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深海研究所 Part 1 キンメダイ



第1話 キンメダイ

キンメダイという魚
釣師のみならず世間一般にも広く知られる高級魚にして、深海釣りの象徴的存在。十数本以上の多点仕掛にズラリ連なる魚を仕掛ごと持ち上げる「お約束ショット」や大型クーラー満タンの画にはやや時代錯誤の感も否めないが、その部分も含めて入門者からベテランまで、幅広い層に人気を誇る。
眼球内部に反射板を有し、光を受けると眼が金色に輝く事が和名の由来。釣り上げた際のピンク掛った背の朱色、紫が射す腹部の銀色の見事なコントラストは釣師のみが目にできる「生時限定」のカラーである。 「キンメダイ釣り」は標準和名キンメダイをメインに同科のフウセンキンメ、ナンヨウキンメもターゲットに含まれる。



キンメダイの釣場
キンメダイは釣師のみならず、世間一般でも広く知られる美味な高級魚。
重要産業種であるがゆえに年々遊漁に対する規制は年々厳しくなっており、釣船に解放されている釣場は分布海域のごく一部に過ぎない。

ライトタックルの代表的な釣場
東京湾口 洲ノ崎沖~沖ノ瀬
神奈川県城ヶ島沖
神奈川県真鶴沖

ヘビータックルの代表的な釣場
東京都大島沖
東京都新島沖
和歌山県白浜沖
高知県室戸沖



タックルと仕掛

①ライトタックル(LTキンメ)
中型電動リールで鈎数5~10本、300号以下の錘を使用する比較的ライトなスタイル。
ロッド…全長2~2.3m。チューブラー素材のLT深海専用ロッド。

アルファタックル適合モデル
ディープインパクトLight190・220
ディープインパクトTERUスタイルRT0
スーパーディープクルーザー0
リール…水深と縄切り禍を考慮し、水深の2倍≒PE6号700m以上のキャパシティが理想。
ミヤエポックAC-3JPC、S社6000以上、D社750以上が該当。
仕掛…ハリ数5~8本のベーシックな胴突仕掛け。ハリは細地ムツ15~16号か、特殊形状でムツやクロシビカマス(スミヤキ・ヨロリ)の鋭い歯によるチモト切れを防ぐ「ホタ鈎」16号がお勧め。
ハリス8~10号70cm~1m、幹糸12~16号1.5~1.8m。捨て糸は8号を1~1.5m程度。上端にはPEラインの縒れを解消すべくフジワラ「深海用リングS」等の小型ヨリトリ器具を配す。オモリは海底に残っても環境に負担を掛けない鉄製のフジワラ「ワンダーⅠ」を推奨。ただし「船宿指定の錘を使用する」という事も付け加えておきたい。

既成仕掛
アルファタックル
DEEPMASTER 深海仕掛 ライトキンメ10本枠付 (ホタ16号・ハリス10号・幹糸18号)
集魚ギミック…ルミカ「輝泡」などの赤色小型発光体が有効だが、サメやサバ、縄切り魚が極端に多い場合はフレックスに対応する。ハリスにはヤマシタ「マシュマロボールL」を配し、浮力とフォール時の抵抗を利用してアピール。深海バケと併用の際は双方のカラーをリンクさせる。また各鈎にニッコー化成「激臭匂い玉7Φ」を配すのがディープマスター流。
深海バケ…藤井商会「フジッシャー毛鈎ホタ16号」がお勧め。紫系が◎だが、定番の橙、緑や低水温時に強い赤やピンク、高水温時に効く水色など、各色用意しておけば万全。
エサ…船宿用意はイカやサバの短冊が主で、時にカタクチイワシも。短冊のサイズは幅1cm、長さ12~13cm程度で、自作の場合もこのサイズを参考に。鈎掛けは中心線上のなるべく端をチョン掛け。ニッコー化成「ロールイカタン」など擬似餌も同様。カタクチイワシは下顎から上顎のセンターに刺し通す。

②ヘビータックル
大型電動リールでハリ数10本以上(地域によるハリ数規制あり)、オモリ1.5~2kgを使用する本格的深海釣り。

ロッド…アコウダイ用よりもやや胴に乗るアクション、若しくは使用オモリに対し「やや負け気味」となるグラス素材の深海専用ロッドをセレクト。 巻上時の復原力を抑え、口切れに配慮するのがセオリー。 口切れを抑えるクッション効果と、竿が絞られる見た目の面白さは長い程優れるが、捨てオモリ式の新島沖では上潮が速いと取り込み時にラインが前方に流れ、ロッドが長いと「ラインを掴むのに一苦労」する場合が。これら条件を踏まえ、2m程度がベストレングスと考える。

