に濃い橙の不明瞭な横帯数本を有す。胸鰭上半部後縁と尾鰭後縁は浅く湾入、胸鰭基部の腋部には皮弁がある。。側線鱗数は31で上下に暗色線はない。交尾後に受精卵を産出する「受精卵性」。鰾を持たず深海から釣り上げてもリリースすれば海底へと戻り、特別な装置がなくとも飼育が可能。

天皇海山に分布する「オキカサゴ」は側線鱗数50~55と多い・上顎前端に一対の歯塊が突出・側線上下に暗色線を有すの3点から、同所分布の「ニセオキカサゴ」は側線上下に暗色線を有す点で本種と識別される。 因みに添付の頭部画像個体では上顎前端に一対の歯塊が突出して見えるが、これは本種オス大型個体の傾向で正真正銘のユメカサゴ。同定頂いた京都大学の博士からは「オキカサゴの歯塊突出はかなり派手」とコメントを頂いた。尚、輸入魚を中心に掲載した図鑑「新顔の魚」では1970年版Ⅱでオキカサゴの歯塊突出が「一寸ホウボウの頭を想起させる」と記されている。

近年世間一般では「ノドクロ」若しくは「ノドグロ」の名はアカムツに奪われ多賀城、深海歴30年以上の釣人は「ノドクロ」と言えばこの魚。本種は青森以南~九州、東シナ海まで広く分布し、中深場~深海釣りの「脇役」として最もメジャーな存在として差し支えなかろう。比較的浅所では20cm未満の小型が多いため「金魚」等と呼ばれ軽視されるが、250m以深で場荒れの少ない海域では40cm、1kgを優に超す「ゲストフィッシュ」と呼ぶに相応しい大型も姿を見せる。 筆者が出会った最大は2010年、南紀白浜沖での48cm、1.6kg。正に「イズカサゴ顔負け」の大物だが、船長は「これより大きいのを何尾か獲ってる」と涼しい顔。 現在よりずっとマニアックだった関西の深海釣りに「大いなる将来性」感じた瞬間でもある。また高知県室戸沖で深海探査艇が撮影した海底映像では平坦な海底斜面の窪みと言う窪み、全てに前述と遜色ない本種が鎮座するのを確認している。

本種の体色は基本「橙の体側に濃い橙の不明瞭な横帯数本」ですが、時に例外もあり。改修前の神奈川県江ノ島水族館では「堤防で釣れるカサゴその物」の茶色い本種が展示されていた。現在は「新江ノ島水族館」含め深海魚を展示する水槽は周囲を暗く、水温も下げ深海の環境に近付けているため本種とも見慣れた姿で対面出来るが、この時は通常光で飼育されており、保護色で茶色になっていたのだ。 これとは別に沼津港のトロール船が「黒いユメカサゴ」を採集して京都大学で標本同定した所、こちらは正真正銘、非常に珍しい「体色変異個体」と判明した。 釣りシーンでは小型が多いため軽視されがちな本種だが、実は「カサゴ類中最上位」にランクされる美味な魚。良型、特に脂の乗った個体は刺身を筆頭に様々な調理で「本領」を発揮する。前述の通りリリース可能ゆえ「金魚サイズ」とは再会を期すべきだが、本来もっと評価されるべき魚と考える。