アルファタックル適合モデル
ディープインパクト カイザーG
ディープオデッセイ モデルG
ディープインパクトTERUスタイルRTⅠ
ディープインパクトTERUスタイルSⅠ
スーパーディープクルーザーⅠ

リール…高強度PE10~12号を1,000m以上巻いた大型電動リール。ミヤエポックZ9~Z15サイズが基本。

仕掛…ハリ数は各地域の規制に従い、少ない分には問題なし。船や釣場によりハリスや幹糸の太さ、長さに若干の違いはあるが、ハリス12~14号0.8~1m、幹糸24~30号1.5~1.8m、細軸ムツバリ18~19号(若しくはホタ鈎16~18号)で殆どの釣場をカバー可能。
個人的には専ら「ホタ鈎」を使用。軸部分が長い特殊形状のネムリバリで、ハリスが魚の口元に当り難い。同ポイントで混じるクロムツやクロシビカマス(スミヤキ・ヨロリ)など歯の鋭い魚がハリ掛りしても、軸部分が口元にあたるのでチモトからのハリス切れはほぼ皆無。ハリ先のネムリが深く、幹糸に引っ掛ると通常ネムリバリほど簡単に外れないのが難点だが、裏を返せば「魚が外れ難い」長所。口周りが脆いキンメには極めて有効と言えよう。

掛枠に巻き込んだ物を投入回数分持参し、出船前に2~3組(もちろん投入回数分でも良い)に餌付けを済ませておく。(掛枠への巻き方は図を参照)
捨て糸は釣場や船宿により指示が異なるが、12号を3~9mと通常深海仕掛よりもかなり長め。14号を使用する場合は捨て糸を切り易い様、ダンゴ結びでコブを1箇所造っておく。これ以上太い号柄は捨て糸をカットする際、リールのギアやロッドに無用な負荷を与えるだけなので、使用しない。

上端にミヤエポックヨリトリWベアリング」「キャラマンリングⅡ型」などの大型ヨリトリ器具+ヤマシタ「ゴムヨリトリ」5mmφ1mを配す。因みに深海釣りでクッションゴム使用を推奨するのは「巻上時の口切れ抑制」を最重要ポイントに据えるこの釣りのみ。尚アコウダイとの2本立ての場合は「アコウダイを喰わせる底叩き」に配慮すべく転向の際に「ゴムヨリトリ」をナイロンライン40号1mに差し替えるのがポイント。オモリは船宿用意の鉄筋、若しくは船宿指定重量のフジワラ「ワンダーⅠ」を使用する。ただし「船宿指定の錘を使用する」という事も付け加えておきたい。

既成仕掛
アルファタックル
DEEPMASTER 深海仕掛 キンメ10本枠付 (ホタ16号・ハリス12号・幹糸24号)
DEEPMASTER 深海仕掛 キンメ15本枠付 (ホタ16号・ハリス12号・幹糸24号)
DEEPMASTER 深海仕掛 キンメさがり200本 (ホタ16号・ハリス12号・幹糸24号)

集魚ギミック…ルミカ「クアトロレッド」等の赤色発光体を仕掛け上部、若しくはセンター付近に配すと同ポイントで混じる大ムツやアコウダイを含め有効だが、潮の動きが鈍い際にはカラスザメを引き寄せる事も。状況に応じたフレックスな対応が必要だ。ライトキンメ同様ハリスにはヤマシタ「マシュマロボールL」を配し、浮力とフォール時の抵抗を利用してアピール。深海バケと併用の際は双方のカラーをリンクさせる。また各鈎にニッコー化成「激臭匂い玉7Φ」を配すのがディープマスター流。
深海バケ…ライトキンメ同様の藤井商会「フジッシャー毛鈎ホタ」が適合するが、一投使い切りスタイルの釣りでは一釣行最低でも100本近くを用意する必要があり、現実的とは言えないかも。
エサ…用意のある船ではイカ短冊かカツオ腹モが主体。エサ持ちが良く、複数回使えるサーモン皮を用意するケースも。短冊中心線上なるべく端をチョン掛けとする。各自持参の場合は上記の他にサバやソウダガツオ。
ニッコー化成「ロールイカタン」などの疑似餌も実績あり。常温保存で「汁」も無いので扱い易く汚れず、手指や衣服に臭いが残らないのも嬉しい。

出船前に船上で準備するのが面倒(早くキャビンで横になりたい)なら、幅1~1.5cm、長さ15cm程度(中小型では10cm)の短冊を用意し、事前に2~3組(もちろん全てでも良い)にエサ付けしておく。
2kg超の大型や大型クロムツが期待できるポイントでは下バリ数本に幅1.5~2cm、長さ2cm前後にカットしたサバ短冊やスルメイカ肝付ゲソ等、大振りのエサを配して余禄を狙うパターンもアリ。(大ムツに効果大のサンマエサは新島沖など使用禁止の地域があり、事前に要確認。)



実釣テクニック

ライトタックル

エサ付けを済ませた仕掛けは順序よく船縁に並べ、投入の合図を待つ。船縁磁石が無い船では磁石板やフックキーパーの持参がベター。船長の合図に従い、オモリを軽く前方に放り投げる。
この際に注意すべき点は
①仕掛けの絡みや自らの足による幹糸部の踏み付け等がない事を確認。

②オモリを投げる時、船縁から身を引き、仕掛けから離れる。(ハリが衣服や手に引っ掛かる可能性あり)

③仕掛け全てが海中に入ってからスプールをサミングしつつクラッチを切り、スプールフリーにする。(フリーで投入するとヨリ取り器具やチェーンの重量で道糸が先に出て手前マツリ、投入ショックでバックラッシュの可能性などがある。) の3点。

オモリが着底したら一旦海底を離れるまで巻き上げて(竿先が大きく曲がってから戻る)完全に糸フケを取り、再度着底させる。
ここからが本当のタチ取り。ウネリによる上下動でオモリが海底をトントン叩く状態を設定すべく、海況、釣座、ロッドアクションなどの条件を考慮して50cm~1m程度巻き上げる。
その後もマメに底を取り直し、底叩きを維持してアタリを待つのが基本だが、「着底後5m巻け」など船長から具体的な指示がある場合はそれに従う。

エサの動きにより大きな変化を持たせるなら、時に2~3m巻いて落とすイレギュラーなアクションを織り交ぜれば良い。クラッチのON・OFFと瞬動巻上を駆使すれば、敢えて「手持ち」で誘う必要はない。 カケアガリを流れると順次水深が浅くなり、オモリが海底に着いてラインに弛み(糸フケ)が出る。岩礁底で放置すれ根掛りするので、素早く糸フケを除く。逆に下って深くなれば仕掛けは宙ぶらりん。とんでもない上層を釣らぬよう、海底を叩く竿先のサインが消えたらクラッチを切ってオモリを着底させ、底ダチを取り直す。 アタリは明確かつシャープ。基本はそのまま、喰い上げる様ならハリ間隔分ずつ、海底が「かけ上がる」なら糸フケ分ずつ順次巻き上げながら追い喰いさせる。

巻上自由なら頃合いを見計らい、「船長指示で」なら合図を待って巻上開始。
「口元が脆くバレ易い」「水圧変化に強く海面下まで抵抗、外れると泳ぎ去る」の2点を念頭に巻上はドラグを効かせた「低速気味」設定が基本。 強引はもちろんだが、遅過ぎや緩急付けたリーリングも厳禁。一定スピードとテンションで巻く事を念頭に置き、ウネリで船が上がった際や魚が引き込んだ際に巻上げが滞る程度のドラグ設定をする。この時スプールが逆転する様だと、かえって「外れ」の原因となる。ウネリが大きい際にはキーパー仰角を下げ、ロッドを水平に近付けて復原力を抑えるのも口切れを防ぐテクニックだ。

取込みは不用意に抜き上げず、玉網のアシストを。1~2尾のハリ掛りなら取り込みながら仕掛を船縁に並べる事も出来るが、連なった場合は一旦仕掛け全体を重ならない様、船縁と並行に取込み、ハリを外しながら並べて行くのがスムーズだ。
ハリスや幹糸に傷が無いか、ハリ先が甘くなっていないか、素早くチェック。エサ付けを済ませて「振り出しに戻る。」後は最初から繰り返せば良い。

ヘビータックル

投入…基本的に掛枠での投入。船長の合図に従い、舳先、又は艫から順に仕掛を下ろす。
合図と同時に投入できるよう、全ての準備を整えておく。船長は潮の流れと人数を計算して投入ポイントを設定するが、ここには「モタ付き、失敗によるロスタイム」は基本的に含まれていないから、合図で投入できない場合は「一回休み」を厳守する。

投入の遅れは自身だけでなく、「後から投入する同乗者の仕掛けが着底時にポイントから外れる可能性がある」事を忘れずに臨んで欲しい。

投入時は片手で握った掛枠を海面に対し45度程度に構え、合図と共にオモリを「落とす」(放り投げると捨て糸が切れる場合有り)。これで仕掛けはパラパラと順序良く海中に投入される。
この時、リールはフリーにせず、仕掛けが全て海中に入ってからスプールをサミングしつつフリーにするのがポイント。予めフリーにすると投入のショックでバックラッシュする、ヨリ取りの重さで道糸が先に海中に入り、手前マツリするなどのトラブルとなるからだ。投入時のトラブル軽減にヨリトリ器具ホールド用クリップを活用するのも一手だ。

アタリ~追い喰い… 船長の計算通りに着底すれば直後、時にそれ以前(この場合は「喰い上げ」となる)にアタリが出るが、そうは上手くは行かないのが現実。アタリが無ければ速やかに糸フケを除き、オモリが海底を船の上下でトン、トンと叩く状態をキープしてアタリを待つ。竿や海況による底の切り具合や底を取り直す頻度など、一尾目を喰わせる誘いのテクニックが各自の腕の見せ所、釣果に差が付くポイントだ。但し東京都新島沖などでは潮が速い際「ラインを張らずにどんどん送る」の指示が出る事も。
アタリをキャッチしたらすぐに船長に合図、も忘れてはならないポイント。どの辺りで喰って来たか、どんな反応で喰ったのか、次回投入の判断材料となるからだ。
アタリ後の操作はポイントや潮況、操船スタイルにより異なる。

大別すると
パターン①
「そのままの状態を維持」…斜面を登らず、横方向に流すスタイル。オモリを宙に浮かせず、さりとてラインは弛めずにキープ。糸フケ分は巻き取り、深くなったらその分だけ落とし込んで追い喰いさせる。

パターン②
「アタリ毎に幹糸間隔、又は糸フケを順次巻き上げ、常にオモリは海底から1m程浮かせておくイメージ」…LTキンメと共通するカケ上がりに正面からぶつけるスタイル。

パターン③
「オモリを着底させ、テンションをキープしつつ船の移動分道糸を送り続ける」…いわゆる「新島沖釣法」。アタリが出たらクラッチを切ってラインをリリース。オモリを着底(根掛り)させ、「海底に対して30~45°の角度でラインを送り込み、より多くのハリを反応の中に入れる」のが新島キンメ追い食いの基本テクニック。竿先のテンションを維持した状態で船長の巻上、若しくは糸送りストップの合図が出るまでラインを送り続けるが、テンションが強過ぎると仕掛けが移動して反応から外れてしまうし、オモリが根掛りしていれば捨て糸が切れて仕掛けが浮き上がり、早々に回収となる可能性が。(捨て糸が切れて仕掛がフケた所で喰うケースもあり、潮況次第では捨て糸が切れても巻上合図までそのまま待て、の指示が出る事もあるが) さりとて闇雲にラインを送り込んで仕掛が海底を這ってしまうとアナゴやソコダラなどが喰い付き本命の追釣が望めない、複数のハリが根掛りし仕掛が回収できない等、トラブルの要因にも。
竿先が一定の角度で曲がりつつ、ラインが張った状態を維持して送るのが基本だが、潮の遅速やポイントにより「弛め気味」「伸ばすな」など、投入毎に船長から細かな指示が出るケースもあり、アナウンスを聞き洩らさぬ様留意したい。

例えば「壁」と呼ばれる断崖絶壁ポイントでラインをリリースすれば、仕掛が斜面に貼り付き、100%回収不能。底トントンでアタリをキャッチしたら決してラインを送らずに船長の合図を待ち、根掛りさせたオモリだけを捨てて巻き上げる。6m以上の捨て糸はこのポイントでハリの根掛りを防ぐための設定だ。
何れにせよ、アタリ後の糸送りで釣果が決まる、としても過言ではない。糸送りは「新島釣法」の要と心得て、船長のアナウンスを聞き逃さず、確実に実践する事が肝心。指示と異なる仕掛操作は自身の釣果のみなず、オマツリ誘発など同乗者に多大な迷惑が掛るため、決して行ってはならない。 

巻上…投入同様、船長の指示に従って行う。基本的にオモリが付いるパターン①&②は最初からドラグを充分調整した低速気味で、緩急を付けず一定のペースで巻く。但しオモリが切れている場合はある程度スピードアップし、オモリが無いための「糸フケ」や魚が自由に泳ぎ回る事で発生する同乗者とのオマツリを防ぐ配慮を。

パターン③は「先に巻き始めた仕掛けを追い越さない巻上速度設定」が回収時のオマツリを軽減するが、捨て糸が切れた場合はラインが「立つ」まではある程度の速度で巻上げ、以降スローダウンする。巻上開始時は実水深より余分にラインが出ているのを踏まえ「巻上時間を短縮して効率を上げる」と、オモリが無い事によるオマツリの軽減を意識した物。この釣法でもオモリが残っている場合は最初からドラグを調整した低速気味で緩急付けず一定のペースで巻くが、オモリが無くても極端な早潮で終始前方にラインが走っている(若しくは同等の操船)ケースでは「オモリ有り」同様に終始低速気味で行う。また、巻上中に次回投入する仕掛を準備しておく事も忘れずに。

捨て糸の切り方… 意図的に根掛りさせる③新島釣法の場合、巻上は捨て糸を切る事からスタートする。
先ず糸フケを完全に巻き取り、ロッドが絞られた状態で一旦巻上をストップ。ドラグを目一杯まで締め込み、船の移動で捨て糸が切れるのを待つ。仕掛けを這わせ過ぎてハリが根掛りし、容易に処理できない場合はタックルを傷める前に速やかにラインをリリース。船のボーズなどに巻き付けて切る。リールの巻上力に任せて強引に引き千切る行為はギアやロッドを傷める、キーパー脱落等のリスクを有し、厳禁だ。

取り込み…多数がハリ掛りしたら基本的に仕掛の再使用は考えない「一投使い切り」。効率優先のスタンスであり、この部分はライトタックルよりも簡単と言える。
玉網のアシストを受けつつ、仕掛をどんどん船内に引き上げたら、速やかに新しい仕掛をセットして次回投入に備える。
魚の処理は投入準備が整ってから、若しくは投入後に行う。血抜きは各自判断で良いが、「海水氷」のクーラーに収めて「全体を万遍なく冷却する」は必須。但し、必ずビニール袋で魚体を包んでから収納し、氷(クラッシュタイプは特に)が直接魚体に触れない様に配慮する。
魚を包まずに海水氷のクーラーに収めると、移動時などの「揺れ」で氷が体表を擦って鱗を剥ぎ、以降も長時間の摩擦で身肉が水を喰うなど、劣化してしまう。極上の味覚を「台無し」にしないために、魚の多少にかかわらず、必ず行いたい一手間だ。



キンメ釣りに役立つ!?ディープマスターのワンポイント

①新島キンメには緑!? この日「効いた」エサとギミックは
深海釣りで常に意識するのがフジッシャー深海バケを筆頭としたギミックの「カラー」。仕掛の消耗が激しい新島キンメでは基本フジッシャーは使用しないが、ロールイカタンなどワームやチモトのマシュマロボールなど、ギミックのカラーには常に気を配る。因みにある日の釣果は殆どがビッグサバ短冊へのアプローチながら、マシュマロボールのカラーはイエロー(黄緑)、ヒットしたロールイカタンのカラーは青緑。

またこの日20枚を超えた舳先の二人が使用したのは近年新島キンメのトレンドとなりつつある「青緑」に着色した身餌で、カラーに「整合性」が取れていた。これらを見ると「新島キンメは緑が◎」となるのだが、「ヒットカラー」は状況次第で変わるのが常。ギミックも染めエサも「オンリー」での持参はリスクも大きいと認識したい。

②ロングハリス&幹糸設定「ジャイアントキンメ専用仕掛け」
ある年の初夏、船中が目を見張る結果を残したのが自作のロングハリス&幹糸の10本バリ仕掛。ホタ18号にナイロンハリス14~16号を1.5m、幹糸は24~30号を3m。一般的キンメ仕掛の倍の長さを取る代わりにハリ数は10本に抑える。通常仕掛と同じ幅を探りつつ、ジャイアントキンメや大ムツに有効な「サルカンや縦糸からより離れた位置で、よりナチュラルにベイトを漂わせる」を意識した「数より型」を狙うスタイルだ。ハリスにヤマシタ「マシュマロボール」を配すのは発光による集魚力ではなく浮力や潮受けアップでベイトの動きを期待する設定故、無発光タイプ「マシュマロボール アカムツSP」をセレクトする。

③「大キンメ&クロムツにお勧め!肝付イカゲソの半割エサ」

ベニアコウ用イカ短冊製作時の「廃品活用」だが、真鶴沖大ムツ狙いでは以前より船長お勧めの特エサだ。
胴を外した肝付ゲソは切れ味の良い包丁で眉間から左右対称に割り、切り口を上にしてトレーに並べ、グルタミン酸をタップリ振って一晩冷蔵。絞れた水分を除いて使用する。鮮度の良い物を用意できればベストだろうが、当日持参したのは冷凍イカを半解凍状態で加工し、再度冷凍保存した物。「生」より肝の持ちは良くないが、期待に違わぬ(以上!?)の効果を発揮してくれた。

④やっぱり「効く!」フジッシャー毛鈎とマシュマロボール
「捌きが難しくなり、手返しが落ちる」「現場でのメンテナンスが手間」「価格面が…」などの難点?から、特に入門者がしり込みしがちな「フジッシャー毛鈎+マシュマロボール」。高活性時には大きな差が出ない場合もあるが、某所のLTキンメでは朝一の好機に4名が仕掛けを下ろし、使用した3人はパーフェクト、未使用の一人だけがノーヒットと極端な差が出たケースも。因みにマシュマロボールのカラーは毛鈎とリンクさせるのが基本だ。

⑤フジッシャー毛鈎にマシュマロボールを簡単セット。富士工業「ラインスレッダーLTM-M」
近年深海釣りの必須ギミックとしても過言ではないヤマシタの「マシュマロボール」。空バリの場合は針先から通し刺して簡単にハリスにセットできるが、筆者愛用にして効果抜群の「フジッシャー毛鈎」は魚皮やフラッシャーモールがセットされており、針先からの装着は不可能だ。
そんなフジッシャー毛鈎のハリスにマシュマロボールを簡単にセットできるのが富士工業の「ラインスレッダーLTM-M」。本来は小型ガイドに道糸をスムーズに通すための道具だが、画像の要領でマシュマロボールに刺し通し、ハリスの端を挟んで引き抜けばセット完了。「ハリスをサルカンに結んでいない状態」の制約はあるものの、フジッシャー毛鈎とマシュマロボールの相乗効果がよりイージー、かつリアルとなるのは間違いない。
使い方はこちら

⑥サメ対策とイルカ対策

巻上時中~上層でのサメ禍(奪い喰い)対策はサメやエイの電気感知器官であるロレンチニ瓶(ロレンチーニ器官)を電流で刺激し、回避行動を促すサメ禍軽減装置「海園」の使用がお勧め。

  1. LTキンメ…「海園Ver.2イカ直結用」を最初か水中灯宜しくヨリトリ器具の下に接続して使用すれば、 宙層の奪い喰いだけでなく、海底でのツノザメアプローチ軽減効果が期待できる。
  2. ヘビータックル…捨て糸をカットし巻上開始の時点で「海園Ver.2」のカラビナを道糸にセット(引っ掛ける)して海中に投下する。LTキンメと同じく「海園Ver.2イカ直結用」をヨリトリ器具直下に配してもOKだが、特に「根切り前提」の新島沖では根切時の仕掛ロストやライン切れリスクを考慮した「巻上時セット」が得策だろう。

イルカの奪い喰いを軽減するギミックは現状販売されていないが、ヒントになる話を二つ紹介する。

  1. 北茨城干潟沖のキチジ(キンキ)釣りの際、巻上時にイルカの群れが襲来。折角の釣果をみすみす奪われたくないので船内を見回せば、根切用の金属パイプが目に入る。音波に敏感なイルカゆえ、もしかしたらとパイプを海中に差し込んで錘でカンカンカン!と叩くと、イルカの群れがパニック状態となり散り散りに。全員が無事超高級魚を手にする事が叶った。
  2. かつて東伊豆で行われていたイルカ漁にはイルカを港に追い込むための専用器具があった。内部をオイルで満たしたクラリネット状パイプで、叩くと独特の音が出る。漁の際はこれを海中に差し込んで音が出て、これを嫌って逃げるイルカの群れをコントロール、最終的に港に追い込み捕獲したと言う。
    何れも「音」がキーワードなので最終的には音波発生装置と言う事になろうが、「長めの金属パイプを用意して鉄錘で叩く」だけでもイルカ被害の軽減は期待できそうだ。



キンメダイ料理

釣人のみならず、世間一般に広く「高級魚」と認知されるキンメダイ。静岡県稲取では古くから祝魚として用いられ、現在は釣りでも、観光でも「伊豆の代名詞」的存在としても過言ではない。
脂の乗った白身で真っ先に連想されるのは「煮付け」だが、刺身(中型はゼラチン状になる表皮の食感と、皮と身の間に脂が残る「湯引き」仕立てが美味)や鮨、焼き物(塩焼き以外に塩釜焼・腹に香草を詰め、オーブンで丸焼き等)、味噌仕立ての鍋、西京漬けや干物等の保存食と様々な調理が可能。
脂の乗りが今一つならムニエル、アクアパッツァ、ブイヤベース、シーフードカレー等の洋風仕立てや、空揚げして甘酢あんかけやチリソース和えなど中華風に調理しても良い。
ここではディープマスターお勧めのキンメダイレシピ4種を紹介する。

①湯引き
材料:皮付きの半身、若しくは柵/山葵/大根(ツマ)/人参(ツマ)/大葉

  1. 柵は表皮を上にしてまな板に置く。
  2. 表皮にまんべんなく熱湯を掛ける。この時布巾を掛けると均等に熱が回る。
  3. 氷水にくぐらせて粗熱を除いて水分を拭き取り、冷蔵。
  4. 充分に冷えた所で皮ごと引いて盛り付ける。
    ※皮を引かないので身との間にある脂を落とさず、脂の乗りが未熟な個体を生食する際にお勧めの調理。ゼラチン状になる表皮の食感も秀逸だが、あまり大型だと脂が強過ぎる、表皮が厚く口に残るなど「イマイチ」の場合も。

②塩釜焼
材料:丸魚(オーブンに入るサイズ)1尾/荒塩/卵白
調理

  1. 丸魚は鱗、鰓、ワタを除いた丸ごと1尾を用意する。切身では塩が効き過ぎ、この調理には向かない。
  2. 荒塩に卵白を混ぜ、ペースト状に練り上げる。塩1㎏に対して4ヶ分の卵白が目安。
  3. 天板にアルミホイルを敷き、ペーストをのばす。魚を置いたらホイル端を魚なりに絞り、上から残りのペーストを被せて魚を塩釜で包み込む。
  4. 更にアルミホイルを被せ、230℃のオーブンで30~45分(魚のサイズで調整)焼く。
  5. 塩釜のまま食卓に出し、食べる直前に釜を崩す。松葉等を添えると更に引き立つ。柚子やカボスを絞って食す。

③西京漬け
材料:
切身/西京味噌/味醂/日本酒/塩

調理

  1. 切身に軽く塩を振り、3時間冷蔵する。
  2. 西京味噌500gに酒・味醂各50ccを加えて練り上げ、味噌床を作る。
  3. 切身の水気を拭き取り、味噌床に漬け込む。直接漬け込んでも構わないが、味噌・ガーゼ・身・ガーゼ・味噌の順に挟んで漬け込めば味だけが染込み、焼く時に味噌を落とす手間が省ける。
  4. 2〜3日漬けると食べ頃。味噌床から出して(直漬けは味噌を洗い落とし、水気を拭いて)1枚ずつラップに包み、冷蔵、または冷凍保存。
    ※キンメダイのみならずベニアコウ、アコウダイ、クロムツ、アブラボウズなど脂のある魚、メダイやマダラなどアッサリ系、何れも美味な「深海ターゲットにお勧め」の調理法。

④煮付け
材料:丸魚、切り身、兜の半割など、鍋のサイズや供する状態を踏まえて選択/濃口醤油/日本酒(又は味醂)/砂糖/根生姜又は粗挽き黒胡椒調理
調理

  1. 丸魚は鱗、鰓、腸を除き、盛付時に上となる左側に浅く切れ込みを入れる。味の滲み込み易さだけでなく、皮が破れて見栄えが悪くなる事を防ぐ配慮。肝は一緒に煮るので捨てずに残す。
  2. 水3:醤油1:酒(又は味醂)1:砂糖1/4を合せて良く混ぜ、生姜の薄切りを加えて強火で煮立てる。 生姜を粗挽き黒胡椒少々に置き換えても良い。味醂を使う場合は砂糖の量を減らすが、各調味料の割合はあくまで目安。 脂の乗ったキンメダイでは濃い目(水を減らしその分を酒や味醂に置き換える)が基本だが、最終的には各自の好みで調整する。煮汁は多目の方が焦げ付きなどの失敗が少ない。
  3. 汁が煮立ったら灰汁を掬い、魚と肝を入れて煮る。
  4. アルミホイルで落し蓋をする。煮汁が上側まで回り、かつ吹き零れない様に火力を調整。灰汁を除きながら10分程煮る。調理時間は魚のサイズや形状(丸・切身・兜)により調整する。


キンメの種類

キンメダイ

キンメダイ目キンメダイ科 Beryx splendens
分布:釧路沖以南~インド・太平洋域。大西洋、地中海
眼球内部に反射板を有し、光を受けると眼が金色に輝く事が和名の由来。
幼魚は背鰭の第2軟条が糸状に著しく延長する(画像参照)が、体長15~20cm程度で消失。 釣り上げた直後の体色は冒頭の美しいコントラストだが、時間が経過すると店頭で見慣れた全身緋色に変化する。他2種と区別するため、敢えて「本キンメ」と呼ぶケースもあり。
フウセンキンメとの識別は「後鼻孔が溝状で細い」点(画像参照)。
3種中最大となり、伊豆諸島沖では60cm以上、4kg超の個体も採捕される。

因みに本種水揚げ日本一の静岡県下田漁港では本種を
地キンメ…伊豆大島や新島周辺の特定海域など、神津島より北で日帰り一本釣り個体
島キンメ…神津島周辺から八丈島周辺の特定海域の日帰り一本釣り個体
沖キンメ…主に大型漁船(キンメ船)が八丈島沖~青ヶ島で数日間漁をし、水揚げする個体

と漁場により3種に区別(価格も異なる)するが、学術的には同一種である。

フウセンキンメ

キンメダイ目キンメダイ科 Beryx mollis
分布:相模湾以南~沖縄諸島
キンメダイと同一種とされていたが1959年に新種記載。一旦無効(キンメダイと同種)とされるも、93年に改めて別種と認定された「第3のキンメダイ」キンメダイよりやや体高が高く、 釣り上げた際に腹が膨れるのが「フウセン」の由来だが、確実な識別点は「後鼻孔が楕円形で大きい」点(画像参照)。
2尾が並んだTOP画像は「典型的な」フウセンキンメでキンメダイと識別は容易。対して1尾の画像は東京湾口沖ノ瀬で採捕した「鼻孔は間違いなくフウセンキンメだが、体高が低目で、腹鰭も短めな感じ」と京都大学の博士が画像に違和感を示した個体。この日は複数の同型を採捕したが、後日画像での「発覚」のため、DND検査には至らず。「今度採捕したら」の約束だが、この手に「あるある」の以降巡り合う事無く今日に至る。最近他魚種で取り沙汰される「ハイブリッド」の懸念も持ちつつ、再採捕を期す。
本種は神奈川県三浦半島では「アブラキンメ」と称しキンメダイと区別する船長もあるが、現状「フウセンキンメ」若しくは「トロキンメ」の名で明確に区別し、専門に狙うのは和歌山県南紀地区のみ。
キンメダイよりもやや深みに多い傾向で、反応(魚群)幅もキンメダイに比べて狭い印象。市場でキンメダイと区別することは殆ど無いが1kg未満でも脂の乗りがよく、トロ系白身好きには堪えられない美味。

ナンヨウキンメ

キンメダイ目キンメダイ科 Beryx decadactylus
分布:南日本以南。インド・太平洋域、大西洋、地中海
他2種より体高が高く側偏し、鱗も大きい事で識別は容易。その体型から釣りでは板キンメ、 若しくは平キンメの呼称が一般的。 鼻腔下に牛の角のような顕著な鉤状棘を有す(添付画像)ことから「角キンメ」と称す地域も。 やや浅みの250~300mに多く棲み、大型でも45cm・1.5kg程度。 現状専門に狙う事は少なく、中深場五目や深場アカムツ、アラなどのゲスト的色合いが強い魚。 他2種のキンメダイがピンク色で柔らかい肉質なのに対し本種はやや硬質の白身。基本的に食感が異なり食の評価は人それぞれだが、個人的には1kg以上の脂が乗った個体は評価に値すると考える。